第25話 売り切れ御免!

 

 なんか、実家で色々やってた為、再びカナワン城塞都市に着いたのは、夜の11時。


 コナンとシスは、もう、ベッドで熟睡しており、ヨナンも今日は、そのまま城塞都市の城門の前に寝る事にした。


 そして、朝、キャンピングキッチントレーラーの前が騒がしいのに気付いて目を覚ます。


「なんか、騒がしいな……」


『ご主人様。みんな、ご主人様の店が開くのを待ってるんですよ!』


「店? 店って、俺のキッチンカーの事か?」


『そうですよ! 早く、石焼き芋の準備をして下さい!』


 ヨナンは、鑑定スキルに言われて、慌てて石焼き芋の準備を始める。


 そして、今回、前回の反省を活かし、店の前に、飲食用のテーブルと椅子も用意していたりする。


「ヨナン兄ちゃん、おはよ~」


「おはよ~」


 どうやら、コナンとシスも起きてきたようである。


「オイ! コナン、シス、悪いけど、そこにある机と椅子を店の前に並べといてくれないか?」


「え? お店?」


「お店って?」


 コナンとシスは、首を捻る。


「言ってなかったか? 兄ちゃん、カナワン城塞都市で、石焼き芋屋をやってるんだ!」


「え? そうなの?」


「そうだ。だから少し急いでくれないか。お客さんが、もう、外で待ってるから!」


「分かった!」


「は~い!」


 コナンとシスは、急いで、テーブルと椅子を出し、キッチンカーの準備を手伝う。


「それでは、開店しま~す!」


 ヨナンは、公爵芋の石焼き芋屋の開店を宣言する。


「やっぱり、お前だったか! 昨日と荷馬車の形が大分変わってたけど、馬が同じだったからな! 早速、公爵芋を1つ売ってくれ!」


 どうやら、最初のお客は、カナワン城塞都市の門兵であるようだ。


「はい! 600マーブル頂きます!」


「私は、4つ!」


「はい!2400マーブルになります!」


「この芋は、一体、なんていう品種の芋なんだ?」


「グラスホッパー騎士爵領原産の公爵芋といいます!」


「この芋は、グラスホッパー騎士爵領に行けば、仕入れれるのか?」


「出来ますよ! まあ、その場合、1つ300マーブルになりますね!」


「ところで、グラスホッパー領とは?」


「一応、カナワン伯爵領の隣の領地で、ここからだと、荷馬車で8時間程の距離ですね!

 明日からだったら、多分、僕が、ここでお売りする事も出来ますよ!」


「じゃあ、明日、ここに買いに来る」


「何キロ程、ご入用ですか?」


「そしたら、10キロほど貰おうか」


「でしたら、明日までに御用意しときますね!」


「いらっしゃい! いらっしゃい! 甘くて美味しい公爵芋の焼き芋だよ~」


「いらっしゃい~! お兄ちゃんが作った公爵芋は、とっても美味しいんだよ~!」


 コナンとシスも、ヨナンを真似て、自主的に公爵芋の宣伝を始めてくれる。


「おう! ここが噂の公爵芋の石焼き芋か!

 それにしても、何で、城塞の外で商売してるんだ?」


「ここが、おじさんが言ってた、とっても美味しいと噂の石焼き芋屋ね!」


 いつの間にか、城内でも、ヨナンの公爵芋の噂が拡がってるようである。


「いらっしゃいませ! いらっしゃいませ!」


「いらっしゃいませ~!」


 コナンとシスも、一生懸命声を出す。


「はい! 公爵芋3つで、1800マーブルです!」


「いらっしゃい! いらっしゃい!」


「公爵2つ!」


『ご主人様! これで最後です!』


 鑑定スキルが、ヨナンに伝える。


「はい!どうも! 1200マーブルですね! これで今日の公爵芋は売れ切れです!」


「ええ! もう終わりかよ!」


 待ってた人から、ブーイングが出る。


「どうも、すみません! 明日もここで売りに来ますので、また、よろしくお願い致します!」


「「よろしくお願い致します!」」


 コナンとシスも、ヨナンの真似をして頭を下げる。


『ご主人様、今日も、大繁盛でしたね!』


 店の片付けをしてると、鑑定スキルが話し掛けてくる。


「ああ」


『売り上げ、幾らか分かります?』


「全く、分からん」


『なんと、2021個売れて、121万2600マーブルです!』


「たった一日で、100万オーバーかよ!」


 ヨナンは、想像以上の金額に驚愕する。


『ですね! ぼろ儲けです!これも最新式のキッチンのお陰ですよ。多分、地球の技術でも、これだけ大量の石焼き芋を焼けるキッチンなんか、他に無いですから!』


「だよな……」


『で、どうします?』


「100キロ入る魔法の鞄を買って帰る。もう、30キロ分、公爵芋をそのまま売る契約してるしな!」


『ですね!』


 ヨナンは、仲良くなった門兵に、キャンピングキッチントレーラーを城門横に預けて、コナンとシスを連れてショッピングに出掛ける事にした。


「オイ! 気を付けるんだぞ!」


 子供だけの行動に、門兵が心配して声を掛けてくれる。


「多分、大丈夫! 俺じゃなくて、コナンとシスは、滅茶苦茶強いから!」


 そう。ヨナンは攻撃スキルを持ってないが、多分、コナンとシスは攻撃スキルを持っている。2人ともまだ13歳になってないからスキルが覚醒してないが、その片鱗は、もう、エドソンとの稽古で見せつけているのである。


 グラスホッパー家は、超絶武門の家。話によると、エドソンとエリザベスは元々冒険者で、中々の猛者だったらしい。

 そして、ご存知のように、エドソンは先の大戦の英雄で、その功績を認められて、騎士爵を賜った新貴族。


 コナンもシスも、何故か、エドソンに木刀持たされてるし、ハッキリ言うと、ヨナンより小さいチビっ子の癖に、ヨナンの用心棒の役割を担ってたりするのだ。


 まあ、それだけ強くなければ、流石にエドソンでも、子供3人だけで、本来荷馬車で片道8時間も掛かるカナワン城塞都市に行かせないしね。

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