第3話 誕生日作戦

「アヤメ誕生日おめでとう!」


クラスの女子の高い声が教室中に響き渡る。

前日悩みすぎて寝れなかった身としては勘弁して欲しいものだ。


彼女、西野アヤメは整った顔立ちに綺麗な黒髪、身長は平均位で制服は着崩したりせず学校のルールをしっかり守る清純派なタイプである。スクールカーストで言うと1軍といった所だろう。1軍と聞くと陽キャで怖いイメージだが彼女はそうではない。誰にでも優しく陽キャ陰キャなどあまり考えず接している。彼女の場合、考えずというより陽キャ陰キャの概念を知らないからこその平等な対応のようにも感じる。


「橘、おーい、きいてんのかよ?たーちばーなくーん?」

「悪いれん、ぼーっとしてた、昨日寝れてなくて。」

「珍しいな橘が悩みなんて、お前あんま悩まないタイプじゃん。」

「いや、まぁそうなんだけど、ちょっとな。」

「お前もしかして西野さんにどうやって誕生日のお祝い言おうか悩んでただろ?分かっちゃうんだよなぁ俺。天才ちゃんだからねぇ〜」


こいつは基本馬鹿だが勘は鋭い。完璧とまではいかないが7割、8割それっぽいことを当ててくる。今回も西野さんのことで悩んでたのは事実である。


今俺が悩んでいるのは彼女をお祝いする方法ではなく彼女のことをどう思っているかだ。俺はこのことを昨日の夜寝ずに悩み続けてきた。


「まぁ俺はライカでやり取りしてるし、メッセージでお祝いするかな。」

「そっか、お前仲良いもんな。」

「学校じゃ喋れないし直接言えたら良いんだけど無理そうだし。」


なぜ無理かという答えは西野さんの隣の女子に原因がある。彼女の名前は中川すみれ。圧倒的スクールカースト1位でクラスの女子のリーダーでもあり、学校で彼女を知らない人はいないだろう。クラス替え初日に男子で集まって彼女だけは敵に回さないで置こうと決めた程である。

そんな中川すみれが溺愛しているのが西野アヤメであり、西野さんに男子が近づこうとするものならすぐに追い払われる。中川すみれ自体は男子と仲いいが西野さんが誰かにとられるのが嫌なのだろうと俺は推察している。


「中川さんさえいなかったら西野さんにおめでとうって言えるんだけどなぁ」

「まぁそれは仕方ないって。メッセージでやり取りできてるだけマシな方と思おうよ。」

「そやな。橘の言う通りメッセージで我慢するか、今は。」


俺はここで1つ天才的な案を思いついた。彼女に対する自分の気持ちを調べるには仲良くなるしかない。そして今日は彼女の誕生日。おめでとうを伝える目的で彼女とやりとりをすることが出来ると…そして彼女に対する気持ちを知ることが出来る!


今日の夜この作戦を実行すると決め6限目の古典で深い眠りに落ちた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る