失格令嬢と呼ばれた私ですが、王子様の首を斬り損ねたら面白い女だと勘違いされて世話係として任じられました

月野 観空

放蕩王子と私

「喜べ! お前をこの俺の嫁にしてやろう!」




 と、言ってくるのは、ドラ王子ことロベルト・エルドラッド第三王子殿下でありました。




 そんな求婚に私は「はぁ……」とため息をつくと――スラリ、と腰の剣を抜いて彼の首筋へと突きつける。




「殿下。縦と横なら、どちらに斬られるのをお望みでしょうか?」


「ま、待て待て待て! なんでそうなる!? 俺はこの国の王子だぞ!」


「ええ、そうですね。三番目のドラ息子ですね。噂では王家の厄介者だとかなんとか」


「だからってなんで殺そうとする!? 国家反逆罪で死刑になるぞ、死刑に!?」


「いえいえまさか。むしろ国王陛下もお喜びになることでございましょう。あのバカをよくぞ処断してくれた、と」


「はぁぁぁぁぁ!? いや、待て待て待って目が本気マジ……衛兵! 衛兵ぃぃぃぃ!!」




 ちょっと剣を向けられただけでガタガタ喚くバカ王子を見ながら、私はため息をついて剣を納める。


 それからちょっと空を見て、このわけの分からない状況へと想いを馳せた。




 いやはや、まさか……一週間ぐらい前の私は、まるで想像もしていなかったことでしょう。


 うっかり首を斬り落とし損ねた王子から、あろうことか求婚されることになろうとは。




「ほんと、いい加減にしてほしい……」




 こんなことになるぐらいなら、このバカの首をあの日本当に斬って捨てておけばよかったと心底から思うのです。




 ロベルト殿下バカ(ゴミ)(カス)(アホ)との出会いについて語るには、一週間ほど時を巻き戻すことになる。

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