第20話

母の持っている漫画と小説をひっくり返して、なにか面白い話はないかと探していたら。声優によるシチュエーションCDというものまで出てきて。母のオタクぶりに感謝していた。シリーズもので何枚かあり。テーマは「ふたりの人に溺愛される貴女」。主人公は、みんな社会人のようだ。漫画の方も見てみた。黒羽という、俺様系の男子が主人公に強引に迫り引っ叩かれている。あまり面白くなさそう。少女漫画もあった。銀華という吸血鬼の女の子が、自分で戦う!かと思いきやその子は他の吸血鬼の姫で親衛隊にいつも守られている。これも絵柄が古い。

 わたしはわたしの、懐かしい、素敵な夢をなんだか思い出して。あれは確かにあったのに、引越しの荷物の整理で悲しい気持ちになっている。ふと思う。

 あれ、そういえば、クロハとギンカとどんな話をしたのだっけ?たしか、たしか。

 12歳くらいの頃からノートにちょっとずつ思い出したように異世界のことをぼんやり書いては、鍵付きのトランクに作品集入れとして創作を貯めていた。やばい。あれ誰かに見られたらつらいな。辛いことよ、増えないで。でもふたりに言われたことを忘れたくもない。なんだか変に語りかけてくる存在もいたし。いまはもう、どこにも感じられないけど。

 そもそも。私の夢はお嫁さんじゃない、と思う。

 そりゃ、夢見た幼少期はあったかもしれないけれど。

 ああ。新しい学校。またかあ。うまくやれるよ。いつもうまくやれる。でも、ハンデみたいな、コンプレックスが、あるんだ。わたしには。

 こんなふうに考えても、あの存在はもう異世界に連れて行ってはくれないし。あの兄弟たちには、会えない。

 現実を見よう。

 ちょっと細部を変えて、あれを物語にするんだ。

 もう書けないと思ったけれどもう少しで荒削りだけどふたりを、わたしのなかで、妖精の女の子と結ばれる男の子、にしてあげられる。

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