第13話 ミサンガ
女子の間で、ミサンガ作りがじわじわと流行りだした。親にでも教えてもらったのか、細いものからどんどん凝った作りになっていった。
手首か足首のどこかにはミサンガが最低でも一つはついていて、それが切れると願いが叶うというのを信じ、大半の女子が恋愛系の願いを込めて作った。
「遠見、これ余ったからあげる」
「は?」
聡見はクラスの女子から、突然ミサンガを渡されて戸惑いながらも受け取った。
「なんだこれ」
編み込まれた糸をつまみあげ、聡見は首を傾げる。ミサンガを全く知らず、隅から隅まで眺めているが、どう使うのか分からないようだ。その様子を見て、渡した女子がクスッと笑う。
「えー。聡見知らないの? さすがにやばいって。ミサンガよ、ミサンガ。女子の間で流行っているのに、みんなつけているでしょ。ほら、こんな感じで」
そう言いながら、女子は自分の手首に巻いたミサンガを見せた。ピンクと白を組み合わせた可愛らしいもので、少し緩んでいる部分もあるが上手く出来ている。
聡見に渡されたのは、白と黒を組み合わせたもので、見比べているうちに疑問が湧いてきた。
「余りものって言っていたけど、お前と色が違うよな。本当に余ったのか?」
「えっ」
その質問に焦った顔を見せると、ごまかすように早口で言った。
「そうそう。色々な子に作ったから、その色が余ったの。だから、別に意味は無いからっ。願い事しながらつけてね。それじゃあ」
そして教室を出ていってしまう。嵐のように去っていった姿を見送りながら、聡見はまた首を傾げる。
「なんだったんだ?」
首を傾げていたところで、そこに良信が現れた。ちょうど先生に呼び出されていたため、この場にいなかったのだ。
「ただいま、とみちゃん。……なにそれ?」
「ああ、これ……おいっ!」
目ざとく聡見が持っているミサンガに気がつくと、有無を言わさずに奪い取ると窓から投げる。突然のことだったので、聡見は何も出来なかった。慌てて窓の外に顔を出すが、どこにも見当たらない。
「何してるんだよ。あれ、もらったものなのにっ」
「だからだよ」
怒ろうとした聡見だったが、良信がそれ以上に怒った雰囲気を出したので、思わず怯んでしまう。
「ど、どういうこと?」
「あれ、誰かの手作りでしょ。そういうのは良くないから」
「なんで?」
理由が分からず戸惑う聡見に、良信はため息を吐いた。
「何が込められているか、分かったものじゃない。……呪われるかもよ?」
その言葉に、投げ捨てられたミサンガを探しに行く気力が失われた。
それから少しして、ミサンガをくれた女子から告白された聡見だったが、良信の言葉を思い出してしまい断った。
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