第3話

 クロハとギンカには秘密があった。

そして、しかしその秘密は人々を救うものだったので。こっそり生業にしていた。

なりわい。

なんて、ふしぎなひびきのことば。

クロハは

「僕は〝画家〟だ」

それも後天性の魔法使いの〝画家〟。

人々の傷跡を、元の皮膚の状態の色まで、近づけることができるのだ。

おかげで馬車の事故に遭った嫁入り前の貴婦人は、目立たない傷跡まで皮膚の色を魔法で想像の中、クロハに調合してもらい。無事に婚約者と結婚した。火傷の痕をうすい色合いまで落としてもらった子供もいる。クロハはこの力を秘密にしている。

なぜなら。

「お前の、うつくしい青い蝶や花のようなその色合いも、大きさも、お前が望むなら変えてみせる。だから、僕と結婚してくれ。そうしないと……」

「兄さん!コトハちゃんの気持ちを考えなよ。生まれながらに持ったものは良いにも、悪い、というか困るにも、変えることに気持ちも追いついて一緒に歩まなきゃ行けないんだ!」

銀髪のギンカもまた秘密の生業がある。それは色の変わる先天的な髪が高く市場で取引されて、自分自身誰だかわからないものの所に。髪をどこかで愛でられたり、笑われたりされていること。さらに特別なことに、庭師と農家にどちらもお世話になっているギンカは作るものさえ、珍しい色に変えてしまう。


「もう、どれだけの時間がたったの?」

コトハは呟く。

あの錦鯉のことも、嫌いになりそう。模様のあるものは嫌いになりそう。

クロハとギンカは変わり者で、今まで村娘にも町娘にも興味がなかったが。

突然、光のつばさを現しながら、神々しくこの世に生まれた、妖精のようなコトハにふたりは一瞬で心奪われてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る