第46話 脱出


「どうやってここへ来たの?」

「あの行き止まりの路地に飛び込んだ」

「なっ……バカじゃないの! なんでそんな危ないことするのよ!」

「おまえ、助けてもらっといてそれ言う?」

「だって、ここに入ったら出られないかも知れないじゃない!」

「入れたんだから出られるさ」

「そんな簡単じゃ……」

「──そうだよ。ここからは出られない。ここはぼくの結界の中だからね」


 夕闇の世界に、龍人りゅうとが立っていた。


「おまえは、あの時の!」


 弾かれたようにアマミが動いた。龍人から隠すように深月の前に出る。


「きみ一人なら出してあげるよ、上田くん。深月みつきちゃんには悪いけど、助けてあげるのは上田くん一人だけだ」


 龍人が意地悪そうに笑う。


「バッカじゃねぇの! 俺一人が助かりたいなら、わざわざ助けになんか来ねぇよ! だいたい深月を狙うのがわかんねぇ。おまえの闇を蹴散らした時、俺も一緒にいたんだぞ!」

「アマミ!」


 深月はアマミの腕をつかんだ。龍人を刺激するのが怖かった。


「深月は黙ってろ! とにかく、出るなら二人一緒だ」

「じゃあ残念だけど、きみたちは永遠にここから出られないよ。そのうち闇に喰われてしまうけど、いいの?」

「深月と一緒なら、かまわねぇよ」

「ちょっと何言ってんのよ!」

「だから黙ってろって!」


 アマミが怒鳴った。深月はびっくりして何も言い返せなかった。


「きみたちもかなりのバカだね。それなら好きなだけいるといい」


 龍人が消えた瞬間、夕闇の世界の見えない膜を破るように、ブワッと闇が噴き出してきた。


「逃げるぞ!」


 アマミに腕を引っぱられて、再び走り出す。

 夕暮れの通りをひたすら走っても、風景は少しも変わらない。街を行く人々は、深月たちの姿なんか見えないように通り過ぎてゆく。

 走り続けるうちに、何かが足に絡まってあっと思う間もなく地面に転がった。深月の足首には闇の手が絡みついていた。


「深月、大丈夫か?」


 アマミが膝をついて深月を助け起こしてくれたけれど、足首に絡まった闇はすごい力で深月を引っ張る。蹴っても振り払っても闇はほどけない。


「こいつ、深月から離れろ!」


 アマミが蹴散らそうとしても、全く闇は動じない。


「アマミ、景介けいすけさんを呼んで来て!」

「無理だ! この状態のおまえを置いて行けないよ!」

「良いから行って!」

「わかった。お姫様だっこしてやる」

「はぁ?」


 アマミはいきなり深月を抱き上げると、闇を引っぱったまま走り出した。


「フットサル同好会! なめんなよー!」


 アマミは叫びながらめちゃくちゃに走った。

 深月は必死にアマミの肩につかまって、めちゃくちゃな揺れに耐えた。舌を噛まないように歯を食いしばる。


「深月ちゃん、アマミくん、こっちだよ!」


 どこかから景介の声が聞こえた。


「深月、つかまってろ!」


 アマミが叫ぶ。

 滑るような浮遊感がしたあと、深月たちはアスファルトの地面に転がっていた。

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