菊
最近は、もっぱら海の拠点にいるが、たまには街に帰ってくる。
物資の補給だな。装備の調整もしないといけないし。
海でなんとなく作った不純物たっぷりの塩が1キロ銀貨一枚ぐらいになった。
これは儲かるぞ。塩作りがんばろ。
海産物は売れなかった。氷漬けにして持ってきてやったのに。
そんな街への帰り道、竜車が襲われていた。
「どうする?襲われてるの多分貴族だぞ。」
盗賊は貴族を襲わない、金にならずに命の危険が生じる。高リスクだからだ。
そんな奴らが貴族を襲っているということは100%訳あり。
「助けましょう。中に子供がいるわよ。」
ジャンヌは子供に甘い。クソ甘い。
「遠くから、なんとなく騎士たちを援護するだけだぞ。」
「わかってるわよ。」
隠れている盗賊の数を減らしていき、騎士たちの負担を減らして、その場を去った。
「バレてませんように。」
「ビビりすぎよ。どうせ相手は弱かったでしょ。」
「それがおかしいんだ。チグハグだ。何かの陰謀に巻き込まれた気がする。」
「その時は、逃げれば良いわよ。前みたいに。」
ジャンヌは身長と同じで気も大きくなった。俺は逆に小さくなった。
「子供っ言ってたが、どんな子供だったんだ?」
「気配的には女の子よ。5歳くらいの女の子。」
「多分、この街の領主の娘だな。長女だろう。5歳ということは。」
「訳ありね。」
「訳ありだな。」
「調べた方がいいわね。」
「そうだな。そうしよう。」
調べても特に情報は出てこなかった。怪しすぎる。これ以上調べるのはやめとこう。
「ジンはそれでいの?」
「しょうがない。たまたまあの子の竜車が襲われただけだ。そう考えよう。」
「明日、あの子は死ぬかもしれないのよ?」
「それがそいつの運命だろ。それに深入りして何でもかんでも助けられるほど、俺たちは強くない。」
「それもそうね。でも、、、」
ジャンヌは不満が残りつつ俺に同意した。
ジャンヌが現実的な考え方で良かった。この世界で他人のことを気にする余裕なんて普通はない。多産多死の世界はそういうものなのだろう。
「一応気にかけておけば十分だろ。面識もない子供なんて、この世界に腐るほどいて、その全てを見捨てているんだ。」
「極論でしゃべっても意味ないわよ。その子にとっては特別なことなんだから。」
「それを言われたら弱いな。分かったよ、少しずつ情報収集し続けとくよ。」
「ありがとう、ジン。」
「別にいいよ。」
いくら調べても全然情報が出てこない。領主の長女ということ。それぐらいだ。
なんとか、彼女が1月後に領地の視察に行くという情報を掴んどいた。
ちょうど彼女の行く方向が、俺たちの用事のある町へと同じ方向だしついて行ってやるか。
「スノウはどう思う?」
〜もしもの時は、助けたいです。〜
「なんでだ?」
〜私は助けて欲しかったからです。〜
「そうか。スノウがそういうならやる気をすよ。」
スノウは元貴族らしい。事情はあまり話してくれないが。珍しくスノウが自分の意思を示したのだし。いつも頑張ってくれるこいつのお礼だ。頑張ろう。
レベルを上げつつ、スキルレベルを上げつつ、いつもと変わりなく成長して1月が過ぎた。
領主の長女は4人の護衛の騎士と一緒に近隣の町に竜車で進んでいた。
俺たちは、森の中を駆け回って、その竜車を追った。
3日目で町につき、その町に一日滞在したのち、次の町に向かった。
道中、盗賊に襲われた。前回よりは強そうだが、今回の護衛の騎士には勝てそうにない。
前回の騎士はクソ雑魚だったが、今回の騎士は4人の騎士全員が精鋭の雰囲気がする。
その騎士4人が盗賊を蹴散らして、生き残った盗賊たちは逃げ出した。
「やっぱり、騎士たちが勝ったか。余計なお世話だったかな。よし、二人とも、
さっきの街に戻るぞ。あの町に用があるし。」
「待ってジン。様子がおかしいわ。」
「様子?」
確かに様子がおかしかった。
なぜなら、護衛の騎士の一人が、領主の長女に剣を振りかぶっていたのだから。
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