第12話「人生は長いようで短いねん。でも、その一瞬一瞬が輝いてるんや」
●お悩みの内容
名前:岩城剛(リングネーム:ブラックパンサー)
年齢:38歳
性別:男性
職業:プロレスラー
僕は20年間、リングの上で戦ってきました。デビュー当初は「史上最年少ベルト挑戦者」として期待され、25歳で念願のチャンピオンにもなりました。でも今、自分の引き際について悩んでいます。
去年の試合中に首を痛め、医者からは「次の大きな衝撃で最悪の場合、下半身不随になる可能性もある」と警告されました。若手の頃は、そんな話を「それも覚悟の内」と笑って済ませたものですが、今は違います。家族もいます。
それでも、僕はまだリングに上がり続けています。観客の声援を聞くと、血が騒ぐんです。でも以前のような派手な技は避けるようになり、それを不満に思うファンの声もSNSで見かけます。「もう引退したら?」なんて書き込みを見ると、胸が締め付けられます。
若手時代、僕を育ててくれた師匠は、最後まで全力で戦い、リング上で倒れて引退しました。それがプロレスラーの美学だと教わってきました。でも、これが正しい選択なのかどうか……。
プロレスは僕の人生そのものです。でも、これ以上リングに立ち続けることは、家族に対して無責任なのでしょうか? かといって、今の自分には、プロレス以外に何ができるのか、自信が持てません。
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●トラばあちゃんより
剛はん、あんたの気持ち、ようわかるで。人生を懸けた夢と、大切な家族との間で揺れ動いてる気持ち、ばあちゃんにも伝わってくるわ。
実はな、うちの息子も若い頃、プロレスラーに憧れてたことがあってん。でも怪我で断念して、今は違う道で頑張っとる。その時のことを思い出したわ。
そうやな……まず、はっきり言わせてもらうで。命あっての物種や。確かにリング上で散るのも美学かもしれへん。でも、それは昔の価値観やと思うわ。今を生きる剛はんには、剛はんの生き方があってええと思う。
剛はんな、今までリングの上で、どれだけ多くの人に夢と感動を与えてきたか、考えたことある? 若手の頃のベルト挑戦から、チャンピオンとしての輝かしい戦い、そして今も、あんたの姿を見て勇気をもらう人がおるんや。
確かに、昔みたいな派手な技は打てへんかもしれん。でも、20年の経験を積んだあんたには、若手にはない味わいがある。リングでの立ち回り、観客を魅了する間の取り方、それこそが今のあんたにしかできない芸やないか。
SNSの書き込みのことやけど、格闘技の世界を知らん人が気軽に書くもんなんて、気にする必要なんかあらへん。リングに上がる勇気すらない人の言葉なんて、受け流したらええ。
でもな、あんたの体を心配する声は、あんたのことを本当に想うてる人の声かもしれへん。そこはしっかり受け止めな、あかんで。
最近、テレビで見たんやけど、引退した後でも、若手の指導とか、解説とか、プロレスに関わる道はいろいろあるみたいやな。むしろ、あんたみたいなベテランやからこそできる仕事もあるんちゃう?
人生は長いようで短いねん。でも、その一瞬一瞬が輝いてるんや。あんたは今まで、リングの上で輝く人生を生きてきた。これからは、その輝きを違う形で見せる時期なんかもしれへん。
それにな、子どもはお父ちゃんの雄姿を見て育つもんや。ケガを押して無理して戦うお父ちゃんより、新しい道を切り開くお父ちゃんの姿を見せてあげた方が、ずっとええと思うで。
確かに引退は怖いかもしれへん。でも、引退は終わりやない。新しい始まりなんや。剛はんの人生は、プロレスだけやない。プロレスを通じて学んだもんを、これからどう活かしていくか、それを考えるのも、プロレスラーとしての誇りを持った生き方やと思うで。
まあ、最後は剛はんが決めることや。でも、あんたにはまだまだできることがあるはず。プロレスラーとしての誇りは、リングの上だけやのうて、これからの人生でも輝き続けるんやで。
ほんで、もし迷うことがあったら、また来てな。うちも若い頃は相撲が好きでな、力士の生き様からいろいろ学ばせてもらったんや。格闘技ちゅうんは、人生の縮図みたいなもんやしな。
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