第27話 恋患い・後編 ⑥
そうして、ノブオとサノッチは瀬川のアパートを後にした。
事務所に戻ると、テーブル席でジュンジも交えた三人で、これまでを総括する。
「えーと……三十年ほど前から小林真実子さんの写真に、緑黒い人影が写るっていうことがあって、それは誰かの念だったけれど、小林さん自身に影響はないと……だけど、念の送り主がそのうち亡くなるだろう、ということがあったんですよね」
言いながら、ジュンジはノートに要点を書いていく。
小林真実子: 写真に緑黒い人影、人影は誰かの念。
念を送る人物 → そのうち死亡するはず(超絶能力者マツ談)
それで一応、解決済みだった
瀬川一成; 体調不良のため、金魚の赤二郎と自身の食事の世話を依頼する。
体調不良の原因 → 小林真実子へ念を送っていたため
念は悪意でなく好意(三十年にわたる片思い)
小林真実子と瀬川一成は高校時代のクラスメイト
彼女に思いを伝えたことで、元気になる
「まさか、こんな感じで解決するんですね……それにしても、瀬川さんの体調不良の原因が、片思いの念からくるものだったなんて、よくわかりましたね。さすがサノッチ君!」
「ええ、瀬川さんを最初にお見かけしたとき、私の胸の辺りがずんと重くなり、ただの体調不良でないこと、そして彼の発する全身の気から、緑黒い人影を思い起こし、小林さんに関係している何かを感じました。今回、私たちに瀬川さんが依頼してきたのも、ただの偶然ではないように思われますね」
ジュンジに答えるサノッチは、マグカップのコーヒーを一口飲んだ。
「大変だったんだぞ、ジュンジ! サノッチは青い汁を一成さんに飲ませるし、一成さんは黒いゲロを吐き出して、そのゲロを洗ったばかりの赤二郎の水槽に……って、あぁぁっ!!」
思い出したノブオは叫び、イスから飛ぶように立ち上がった。
「ど、どうしたの!? ノブオさん!?」
「あ、赤二郎は? あんな黒いのを水槽に入れて、赤二郎は無事なのか!?」
メガネの奥で目玉を落っことしそうにするノブオの額に、冷や汗が噴き出す。
「え!? 金魚、死んだんですか!? 青い汁と黒いゲロって何!?」
事情をいまいち呑み込めないジュンジは、救いを求めるようにサノッチに視線を送る。
「赤二郎さんなら大丈夫です。あの後、瀬川さんの飲んだものと同じ青いスープを水槽に入れ、塩を入れて中和させましたから。一応、般若心経も唱えたので、かなり清まったと思います。
飼い主の瀬川さんも以前より元気になるはずですし、赤二郎さんも今まで以上に元気になると思いますよ。それにしても、瀬川さんの思いが成就されて何よりです。実は、私も告白が成功するという確信はなかったので……ドキドキしました」
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