#2:白くてモコモコした変わった生き物?
学校に来たり来なかったりする日を繰り返していると、いつの間にか三学期を迎えていた。さすがに担任からも心配され、毎朝、電話が掛かるようになっていった。当然、私は出ない、嫌だから。
三学期が始まって二週間が経った。一度も学校に行っていない。平日という概念はあり、学校に行っていないという罪悪感はあるが、あの教室に行くこと自体がそれを上回り、自分自身で葛藤するが、答えが出たときには、空が赤くなっていることが多く、それを毎日繰り返す。
けれども、友達からLINEはくる。でも、週に一度あるか、ないかの頻度である。自分からはしない。なぜなら、人と関わるとしんどいから。
朝起きて、二度寝したら、もう昼過ぎだった。母親は仕事に行って、置き手紙に「冷蔵庫に昼食があるから食べて」と書いてあった。
珍しいことをしていると思ったが、よく考えれば、昨日の晩御飯だったチキンカツが大量に食卓にあったことを思い出した。
洗面台に向かい、顔を洗い、歯を磨き、下着を取り換える。毎回、ここで鏡を見て、自分の姿を確認するが、自分なりには整った顔をしていると思うが、漂うオーラがつくづくそれを台無しにしていると思う。
遅めの昼食を食べるため、冷蔵庫を向かう。多分、冷蔵庫の中には弁当に入らなかった大量のチキンカツがあると思いつつ、何気なく冷蔵庫を開けた。
予想通り、大量のチキンカツがあった。「また、これを食べるのか」とうんざりしていると、冷蔵庫の中に大きな大福みたいなものがあった。
でっかい大福だと思っていたが、「でっかい大福!」と驚き思わず二度見した。
よく見ると、毛が生えている。毛が生えたまん丸の謎の物が冷蔵庫の中にある。
とりあえず、冷蔵庫を閉める。そして、再び、開ける。
やっぱりいる。
謎の白い生物らしきものが冷蔵庫の中に!
たぶん、冷蔵庫の冷気が逃げるぐらい、冷蔵庫の開閉を繰り返している。しかし、何度見てもいる謎の白い生物。そもそも、なんでこんなところにいるのか、こいつは一体なんなんだという疑問は、開閉を繰り返して強まっていく。
とりあえず、この生物みたいな塊を手に取ることにした。それを手に取った瞬間、まるで高級羽毛布団の中身を触れたような心地よさと、人をダメにするソファーの様なもちっりとした弾力があった。
「きもちちいい!」
声に出るほどの心地よさ、思わず、私はこのモコモコを抱きしめてしまった。
「めっちゃきもちちいい!」
これを抱きしめたまま、部屋に戻り観察することにした。
ひとまず、ベットに置いてみた。やっぱり、でっかい大福みたいだ。直径はだいたい30~40センチあるかないくらい?
円形でモコモコしている。なんか冷蔵庫から出した時よりも大きくなって気がする。
私はなぜか、このモコモコした存在に安心感を抱いた。心の隙にスッと入り込み、私になかった充実感を与えてくれるような不思議な気持ちだった。
しばらく、この充実感に浸って眺めていると、モコモコが突然動き出した。
「えっ、ちょっと生きてるの? これ……」
モコモコは、まるで寝起きのような仕草で動く。
「ふうん~?」
こんな鳴き声が聞こえたあと、モコモコは、本来の姿になったと思った。
「ふうん? ふふん ふ~うん」
まるで、雪で作った兎の様なフォルム、目は黒く、小さな口らしきものも見える。
「なにこれ……かわいい……」
私はゆっくりとその子を抱きしめた。モコモコした心地でずっと抱きしめた。
「ふう~ん」
抱きしめられた方もどこか嬉しそうだった。
「ねぇ、名前ある?」
「ふう~ん?」
「冷蔵庫にいたから、多分もないよね。ねぇ、どこから来たの? なんでここにいるの?」
「ふう~ん、ふうんふん」
「答えられないよね…… じゃあ、名前つけてあげる!
「ふん?」
「名前は冷蔵庫にいたから、う~ん、冷蔵庫の『冷』を取って『レイ』で!」
「ふうん!」
なんだか、嬉しそうだった。
我が家の冷蔵庫にいた謎の生物、それは私の心を満たすものだと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます