第7話
「……ん」
光の柱が消えたとき、みんなはしばらくまぶしくて目を開けられなかった。
エイタは目をこしこしとこすって、ゆっくり開けてみる。
「うわあ……!!」
目の前に広がるのは大きな町のようなところだった。
いっけん、エイタたちの住む世界と変わりのないような感じ。
けれど、そこを歩くひとたちの姿は、動物だった。
「すげえ! ホントに動物が歩いてる……!」
「ここが、異世界かぁ……!!」
ちょっと見回しただけでも、ゾウ、ネコ、イヌ、タヌキ……いろんな動物が服を着て歩いている。
ナオトなんかうっかり、足元を通りぬけたネズミをふんでしまうところだった。
「店みたいなものもあるねぇ」
アリカがあたりをながめながら、おもしろそうにつぶやいた。
見れば屋台のようなものも立っていて、いいにおいがしてくる。
エイタは思わず買いに行こうとしたけれど、ポケットには一円も入っていなくて、あきらめた。ヒュウガが「もしかしたらボクたちのお金じゃ買えないかもね」と言ったせいも、あった。
「で、困ってる人、というか動物さんって、どこにいるの?」
モモコがきょろきょろしながらユウヤに聞く。
ユウヤは「たしかそっちのあたりにいたと思うんだけど」と言いながら、赤くないポストを指さした。
なにもかもがめずらしい世界の中ではあったけれど、探検は困っているという人を助けてからでもおそくはない。
みんなはユウヤの指さしたほうを見た。
ポストのかげに、オオカミらしい感じの動物がうずくまっている。
「あれ! あの人だよ! なんか具合、悪そうでさ」
「……かまれたり、しない……?」
モモコはおずおずとつぶやいたが、ナオトが冷静に言った。
「もし、僕たちと同じくらいの知能があるなら、いきなりかみついたりはしないと思う。みんなで行ってみよう」
ナオトの言葉に、モモコはうなずき、そっとオオカミに近づいた。
近づかれたオオカミはいっしゅん、おどかすようにうなったが、よほど具合が悪いのか、すぐ力なくうなだれた。
「少し、さわらせてね。具合の悪いところをみたいの」
モモコがオオカミの目を見ながらやさしく言って、手をふれる。言葉が通じなくても、モモコのやさしい言い方はオオカミに伝わったようで、オオカミはだまってモモコに体をまかせていた。
「……どう?」
マナがモモコに聞く。
「うん……おなかのとこ……なんか、固い。病院に行って、見てもらった方が、いいと思う」
まじめな顔でモモコが言うものだから、言葉はわからないなりにオオカミにもそれが伝わったのか、ドキッとした顔になった。ぶんぶんと首をふる。
「病院に行くの、いやなの……?」
そっぽを向くオオカミ。
「いやなんだろうなあ」
俺だっていやだもん。エイタはそう言って、オオカミに同情した。
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