ドスケベスリングショットVS妖艶白髪スレンダー再び!!
先に動いたのは
横っ飛びで滑り込むように渓流へ飛び込み即座に足もとから水流の流れを立ち昇らせる。
応じる
迅雷のようなその動きに真正面から水流が叩きつけられる。
ゴッ!! とも、ゴバッ!! とも聞こえる音が辺りに響き、突っ込んだ
ダンッ!! と
するとビキビキビキビキッ!! と接触した個所から急激な凍結現象が生じ逆流するように
「……っ!!」
「なっ……!! なんでアンタがその力を……!!」
木陰に身を潜めて状況を見守っていた
「なんでって、ルール説明にあった通りよ? 奪ったの」
「奪うって……、だってそれは、あの子が元々持ってた力なのよ?! この面白くもない殺し合いゲームとは全く関係なくあの子が始めから持ってた力っ!!」
それを
「ゲームとは関係なくても"力"であるならば奪えるみたいなのよね。ルールにも別にゲーム参加後に貸与された"力"を奪い合えとは言われていなかったわけだし……。誤算はこの"力"を奪っちゃったせいで三人殺したのに勝利を確定出来なくなってるっていうこの状況なんだけれどね」
「……、なんでよ……、なんでこのゲームとは関係ない"力"を奪ったのよ!!」
「決まってるでしょ? こっちの方が強くて生き残るのに使えそうだったからよ?」
そうすることが出来て、そうすることが有用だと判断できた、だからそうした。
ただただ合理的なだけの回答だった。
折角できた友達を殺した相手が悪びれもせず目の前に立っているというだけでも業腹であるのに、さらにその友達自身の"力"を奪って使って別の人を殺して回っていた。
そんな状況では冷静さを保ち続けられる方がよっぽどどうにかしている。
「あぁぁぁっぁぁっらっぁぁ!!」
だから
絶叫して、喉元を噛みちぎってやろうかという形相で一直線に跳び掛かる。
「アハっ!! そう、そうよっ……!! いいわぁ、美しい憎しみだわぁ!!」
追い詰められた人の怨嗟が、極限状況の絶望が、信念のために泥をすする覚悟が、彼女にとっては今生きている喜びの全てだ。
向けられるありとあらゆる感情のその全てが狂おしいほどに愛おしい。
故に跳び掛かってくる相手の顔面と腹部中央に狙いをつけて連撃のカウンターを叩きつける準備を整える。
「ダメよ。冷静になりなさい。乗せられて近づいちゃダメ」
だというのに、至近距離になる直前で水流による一撃が二人の間に割って入った。
「チッ!!」
ダンッ!! ダダンッ!! と細く鋭い水流が続けざまに
「迂闊に近寄ってはダメよ。あなただって見たでしょ? あの量の水流を一気にあれだけ凍結させられるのよ? 絶対に無策で近づいちゃダメ。何ならお姉さんの攻撃に巻き込まない保証も出来ないし、そういう意味でもなおさらよ」
「……ッ!!」
何度も繰り返しハッキリ明確に諭されて泣きそうな
足の止まった
「今は
「……、そうね」
考えなしに飛び出したのに、制止されて何も出来なかった。
あと一歩分だった。
だけれど、その一歩分は果てしなく遠かった。
止められたことを歯噛みすればいいのか、それとも良かったと思えばいいのか、
何せあのまま無策に踏み込んでいたならば、きっと今頃は死んでいた。
でもあのまま踏み込めていたならば、今みたいに恐怖心がグルグルと身体の中を這いずり回ることもなかった。
弱くて弱くて嫌になる。
もう本当に自分の弱さが嫌になる。
「それに、きっと自分が元々持ってた"力"を友達を殺すことに使われたってんじゃ、ハトちゃんは悲しむだろうし……」
しょぼくれる
「……、そう、よね」
すっと木陰に身を隠した二人のことをつぶさに見ていた
「なんだ、愉しめるかと思ったのに、もう諦めちゃうなんて、つまらないわ」
「さっきも言ったでしょ、お姉さんが遊んであげるわよ。その子たちの分までねっ!!」
露骨に落胆して見せることで相手の怒りをさらに煽り立てるのが目的だったのだろうが、彼女にとって面白い反応はなく、代わりに
水流による攻撃に対して凍結によるカウンターを決めるのはそう難しいことではない。だが、凍結能力というタネが割れている以上、
だから仕掛けるならば水流による攻撃をカウンターするよりも、あらゆる手を使って接近し攻撃の発生源たる川の水を凍結処理して格闘戦に持ち込むべきだ。
故に
避ける。
避け続ける。
意志を持った巨大な植物のつるのような水流の連撃をただひたすらに避け続ける。
完全な根競べ。
お互いにこの場にたどり着くまでの間に"力"の無理な行使によって体力を大いに消耗していることは察し合っている。
その上での根競べ。
待っている。お互いに相手が悪手を打つのを待っている。
集中力を切らせて攻め手を急いだほうが負ける勝負であり、先に"力"を使い過ぎて肉体の限界が訪れたほうの負ける勝負だ。
お互いがお互いのことをよくよく観察しつつ身体を動かす。
お互いがお互いの動きをズラし合うように、タイミングを計り続けているのだ。
一見した戦いの絵面は異能力によって水流が人体に狙いを定めてその余波で周りの木々や地面を叩きつけるという派手なモノ。
だが、その根底にあるのはもっとも原始的で根源的な身一つでの体力の消耗戦。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……、」
鳴り響く水音と泥を踏みつける足音に紛れて誰かの荒い息遣いが森の中に木霊した。
「しまっ……!?」
一つの水流を打ち放った直後に、
一発を放つその瞬間には、完璧なタイミングで攻撃を打てたと確信出来ていた。
だけれど半呼吸後にはその評価は一転する。
想定していた
完璧なブラフだった。
動きを完全に誤認させられて、タイミングをズラされた。
そうなれば
それを防ぐには即座に水の槍を作り出して突っ込んでくる
ただどうしたって一手遅い。
傾いだ身体を強引に振り回した
その瞬間、ズルリと不自然に彼女の身体がさらに傾いだ。
足場がずぶ濡れになり過ぎていたのだ。
ブラフを織り込み瞬発力をセーブしながらの動きでは足もとの均衡は保たれていた。
しかし、そこから大きく一点に負荷が集中されると話が違ってくる。
打ち放たれた水流の量が多すぎたのだ。
「クソッ――!?」
それでも地面に手をついて転がるようにして勢いを殺さぬように体勢を整え直す。
ただ半呼吸分の猶予と、一呼吸分のロスが生まれてしまった。
目から血涙を流し、鼻から血を垂らした
ドグシャンッ!! と酷く鈍い音が響いた。
直撃だった。
まるで紙屑を叩くかのように
空中で
「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
荒い息遣いと共にずるりずるりと渓流の流れとともに
「ハシちゃんは
「わ、分かった……!!」
「先輩は……、何かあった時のためにここで待っててください!!」
「構わないけど、気を付けるんだよ?」
「分かってますって!!」
直撃の仕方と吹っ飛び方から考えてもきっとまともに動けるような状況じゃないだろうと
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