第3話
私は宮永くんから溺愛されていた。
これは自意識過剰ではないと思う。
成長して中学に上がってからも、彼は私への態度を変えなかった。
思春期特有の男女の違いで、彼も友達からからかわれたりしているよう。しかし、男子のは”じゃれあい”みたいなものである。
本当に怖いのは女子の方だ。
あの教室での話から、何かイベントがあれば私を誘ってくれて、一緒に出かけるのが普通の事へと変化した。
ただし、彼はイケメンで王子様みたいな人気を女子から持たれている。
私が良く思われないのも当然だろう。
だから、私の中学での友人は少ない。
しかし、そんな私にも親友と呼べる友達が出来た。
「かーずきっ! 一緒にお昼しよ!」
「わ、まどかちゃん!? もう」
中学に入ってから、なにかと味方の少ない私の親友。
彼女は
ビックリしたのは、まどかちゃんと宮永くんが従兄弟だって事。
「勇也! 私の和希を泣かせたらショウチしないからね!」
「うるせー、お前に言われるまでもねぇ」
二人は小さい頃からの知り合い、いわゆる幼なじみらしい。
ただ、二人は悪友みたいの様で。
「では、和希のどこがいいのか言いなさい」
「まず、自分の好きな事に全力な部分がいい。人からどう思われるかよりも、自分の好きを楽しんでいる姿を見るだけで楽しくなる。次に大人しそうに見えて頑固なところがいい。自分の意見を簡単に変えないってのは自分の信じるもんがあるって事だ。これは他人にも変えられない。そして、キレイな黒髪がいい。風に揺れる姿を本当にーー」
「ノロケすぎ。あと最後のキモイ」
「キモイ!?」
「あはは……」
私は宮永くんと仲良くなれたキッカケである絵を大事にしている。中学では美術部に入った。
自分の絵が芸術的にどうこうではなく、単純に好きだからだけど……。先生や先輩に「すごい」と言われていてビックリしている。なんとなく、小学生の頃に無くした自信を取り戻せそうで嬉しい。
何より、宮永くんが私の絵を好きと言ってくれる事が嬉しかった。
今までの自分を変えてくれた。私にとっての
「で、告白はどっちからしたの? ん?」
まどかちゃんが、からかうように問いかけてくる。
「ううん、付き合ってないよ」
「……え?」
「……」
「だって、宮永くんと私じゃ釣り合わないよ」
「なに、それ」
どれだけ私の事を大事に思ってくれていても、それはきっと、子猫を可愛がるようなものだから。
私みたいな、『
彼の名前みたいに、”勇気”の必要な行動だっただろう。
回りからからかわれ、色々な事を言われただろう。
私みたいな地味で目立たない、男女の相手など。
「和希!!」
珍しくまどかちゃんが声を荒げた。思わず目を丸くしてしまう。
「あんたが自分の事をどう思ってんのか知らないけどね! あたしの親友をバカにするような事を言うやつは、絶対に許さないから!!」
ありがとう。本当にありがとう。
こんな私のために怒ってくれて。
でも、私は自分に自信が持てないんだ。
「勇也! これはアンタが
「……え?」
「和希を大事に思うなら、テメェのやる事をやれ!!!」
すごい言葉遣いだな、と。私は場違いにも関心してしまった。思わず負の感情がふっとんだ。
「そうだな、うん。そうだ」
宮永くんは静かにうなずく。
私がポカンとしている間に、幼なじみ同士で意見が合ったのだろうか。
「高坂! オレとデートしてくれ!」
「テメェはまず、下の名前で呼ぶ勇気を持てや!!」
まどかちゃんのツッコミは、けっこうエゲつなかった。
私は笑ってしまった。
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