第18話 エロル捕縛作戦
最高指導者を誰にするか
その話し合いは押し付け合いになった。
「流」の職になんとしても残りたいパウル
自由気ままに活動したいユークリッドは
壮絶な舌戦を繰り広げるも
接点も妥協点も無いまま平行線だった。
ユークリッドに幸いしたのは
ハンスがどっち付かずで
二体一にならずに済んだ事だった。
そうこうしているうちに
ヒタイング教会まで到着してしまい
話は一旦保留となった。
ここでセドリックは待機してもらうのだが
案の定揉めた。
父上父上とガンとして言う事を聞かない。
しかし、ユーの言葉で残る事になった。
「いいいですよ。お越しになっても、ただし
勇者は一人です。王子が居た事によって
皇太子か君のどちらかしか守れない状況に
なった時どうしますか?
我々として、より助かる確率の高い選択を
しているだけなんですがね」
教会に在中していた聖騎士は
教会の指揮下にある事が確認出来た。
急ぎで支度を始める。
その様子を眺めながら
チャッキーは疑問を口にした。
「聖騎士ってもの一枚岩じゃないんすか」
その疑問にはヨハンが答えた。
「ああ、教会出身の者と王家の親戚
まぁ貴族だな。主にその二つから成る。
前者は問題無いが、貴族側はいざとなれば王家につく」
今やられると困る事は
貴族側の聖騎士を焚きつけ
教会の権力を武力で奪いに来られる事だ。
拒めば内乱になる。
当然、拒むので必至だ。
全員で
館正面では目立ちすぎで
警戒されてしまう。
偵察も兼ねて教会護衛の聖騎士数名とパウルで館まで先行した。
残りは準備をして待機だ。
「しかしいくら教会の後ろ盾があるにしたって
皇太子を捕えるなんて気が重いぜよ」
クロードにしてみれば王族や教会関係の
仕事など馴れない事案だ。
モンスター相手の方がよっぽど気負わずに済む。
落ち着かない様子でそう言った。
処刑なんてオチも有りうるのだ。
「まぁあの3人なら大丈夫だから」
ヨハンはそう言って、クロードの不安を
軽減しようとしたのだが
思わぬリアクションが帰って来た。
「お前さん教会関係者と随分と懇意な様子だが
一体どういう関係ぜよ」
それほど教会内に顔が利くのに
なぜ冒険者などやっているのか
そう言う意味であろう。
冒険者より、よほど安全で
身入りも安定しているのだ。
「まぁ俺じゃなくて兄貴の功績だ」
アモン。
ヨハンの兄のゼータはそれを追っていた。
死亡が確認され手配が取り消され
ゼータは行方不明だ。
直後の失意に満ちたストレガの様子を
クロードは思い出した。
察するに刺し違えたのであろう。
「そうか・・・何か悪かったぜよ」
恐縮するクロードに気にするなと
言っておくヨハン。
この話題は騙している様で
ヨハンもあまりしたく無いのだ。
そこへゲカイが歩いて戻って来た。
館のある方角からだった。
どこへ行っていたのかヨハンが
尋ねると、予想通り終始パウルの傍で行動していた。
そして館には入らず
報告の為に先に戻ってきたのだ。
「マズい。館にはオーベルはいない」
外から館内部をデビルアイでくまなく走査したのだ。
わざわざ入るまでも無いのだ。
「どこへ行っちまったんだ」
「それは司教が聞いて戻って来るハズ
私は取り合えず館への突入は無い事を
教えて置こうと思った。」
ゲカイの判断は適切だ
少しでも無駄な時間を省こうとしているのだ。
「ここで待機している意味は無ぇ
馬車で館前まで行っちまおう」
警戒させない為に離れた場所に居た。
相手がいないのであればそうした方が手っ取り早い。
皆、急いで馬車に乗り込むと
ヒタイング領主の館前まで駆けつけた。
何事かと慌てる門番を
急ぎだからと強引に乗り入れた。
丁度、正面の入り口からパウルが
慌てた様子で出て来る所だった。
聖騎士も随行している。。
「パウル!居ないって本当か」
「!?なぜ先に知っている」
パウルの疑問はヨハンの後ろで
ピースサインをしているゲカイで察した。
今は味方だから良いものの
これはこれで問題だ。
「どこへ行ったか分かるか」
パウルの疑問に答える事無く
ヨハンは詰め寄った。
「それが・・・だな」
港での騒ぎの後エロルは厳重に護衛されながら
領主の館に直行した。
部屋で休むと申し出たエロルだったが
担当した侍女が様子を窺った時には
部屋はもぬけの殻だった。
最後に侍女が見た時から
気が付くまでおよそ二時間程度の
間に居なくなったとの事だ。
「その間に館に出入りした者は」
パウルの説明途中でユーがそう聞いた。
「出入りの食料品の業者と護衛の聖騎士
いずれも馬車です。」
「聖騎士が揃っているか確認は」
「今、点呼を取らせて・・・
あ、終わったようですね」
館の中から聖騎士が一人
小走りでパウルの元までやって来た。
耳打ちをしようとするが
皆にもとパウルに言われ
聖騎士は畏まって報告をした。
貴族出身の一小隊、30名と
馬車2台が行方不明という報告だった。
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