第24話 石焼き芋キッチンカー

 

『ご主人様! 忙し過ぎますよ!』


 鑑定スキルが、自分が実際、働いてる訳でもないのにワチャワチャ言っている。


「ああ。カナワン城塞都市に入れなくて野営する人達が、殆ど、全員、夕飯がてらに買いに来てるよな……」


『というか、このままだと、城塞都市内で売る公爵芋が無くなってしまいますよ!』


「しょうがねーだろ! 売れちゃうんだから!

 もう、仕方がねーから、全部売っちまうぞ!」


 てな感じで、夜も早い内に、用意してた公爵芋約500個が売れてしまったのであった。


『ご主人様、30万1200マーブルの売上ですよ!』


「たった3時間の販売で、約30万マーブルだったらまあまあだな!」


『ですね!』


 そんな感じで、ヨナンは、フカフカなベッドがあるキャンピングキッチントレーラーで、快適な車中泊をしたのだった。


 次の日、1番乗りでカナワン城塞都市に入城する。


『やっぱり、トップバリュー男爵領の領都と比べてしまうと、栄えてないですね』


「まあ、あそこと比べちゃうとな……取り敢えず、とっとと魔法の鞄を仕入れて、グラスホッパー領に帰ろうぜ!

 直ぐに、芋を仕入れて、また、公爵芋を売りに来たいし!」


『えっ? トンボ帰りして、全く休憩しないで帰って来る気ですか?』


 なんか、鑑定スキルがビックリしている。


「ん?キャンピングキッチントレーラーで寝ただろ?」


『だけど、家のベッドで寝た方が疲れは取れるんじゃないですか?』


「アホか! 家のベッドより、俺が作ったキャンピングキッチントレーラーのベッドの方がフカフカでよく眠れるんだよ!」


『ご主人様、どんだけショボイ布団で寝てたんですか!』


 なんか、鑑定スキルが驚愕してる。ヨナンが食べた食事の味は分かるのに、実家のベッドの寝心地は分かってなかったようである。


「だって、貧乏なグラスホッパー家の布団だぜ。綿もスカスカだし、メッチャ寒いし、寝ると逆に体が痛くなるんだぜ!」


『そんなショボイ布団なら、ご主人様が、大工スキルで、みんなの布団を作ってあげたらいいんじゃないですか?

