第16話 街づくり
アスカは、ヨナンの家に来たその日から、まるで押しかけ女房みたいに、ヨナンの屋敷に居座り、グラスホッパー家に気付かれないよう、極秘裏に大森林の開発に取り掛かる。
「あの、ここに住むのは問題無いんだけど、トップバリュー商会を休んで大丈夫なのか?」
ヨナンは少し心配して、アスカに尋ねる。
「ああ。その事なら心配ありませんわ。先程、店の従業員がコチラに来ましたので、その者に、今日から暫く休むと伝えておきましたので!」
「えっ! いつの間に!? というか、普通の従業員が、自分勝手に仕事を休めるものなのか?」
「その辺は、鑑定員筆頭の権限で何とかなってしまいますね!」
「アスカって、俺の想像以上に、トップバリュー商会の中でお偉いさんなんだな……」
「ですね。それなりには」
アスカは、決して自分がトップバリュー商会の娘で、男爵令嬢だとは言わない。
そんなこと言ってしまったら、話がややこしくなってしまうから。
アスカのミッションは、自分が男爵令嬢と気付かれず、ヨナンから全てを奪い取る事。
「それにしても、ここは凄いですね。聞いた話だと、大森林を開発するのは、絶対に無理だと伺っていたのですが?
何でも、木を切っても、切っても、次の日には、木が生えてくると伺ったのですが?」
「ああ。その事な! それは、大工スキルを持ってる俺が、更地にしようと思って木を伐採すれば、何故か、木は生えてこなくなるんだよな!」
「何なんですか? それは?」
「俺にもよくわからんが、それが大工スキルの力らしい」
「で、この鬱蒼と生えてる公爵芋は、どんな仕組みなんですか?」
「これも、俺が耕して植えたら、男爵芋が、公爵芋に変わって生えて来ただけだな!」
「なるほど、大体、仕組みは分かりました。開拓不可能と言われていた大森林も、ヨナンさんにかかれば開拓可能になると……なら、私が街の建設の設計図を引きますから、ヨナンさんは、そうですね。アソコから、アソコまで木を伐採して更地にしておいて下さい!」
「えっ?! そんなにも?」
「ええ!この場所を、私は、トップバリュー男爵の領都より栄える街にするつもりですから!」
アスカは成長途中の胸を張り、声高々に言い放つ。
「何? その盛大な計画?」
ヨナンは、よくわからん計画に驚いてしまう。
「だって、私達が住む街なんですよ? 私達に相応しい街にするべきでしょ!」
アスカの目が怪しく輝き、魅了スキルが発動する。
「まあ、婚約者のアスカが言うなら、頑張っちゃうけど!」
「じゃあ、お願いね!ダーリン♡」
こんな感じで、大森林の都市計画が始まったのであった。
ーーー
「お嬢様、言われたように手筈は整っています」
「そう。それなら計画を先に進めて頂戴」
なにやら、アスカが、トップバリュー商会の者と、隠れてコソコソ話している。
最近、大森林には、トップバリュー商会の者達が、頻繁に訪れているのだ。
「オ~イ!アスカ? この設計図で、よく分かんない所があるんだけど?」
「何? ダーリン。分かんない事は、なんでも私に聞いてね!」
アスカも、婚約者になりきり、ヨナンをヨイショするのに必死である。
何故なら、この大森林の街をトップバリュー男爵家の新たな領都にするつもりだから。
ハッキリ言って、ヨナンの大工スキルは凄まじい。トップバリュー商会が雇う超一流の職人達よりも。
ならば、ヨナン一人に街を作らせた方が、街の完成度が上がるというものなのである。
そして、唯一、トップバリュー男爵家がやる事は一つだけ。決して、グラスホッパー領の者達に、ヨナンが凄まじい街を作ってる事を、気付かれないようにする事。
現在、ヨナンが新しく作ってる街を囲むように、24時間グラスホッパー領の者達が入ってこないように見張っているのである。
そして、ヨナンにより、ほぼ街というか、新たな城塞都市が出来上がってきた頃、カララム王国に激震が起こる。
なんと、隣国のサラス帝国が、カララム王国に戦争を仕掛けてきたのだ。
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