第16話 奏と紋

「紋ちゃん、寮会議行かなくてもいいの?」

「それより奏に聞きたいことがあるわ。」


 琴ちゃんが教室を出て行くのを見届けてから、紋ちゃんは口を開いた。何が言いたいのかは大体わかる。多分琴ちゃんのことだ。


「なんでしょう?」

「あの子は一体何なのかしら。どこかの令嬢?それにしては、日野なんて名前聞いたことがないのだけれど。」

「そりゃそうだよ。彼女は名家の出ではないからね。一般庶民さ。私が誘ったんだ。」


 あ、紋ちゃん驚いた顔をしてる。そりゃそうか。


「どうして、って聞かないの?」

「聞いたところであなたは答えないでしょう?適当にはぐらかすもの。」

「よくわかってらっしゃる。」

「長い付き合いだもの。」


 紋ちゃんは、椅子に座って長い足を組んで頬杖をついた。普段は模範的な優等生なのに私といる時は大概こんな感じだ。

 彼女の家とは古くから交流があり、私と紋ちゃんも幼い頃から良く知った仲だ。


「奏、体の調子はどうなの?」

「紋ちゃんは家の件はどうなったの?」


 お互いに沈黙が流れる。これはお互い言いたくない、という意思表示だ。


「琴ちゃん、面白い子でしょう?」

「まだ会って一日だから何とも言えないわね。」

「そんなこと言って気になってるくせに。顔でわかるよ。」

「どうかしら。」

「寮で何かあったら守ってあげてね。」

「随分自分勝手なお願いね。」

「ごめんごめん。あ、そういえば私も紋ちゃんに聞きたいことがあったんだ。」

「何かしら。」

「琴ちゃんと同室の子のことなんだけど。あの子って―――。」








 一方、寮では。


「ふえっくしょん!」

「琴ちゃん、風邪?寮会議そろそろ始まるよ。」

「ああ、うん。大丈夫。」


 寮会議が始まろうとしていた。

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