第8話
◆ルーベンside
「ストーリー1章序盤の道中敵だけか。全章のモンスターを全て追加してくれてたら楽だったのに」
もののついでにやっていたの魔物調査では、強敵を求める俺からすると大変不満な結果に終った。
一章の道中敵程度では、限界まで強化した最高レア度である【UR】のエリカのステータスを持つ俺にかすり傷一つ負わせることは出来ない。
嘘偽りのない事実として【UR】の中で最弱の耐久力を持つエリカスペックの俺に掠り傷一つ負わせられないとは、情けないやつらだ。
一章の敵で期待するとしたら中ボスかラスボスだろうか。
しかし、問題がある。それは中ボスも大ボスもエリカと同じくガチャで手に入るキャラクターなのだ。そして勿論、仲間にすれば親愛度を上げることが出来る。
つまり、俺と同じようにユーザーが能力を持っているはず。これは適当にバラ撒けばいいだけの雑魚敵とも、その場に放置しておけばよかった俺達とも、扱いが違う可能性がある。
しかし、具体的にどうなるのかが全く分からず、戦いを挑めない。せめて、いる場所のヒントだけでも欲しいのだが。
「エリカって、ずっと第三勢力でストーリーに殆ど絡まなかったから参考にならないんだよな」
ぶっちゃけ、エリカは極一部を除いて、居ても居なくてもストーリーへの影響が殆どないのだ。一章に至っては無に等しい。
『蠱毒の蜘蛛糸』にはギャルゲー風選択肢があり、どれを選んだかにより展開が変わるのだが、この変化が微妙なのだ。
主人公が言うボケの内容が変わるだとか、ヒロインの食べるランチメニューが変わるだとか、大筋に何も影響が無いようなものが多い。
稀に強制バッドエンドになる選択肢があったりもするが、その時はクリア済みの最終チャプターからやり直せるので問題ない。
「俺にとってはエリカがいないとか大問題だけどな」
とにかく、ボス勢が俺と同じように自由に動いているとは考えにくい訳だ。なにせ、設定でボス部屋まで指定されている上、今のアンデッドみたいな魔物ばかりが出てくる理由もラスボスのせいだからな。
こいつがストーリーと同じ行動をしていなければ、現在の魔物のレパートリーになる筈が無いので最低限ストーリーに沿って行動してると思っていいだろう。
そのボス部屋も地下祭壇としか描写されてなかったので、当てにならないが。下手したらブラジル辺りにあるかもしれない。
そんなのを探しに行くくらいなら、日本にいるであろう
それにしても……
「頭使ったら疲れた」
こういう時は楽しいことを考えるに限る。
家を出発する前にしていたエリカ(の剣と声)とのやり取りを思い出す。
あの時は幸せだった。エリカに包み包まれるのも幸せだったが、エリカ(の剣)が最初に吸った血が俺の血だという事も幸福感を更に増したのだ。思わずスキルで復活するまで没頭するほどに。(ストーン・イーグル? あれは石製だからノーカンだ)
「ふひひひっ」
はぁ、思い出すだけで幸せだ。思わず幸福の笑いが漏れてしまうほどに。エリカに止められなければ頬ずりどころか、しゃぶり付いていただろう。
「あれは是非とも日課にするべきだな」
ジュルリ、と口元を拭う。
ここに至るまでかなりの数の敵を斬った。勿論その中には血が出るヤツもいた。だから一日の終わりに俺の血で上書きするのだ。
何なら抱き枕にしてもいい。俺の復活ペースならば、安全な寝床さえ確保出来れば可能な筈だ。よし、そうと決まれば安全な寝床探しも急ぐとしよう。
ああ、夢が広がるなぁ。
俺は幸せな未来を描きながら、ようやく見えてきたデパートの扉をバリケードごと蹴破った。
〔うわぁ……〕
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