第2話 

 僕達は元の魔法陣に線を付け足したり、減らしたり、形を変えたりと様々な魔法陣を作った。


 広範囲に術をかけることができても小さな虫にしか反応しなかったり、植物に反応したりとあまりうまくいかなかった。


 20種類ほどの魔法陣を試してみたがどれも効果は今ひとつ良い結果とならなかったので次に詠唱を改変してみることにした。


 最初に使った詠唱は、

「我らの問いに応えよ」

 「生命に感謝し」

 「艶やかな妖の煌めきよ」

 「我らに悪しき気を抱く者を探せ」

 「serch」と4小節でできている。

 まずは言葉を変えて精度を上げてみよう。


 いくつか試してみたもののなかなかいい結果が出なかった。

 

 「我らの問いに応えよ」

 「光は悪しきものを撃ち」

 「艶やかな妖の煌めきよ」

 「我らに悪しき気を抱く者を探せ」

 「serch」

 蜂や兎がいると表示され近くにいる生物に対して魔法に反応した。

 反応する生物が増えたものの効果範囲が半径100m程度しかなくて、この詠唱はあまり効果的とは言えなかった。


 幾度となく魔法を発動しているうちに体内に流れる魔力らしきものを感じられるようになってきた。


 「あ!わかった!今まで私たちはやりたいことをただお願いするだけだった。でもそれは無料でご飯やゲーム機が欲しいと店員さんに頼むようなものだったのよ。つまりは私たちも使いたい魔法があるならば、それ相応の対価を払う必要があるのよ」


 「なるほど、僕達は考え方を間違えていたのか。ものの見方を変えてみることで新しい発見が生まれたね!まずは詠唱を変えてみよう」

 その後も何度も魔法陣の作りを変えてみたり、詠唱を書き直したりと様々なパターンのものを試していった。2時間ほど経った頃ついに目指していた効果のある魔法陣と詠唱が完成した。


 「汝、我に求めよ」

 「我らの魔力を対価とし」

 「艶やかな妖の煌めきよ」

 「我らの壁となるものを探せ」

 「serch」


 本日何度目かのマップが現れて、生物のいる場所が示された。マップの近くにボタンが追加され危険度の高い魔物だけの居場所を見ることができたり、危険度の低い魔物だけを見たりと選べるようになっていた。


 半径5kmまで効果範囲を広げることができ、生物を危険度の高い魔物や危険度の低い魔物、そして虫などの生物までを分類して見つけることが可能となったようだ。


 僕と美愛は目を合わせて喜びを噛み締めた。


 そして、実際に魔法を使用して僕達以外の他の生物のいる場所を見てみると危険度の高い魔物は近くにいないことがわかった。

 危険度の低い魔物もある程度の距離はあるので問題はなさそうだ。近くに何もいなさすぎて逆に不安になる。

 もしかしたら僕達の魔法を危険に感じて、距離をとっているのかもしれない。

 

 マップを指で操作して、移動してみると「人間」と表示されたマークがあることに気がついた。


 僕も美愛もその文字を見て驚いていた。

 この世界に来ていきなり魔物に襲われてから、まだ人間に会っていないのでその「人間」というマークに釘付けになってしまった。

 

 「会いに行ってみる?」

 

 「このマップを見る限り人間がいる場所までに危険度の高い魔物はいなさそうだし、ここからどうするべきか考えるにはまず現地の人に会う必要がある。だから会いに行ってみよう」

 僕達は物を収納するために今まで描いてきた魔法陣から空間魔法を出せるものを見つけた。アイテムボックスを出すと、思っていたよりも大きな出入り口が出てきた。

 一緒に転移してきた部屋を持ち歩けたら便利だと思ったので、再び魔法陣から重力魔法を探した。重力魔法を使うことによって重さを軽くして手でも持てるようになった。僕が魔法を使い、美愛に部屋を持ち上げてもらうことでアイテムボックスに収納することに成功した。

 2つの魔法を操作することは1つの魔法を操作するときよりも集中力が必要で、魔法を使い終わった後には疲労感があった。

 それもそのはず今日だけで何十回も魔法を使っているので、僕達の住んでいた世界にある異世界の話によれば魔力の量は決まっているので、疲れが出てもおかしくはない。


 空を見上げてみると、いつのまにか陽が暮れかけていた。なので、再度部屋を空間魔法から取り出して今日はこの場所で寝ることにした。

 食料は部屋にあったお菓子で今日は凌ぐことにした。学校に持って行っていた水筒が部屋にあったので、水分の問題も解決した。

 

 陽が暮れて寝床についた途端急に眠気に襲われて、すぐに寝てしまった。それは美愛も同じのようで、魔力を使いすぎたことが原因だと思われる。

 

 朝の太陽の光が目に差して、目が覚めた。

 目をぱちぱちと瞬きをして、眩しい光を遮るように目を手で隠す。

 

 少し重たい体を起こすといつもの朝の光景がある。

 昨日の出来事は実は夢だったのではないのかと疑うほどだ。

 外の様子を見てみると、やはり昨日と同じ草木が見える。本当に現実で起こっていて、夢なんかではなかったのだ。


 隣を見てみるとまだ美愛は寝ているようだ。気持ちよさそうに寝ているところを起こすのは悪いので僕は1人で外に出た。

 手を上に伸ばし太陽の光を身体中に浴びた。

 本当にここは別の世界なんだな。信じられないけど今まで感じられなかった魔力の流れが、今では当たり前のように流れを感じられる。


 「ゆうと、おはよー」


 「おはよう、みあ」


 美愛は大きな欠伸をして、まだ眠そうな目をこすりながら起きてきた。


 今日から未知の世界と向き合っていかなければならない。

 今日の目標はこの世界の人に会うこと。

 昨日使った魔法で部屋をアイテムボックスに収納して、再度serchで生物の居場所を探った。


 目標地点までの道に危険度の高い魔物がいないことを確認した。

 「さぁ、冒険の始まりだ!」

 

 

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