第51話 軽い気持ち


 ――ほんの軽い気持ちだった。

 好きな子の前で格好つけたい。それだけの理由で、古びた地蔵を蹴り飛ばして壊した。冷静に考えれば格好いい行動とはかけ離れているし、現に好きな子には幻滅した顔を向けられた。

 そんな人だとは思わなかったと振られて、残ったのは壊した地蔵からの呪いだった。


「お、もい……ごめんなさっ……あやまる。あやまるから、許してくれよお……」


 重い。苦しい。しかし、死なないギリギリの重みに留められている。全身にのしかかる圧力――それが、地蔵を壊した日からずっと続いていた。最初は気のせいかと思い、すぐに呪いだと重い、それからはずっと謝り続けていた。

 重みで動くことすらもままならない。許してほしいと何度も言っているが、重みは増していくばかりだった。

 涙を流し、壊れた人形のように謝る。軽い気持ちで行動したツケを支払わされていた。終わることの無い呪い。死なせてもらえず、どんどん精神が追い詰められる。


「う……うう……ごめ……なさ……」


 ――あーあ、早く対処しないと大変なことになるよ。


 地蔵を壊した後、幻滅したと振られてひとり寂しく帰っていると、すれ違った少年にそう言われた。ヤケになっていたのもあり、うるせえと怒鳴り返してしまった。今なら何かを知っていそうな少年に、どうすればいいのか助けを求めるだろう。しかし、すでどうしようもなく手遅れだった。


「……た……」


 軽はずみな行動から重い結果になった。絶望を浮かべながら、口さえもまともに動かせなくなる姿は、あの日壊した地蔵によく似ていた。

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