 きっと、エドソンさん達喜びますよ!』


「だな!」


 てな感じで、やる事が増えたので、ヨナンと鑑定スキルは、30キロ入る魔法の鞄をゲットすると、急いでグラスホッパー領の実家にトンボ帰りしたのであった。


 ーーー


「おっ! ヨナン、もう帰って来たのかよ?」


 3時に、グラスホッパー領に帰ってきたヨナンを見て、エドソンがビックリしている。


「ああ。ちょっとエドソンの部屋にお邪魔するぞ!」


 ヨナンは、ドカドカ、エドソンとエリザベスのベッドルームに入ると、急いで、エドソン夫妻のベッドを解体して、代わりに、キングサイズの無駄に豪華なベッドを作り上げる。


「お前、いきなり、何してるんだ?」


「ああ。エドソンとエリザベスが良く眠れるようにな!」


「よく寝れるって……」


 なんか、エドソンは違う意味に取ってしまったようだ。


 まあ、そんな恥ずかしがってるエドソンを無視して、フカフカの羽毛布団と快眠枕も続けて作ってしまう。


「本当に、お前の大工スキルって、どうなってんだよ……」


「さあな。まあ、俺の大工スキルで作る物はタダだから、気にせず使ってくれよ!」


「気にせず使えって、お前なぁ……」


 やはり、完全に、エドソンは勘違いしているようであった。


 続けて、コナンとシスのベッドも作ってしまう。


「ヨナン兄ちゃん! ヨナン兄ちゃんは、芋作りだけでなく、ベッド作るのも上手いんだね!」


「お兄ちゃん、すご~い!」


 もう、コナンとシスは、ベッドを作るヨナンを羨望な眼差しをして見てる。


「ああ! 基本、俺の大工スキルは、何だってできちゃうからな!」


「すげー!」


「すごい!」


 なんかよく分からんが、コナンとシスのベッドを作り終えると、コナンとシスが、ヨナンの後を着いてくる。


「ねえねえ、ヨナン兄ちゃん。また、芋掘りするの?」


「ああ。芋掘りしてから、また、カナワン城塞都市に公爵芋を売りに行くぞ!」


「ねえ! ねえ! それ、僕も着いてっていい?」


「え? 私も行きたいよ~!」


「連れてってやってもいいけど、一応、エドソンに聞いて来いよ!」


「「分かった!」」


 コナンとシスは、急いでエドソンに聞きに行ってしまった。


『ご主人様、安請け合いして良かったんですか? 子供2人の面倒って、結構、大変ですよ?』


 鑑定スキルが、コナンとシスが居なくなったのを見計らい聞いてくる。


「うるせーな! 可愛い弟と妹が、お兄ちゃんと出掛けたいと行ってんだぜ!

 そんな事言われたら、断れる筈ねーだろ!」


『ご主人様、どんだけ家族に甘いんですか?』


 鑑定スキルは、呆れながら言う。


「俺は、前回の人生で、エドソンが戦争に行く前、エリザベスとチビ達の事、頼むと言われたんだよ!だけど、俺と来たら、何もしてやる事も出来ずに、逆に、足を引っ張っちまったんだよ……」


『ご主人様は、その時に、エドソンとした約束を、今果たそうとしてると?』


「悪いかよ!」


『悪くないですよ。寧ろ、良い事ですね。少しだけ見直しました』


「取り敢えず、今、グラスホッパー家には、想像以上に金が無いらしいから、俺が早く稼いで、取り敢えず、コナンとシスのカララム王国学園の入学資金を稼がなきゃならんからな」


『早くコナン君とシスちゃんの入学資金を稼いで、エリザベスさんに渡して資金面で安心させたいと?』


「そうだ! だから、出来るだけ早く稼がないといけないんだよ!」


 ヨナンは、鑑定スキルと話ながらも、キャンピングキッチントレーラーの魔改造を施している。

 だって、コナンとシスの寝るスペースを作らないといけないし、コナンとシスを乗せるなら、より快適なキャンピングキッチントレーラーにしないといけないから。


『なんか、凄い事になっちゃいましたね……』


「ああ。今回は、気合い入れた!」


 ヨナンが作ったキャンピングキッチントレーラーは、ピカピカの総漆塗りで黒光りしていて、とても高級感を漂わせている。至る所に、金箔が貼られ、しょぼかったバッタの家紋も、滅茶苦茶格好良くアレンジして、なんかそれなりな感じに仕上がっており、ちょっとした車輪の軸の部分とかに彫り込まれたりしている。

 ハッキリ言って、高位の貴族や王家が乗る馬車を完全に越えている始末だ。

 中のキッチンも、完全にこの世界のモノじゃなくなり、地球の最新式。もう、石焼き芋だけじゃなく、揚げ物でも、蒸しでも、焼きでも何でもできてしまう仕様になっていたりする。


「オイ! 何だこれは!」


 どうやら、コナンとシスが、エドソンを連れて来たようである。


「ああ。コナンとシスも俺についてくるというので、ちょっと張り切って改造してみた!」


「そ……そうなのか……俺は、まだ、コナンとシスが小さいから、カナワン城塞都市には行かせられないと言おうと思ってたんだが……コレを見たら、OKせざるないな……」


「ヤッター!お父さんありがとう!」


「お兄ちゃん! 凄いー!」


 コナンとシスは、大喜び。


「ああ。 エドソン心配しないでくれ。

 この荷馬車?は、防犯機能も万全だから、大砲をぶち込まれてもビクともしない作りになってるからな!」


 一応、ヨナンは、エドソンが心配しないように付け加える。


「やっぱ、お前の大工スキル、凄すぎんな……」


「ああ! 俺は、弟と妹を守る為なら、どこまでも頑張れるんだよ!」


「俺は、そういう事を言ってんじゃなくて……まあ、いいか……」


 エドソンは、ヨナンに何か言おうとするが、言葉を飲み込む。


「じゃあ、出発するぞ!」


「「おおーー!」」


 ヨナンの掛け声に、コナンとシスが元気に答える。

 もう、コナンとシスは、大好きなヨナン兄ちゃんと出掛けられて、ウキウキである。


 そして、エドソンはというと、コナンとシスの心配なんかより、なんか最近、おかしなテンションになってるヨナンの方が心配になっていたりした。


 ーーー


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