第6話「人間は神様やないねん」
●お悩みの内容
名前 中嶋千紗
年齢:28歳
職業:マーケティングマネージャー
私は昔から、すべてをコントロールするのが好きなタイプでした。キャリアの目標から人間関係まで、人生の細部に至るまで計画的に行動します。しかし、1つだけコントロールできないことがあります。それは不安です。
物心ついたときから、私は不安と闘ってきました。親しい友人や家族でさえも、いつも周囲に隠し続けてきたことです。弱いと思われるのが怖くて、いつも平気な顔をしてきました。
しかし、実際には、不安が私を支配することもあるのです。息苦しさで目が覚め、無理やりベッドから起き上がって一日を過ごさなければならない日もあります。会議やプレゼンをしていると、心臓がバクバクして、手のひらに汗をかいて、気絶しそうになることもあります。
瞑想、セラピー、薬物療法など、不安を解消するためにあらゆることを試しましたが、どれもうまくいきません。不安と共存することを学び、それを乗り越えてきましたが、不安に飲み込まれそうになることもあります。
不安な気持ちを誰にも話したことがないのは、弱いとか能力がないとか思われたくないからです。でも、時々、手放しで助けを求めることができたらと思います。時には、弱音を吐いて、自分は大丈夫じゃないと認められればいいのにと思うこともあります。最近は本当にこの不安に押しつぶされてしまいそうで怖いです。
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●トラばあちゃんより
千紗ちゃん、お便りありがとう。
うちも108歳やから、長い人生の中でいろいろなことを見てきたわ。千紗ちゃんの話を聞いていると、うちも若い頃、不安と闘っていた頃を思い出します。大変な時期やったけど、うちはそこから多くのことを学び、今でも心に残っていることが多いねん。
まず、大切なのは、苦労しているのは自分一人ではないということを思い出すことや。人間なんて、どんなに成功した人でも、他人には隠している恐怖や不安を抱えているものなんやで。不安は人間として当たり前のことなので、恥ずかしく思うたらいかん。
次に、自分に合った不安の解消法を見つけることが重要やな。瞑想やセラピー、薬物療法はすでにやったようやけど、他にもまだあるかもしれへん。たとえば自然の中で過ごしたり、ヨガをしたり、信頼できる友人と話すだけでも、不安を和らげることができるかもわからんで。
ほんでな、いちばん大切なことは、助けを求めてもいいってことや。千紗ちゃんも自分で言うとるやないか。「手放しで助けを求めることができたらと思います」て。ほんまにそれでええねんで。人間は神様やないねんから、弱いねん。だめやねん。どうしようもないねん。だからどんどん助けを求めてもええねん。一人で重荷を背負う必要はないねんで。「重荷を分かち合うことは、重荷を半分にすることである 」って昔のえらい人も言うとったやんか。
そいで最後にうちからのアドバイスや。まず人生の小さなことに喜びを見出すことを忘れんことやな。たとえば自然の美しさ、服に当たる太陽の暖かさ・心地良さ、そして周囲の人々からの愛……若い時はわかれへんかもしれへんけど、こんな小さなことが本当に大切なんやで。ありがたいことなんやで。「ありがたい」ちゅうのは「有り難い」って書くやろ? 本当は「有る」ことが「難しい」ぐらいのことが、当たり前に存在してくれてるっちゅうことがほんまに「有り難い」ねん。
ちょっとながなってしもたけど、千紗ちゃん、ほんまに無理せんといてな。自分の両手が届く範囲で、無理のない範囲で頑張れればそれでええ。それ以上無理したらあかん。あんたの幸せをいつも祈っとるからな。ほな、またな。
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