「こいし」

ぽこちん侍

第1話

 -汚れ、疲れ、くたびれた我々は一緒になった。

 彼女がどのように汚れ、どれだけ疲れていたのか僕には分からない(知っていたとしても僕はそれを話すことはないだろう)。ただ、彼女はくたびれていた。くたびれるには汚れる必要があるし、疲れていなければならない。僕だってくたびれている。20年は生きているのだ。くたびれない方がおかしい。僕や彼女に限った話じゃない。そいう場所で生きているのだ。くたびれて当り前だ。

 我々は静かな街の小さな家に住んでいる。

 誰も僕達を気にしない。

 それは運命といえば聞えはいいが、我々に関してはそんな綺麗なものではない。

 これは淘汰だ。

 弱い個体が余った土地にいく。自然界の掟。

 そこで我々は一緒になったのだ。




           1



 河川の水を掬うように、彼女の耳に触れる。

 彼女にとって耳は心に近いようで肩が髪の流れの中から顔を出す。

 僕は隆起した肩に触れたくなり、髪に沿い肩に触れる。

 -細く、小さい。

 隆起したのは肩だけではない。一般よりも幾らか大きな乳首が存在を主張し始めている。彼女の大きな目と小さな口がパクパクと物欲しげに動いている。

 「...いい」

 喉が...いや、心臓が渇望していた。

 「うん」

 唇の感触を確かめ、自分と他人の壁を確認する。

 それから、オアシスを求める旅人のように互いの舌を絡める。

 彼女は何度かのオーガニズムを迎える。




           2




 彼女は河川に流れる小石を眺めていた。

 流れに従い-抗うことが出来ず、ここから別の場所へ。

 「どこへいくのかしら」

 彼女は尋ねた。

 「どこかにはつくさ」

 そうね、と彼女は微笑む。

 

 


 

 


 

 

 




             

 

 

 

 

 

 

 

 

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「こいし」 ぽこちん侍 @pokotinnzamurai

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