第19話

 仮にコトハを、この世に召喚した。生み出した。創造した。そんな存在は、時間もないなかお気に入りの場所にいた。

 コトハの一生だ。全人類の一生が好きになりたいが、異世界も含めると、なんだかたくさん話した子のところへ帰りたくなる。なんだったら、コトハをふたりに分離して、あの兄弟に幸せにしてもらうことも出来なくもなかった。しかし、それだと。わたしの愛するコトハがいなくなる。誰のこともあいしたい。あいしてるとはなにか。見守ることだとその存在は思っていた。コトハの一生が好きだった。しかし、いまは先が見えない。なので見守っている。

ちょっかいだして異世界に連れて行き。思ったより迫り方が下手な兄弟に溺愛されて欲しかった。10歳じゃあまだまだ子供だから全力で見守った。宿題の「恋の作文」も全力でやろうとしてくれるし。やっぱりこどもはかわいいな。さて、あの兄弟を見に行こうか、と思ってやめて。今度は悲しみを勉強しなおそう、と人々の涙や孤独を見に行った。万物であり、万物を見て、その存在は流転していた。時に思った。時を止めたらどうなるだろう。そう思った時は注意だ。時は止められないからだ。戻したことはある。いくつかの未来に分岐したり、そこで止まって誰も動かなくなったり。

 そろそろ、次の代になる。

 次は、何をするんだろう。

 そもそも、この存在は存在しているのか。

 もう一度だけ、コトハを見に行こう。もう一度だけ。

 たいへんだ。助けはいらないけれど幸せになっている。このために、人々を異世界に放り込んできた。

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