第7話 恋患い・前編 ⑦
「それじゃあ、一通り見てみるか? こっちは居間だな……本当に物が多いな、タンスと日本人形まで……おっ、写真があるぞ!」
プラスチックの衣装ケースの上に、クルクルッとなってしまっている大量の古い写真が残されていた。
ジュンジと同じく軍手をはめたノブオは、一枚ずつ手に取って確かめる。
「家族写真だな……四十前後の夫婦に、小学五・六年の女の子、一・二年生くらいの女の子……四人家族だ。おっ、見てみろ! この家の前で撮った写真だ」
ノブオがジュンジと真実子に一枚の写真を示した。
二人も明かりに照らされるその一枚をのぞき込み、ぞっとする。
「こ、これが噂の無理心中をしたという、その家族……!? 無理心中ということは、ここに写っている父親か母親が犯人ってことか……そういえば、長女が行方不明でしたよね? じゃあ、この小五か小六くらいの女の子がどこかへ消えた、ということ?」
「こんな写真、前に来た時はあったかどうか……見た覚えはないんですが……」
困惑した様子で、真実子は顔をしかめている。
「大勢で来たのなら、こんなに丁寧に一枚一枚、写真を見ることもないでしょう。とりあえず、二階も見に行くか」
ノブオが率先して二階を目指す。ジュンジと真実子はその後に続いた。
二階には子供部屋と思われる洋室が二つ、和室が一間あった。
どの部屋も用途がわかるほどに物は生々しく残っていたが、ノブオが和室で頭痛がする、吐き気がする、この部屋ヤバイと騒ぎ立てる他には、何の異常も認められなかった。
「こんなに落書きや、荒らされた様子もないのはかなり不気味ですが……特別、ラップ音や声がするとかもないですね。お金持ちで幸せな家族の暮らしが見えるようで、本当に無理心中があったのかも疑わしいですよ」
家の外に出て、再び外観を明かりで照らしながらジュンジは総括している。
「いや、二階は本当にやばかった! 空気が違うんだ、空気が!! それに、俺には聞こえたぞ! 少女の悲痛な叫びが!! ここにはあった、確かに事件はあった!!」
メガネの奥で、目玉を落っことしそうにしながら叫ぶノブオに、ジュンジは冷ややかな視線を向けた。
「そうですかね? 僕には一切、何も感じられないけど……ん? 小林さん、どうかしましたか?」
真実子は落ち着かない様子で、しきりに辺りを見回している。
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