いつも何があっても俺の傍に居てくれた彼女に“ありがとう”を言いたい!

神石水亞宮類

第1話 いつも何があっても俺の傍に居てくれた彼女に“ありがとう”を言いたい!




俺は生きているのが辛すぎて自殺をした。

ただ“ひとつだけ心残りな事を残して、、、!”

それは愛する彼女に、“ありがとう”と言えなかった事。

彼女は、いつも俺の傍に居てくれた。

俺が仕事で上手くいかず、借金もとうとう1億円までふくれ上がった。

借金取りが毎日、俺の住む家にやって来る。

玄関のドアを靴で蹴る音で、俺は朝目を覚ます。

俺は居留守にする為に、音を立てずただじっと動かず座って借金取り

が家の前から離れるのを待つしかなかった!

借金取りが諦めて帰って行くと、俺はやっと動き出すんだ。

一歩外に出れば、近隣住民の俺を見る目が冷たい。

俺はまるで、“誰かを殺したかのような目で見られるんだ!”

“俺は犯罪者じゃない!”

人の目を気にしないように俺は独り街をぶらつき、立ち飲み屋で一人

安いお酒を何杯も飲んでフラフラにしなりがら彼女の家に行くのが日課

になっていた。



『・・・また飲んでるの?』

『飲まないとやってられないんだよ!』

『何か食べた?』

『・・・い、いや? まだ食べてない。』

『ちゃんと食べないと体壊すよ。』

『どうせ俺なんて、誰も助けてくれやしないんだよ!』

『“私はヒカルを見放さないわ!”』

『そうだよな、ユキは変わり者だから。』

『そうかな、私は見る目がある方だと思うわ。』

『だって俺だよ! 俺を選ぶぐらいだから見る目はないよ。』

『そんな事ないわ! きっと立ち直ってくれるんでしょ!』

『・・・ど、どうかな、』

『大丈夫! 私が傍にずっと居るわ!』

『・・・あぁ。』




・・・あの頃の俺は、もうどうなってもいいと思っていた。

彼女の言葉もあまり頭に残っていないほど追い込まれていたんだと思う。

苦しくて、辛くて、もう生きている事が嫌になっていた。

俺は彼女に黙って“死ぬ事を選んだんだ。”









・・・そして俺が死んで半年。

俺は別の男の体をレンタルして彼女に会いに行く。



【ピンポン】


『はーい!』

『俺!』

『・・・お、俺?』

『ヒカルだよ!』

『悪い冗談言わないで! ヒカルは半年前に私を置いて死んだのよ!

貴方一体誰なのよ、ヒカルのなんなの?』

『だから俺がヒカルなんだって! ユキ、俺だよヒカルだよ!』

『もう帰って! 私にヒカルの事を何も話さないで!』

『“俺とユキが初めて会った場所、覚えてるか?”』

『当たり前じゃない!』

『“○○公園の池のほとり。”』


『・・・そ、そう、』

『“俺が初めてユキにあげたプレゼントは?”』

『・・・・・・』

『カッコつけて、“一凛のバラを渡したよな。”』

『・・・ううん。』

『俺さ、カッコつけなくせに! 能力なくてユキをいっぱい悲しませた

んだと思っている! だからどうしてもユキに最後に言っておきたい言葉

があって、今日だけ戻って来たんだ。』

『・・・きょ、今日だけ?』

『あぁ、この体はレンタルだからさ、ちゃんと返さないと。』

『・・・そ、そうなんだ、』

『あぁ、だから今日だけ俺に付き合ってくれないか?』

『・・・えぇ!?』

『頼む! 今日だけ、今日だけでいいんだ!』

『わ、分かったわ。』

『良かった!』



俺は最後の最後、彼女と最後の一日を過ごす事になった。

だが俺にはお金もないし、二人でフラフラ歩いて過ごすしかなった。



『まさかだけど? “やっぱりお金ないの?”』

『お金はレンタルできないからさ。』

『もぉ~なによ! また私がお金出すのね!』

『俺が生きてた時と一緒だな。』

『・・・そ、そうね、』

『ごめんな、俺が勝手に自殺したからユキを悲しませてしまったな。』

『ほんとアンタ馬鹿よ! 私を置いて一人で死ぬなんて!』

『申し訳ないと思ってる! 俺が全部悪いよ。』

『そうよ、全部ヒカルが悪いわ。』




二人で冗談を言い合いながら、時には軽い口げんかもして、二人で笑って

泣いて、俺と彼女だけの時間を過ごした。

そして俺は彼女に心残りだった言葉を残そうと彼女に言いかけると?




『・・・ごめんね、私もヒカルに言ってなかった事があるの!』

『えぇ!? 何?』

『“実は私も、もう死んでるの。”』

『・・・えぇ!?』

『昨日、私も自殺したの! ヒカルの事が忘れられなかったから。』

『“・・・き、昨日?”』

『そう、もう私も死んでるの。』

『・・・そ、そんな、』

『ごめんね、でもヒカルに会えて嬉しかった。』

『俺もユキに言い忘れた言葉があって、体をレンタルしてでも会って

言いたかった言葉があるんだ!』

『・・・な、何?』

『“いつもありがとう。”』

『なによ! 今頃、泣かせる事言わなくてもいいじゃない!』

『ごめん、でもどうしてもユキに言いたかったんだ。』

『でもこれからはずっと離れなくて済むわね。』

『うん、そうだな。』

『うん!』




・・・今は俺と彼女はずっと一緒に居るよ。

もう離れる事はないし、ずっと俺は彼女と一緒だ!

お互い死んで、“お互いの想いを伝え合った事で心が通じ会えた。”

もう俺は彼女と二度と離れないよ!




“生まれ変わるまでは、俺は彼女と一緒だ!”


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いつも何があっても俺の傍に居てくれた彼女に“ありがとう”を言いたい! 神石水亞宮類 @kamiisimizu-aguru

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