第159話 凱旋後のレベリング

 波乱の連続だった、林間学校を一日早く終えた俺は自宅に戻っていた。

 不意に中止となった分、学校は休日になるのでそれまで静養したいと思っている。

 

 学校側も「灘田失踪の件」もあり、今でも大騒ぎになっているらしい。

 ちなみに姉の美桜達は予定通り明日まで旅館と温泉を満喫するどうだ。

 一緒に羽を伸ばしている、紗月先生は学校に戻らなくていいのだろうか?


 帰宅後、俺は忘れていた自分のステータスを更新することにする。

 そして、いざ《鑑定眼》で見ていると、えらいことになっていた。


「レベル35!? 嘘ッ、めちゃ上がってんだけど!? それに獲得した経験値SBP:1000って、おい!」


 どゆこと?

 あっ、そうか……高レベルの鋼鉄蜂スチール・ビーを斃したことに加え、闇の翼竜ダーク・スカイドラゴンを一人でワンキルしたからか。

 おまけにカンストした闇召喚士ダークサモナージーラナウと最上位の悪魔デーモンメリリムを斃すことに貢献したんだ。


 そりゃ半端なくレベルと経験値も上がるわ……。

 

 と、とりあえず割り振ってみるか。



【幸城 真乙】

職業:盾役タンク

レベル:35

HP(体力):335 /335

MP(魔力):220/220


ATK(攻撃力):570→770

VIT(防御力):1400→1800

AGI(敏捷力):210→310

DEX(命中力):230→330

INT(知力):200→300

CHA(魅力):180→280


SBP:0(-1000)


スキル

〇新技能スキル

《双剣術Lv.2》……両腕に二刀の剣を装備することで二連続攻撃が可能となる。攻撃力ATK+200×2補正。

《勇猛果敢 Lv.1》……自分を含め所属するパーティ全員の攻撃力ATK+100補正。


(その他スキル)

《金剛ノ壁Lv.7》《貫通Lv.7》《鑑定眼Lv.10》《不屈の闘志Lv.10》《毒耐性Lv.10》《剣術Lv.10》《盾術Lv.10》《隠蔽Lv.8》《不屈の精神Lv.8》《狡猾Lv.8》《統率Lv.10》《隠密Lv.6》《索敵Lv.7》《ダブルシールドアタックLv.5》《呪術耐性Lv.3》《克服Lv.4》

《アイテムボックス》


魔法習得

炎の槍フレイムランスLv.3》……炎の槍を投擲し敵を穿つ。また一定時間、武装することが可能となり、攻撃力ATK+500で炎攻撃効果を与える。(技能レベルが上がる度に攻撃力+50、武装持続+60秒ずつ追加される)


火炎球ファイアボールLv.10》

加熱強化ヒートアップLv.10》

点火加速イグナイトアクセルLv.10》

火炎壁ファイアウォールLv.7》

火炎嵐ファイアストームLv.5》


ユニークスキル

無双の盾イージス


特殊スキル

《スキルリダクションLv.1》……敵のユニークスキル攻撃を受けた際、ダメージ系攻撃を10%の確率で二割軽減し、効果系の攻撃を無効化することができる。レベル上昇と共に成功確率が上昇する。

《パワーゲージLv.8》


称号:鋼黒炎の弐盾持ちメタルブラックフレイム・ダブル・エクスワイア:VIT補正+100  

   鋼鉄の弐盾持ちフルメタル・ダブル・エクスワイア:VIT補正+50

   鋼鉄の無盾持ちフルメタル・ノー・エスクワイア:VIT補正+50

   猪突猛進レックスラッシュ精神的マインド補正有



 うん、基本能力値アビリティに関してはこんなもんか。

 つい癖でVITを中心に上げてしまったけど、まぁいいだろう。


 収穫として新しい技能スキルを二つ覚えた。

 連続攻撃が可能な《双剣術》は使えるし、《勇猛果敢》はパーティ全員のATK+100も上がるのか……スキルレベルが上がれば、Lv.10で+1000になるようだ。

 新しい称号も補正付きだし、もうやべぇな……。


 おまけに気が付くとユニークスキル技も追加されている。

 《スキルリダクション》か……敵のユニークスキル攻撃を削減あるいは無効化してくれるなんて超有難い。

 こりゃ、是非にレベルを上げに頑張らなくちゃな。


「俺がこれだけ上がったんだ。ヤッスの奴はどうなのかな?」


 あいつも相当活躍したからな。

 ギルドじゃ最速ルーキーとか言われちゃっているだけに、つい気になってしまう。

 俺はメールで訊いてみることにした。


 間もなくして、ヤッスから「レベル25になったぞ」と返信が来る。

 どうやら奴も激戦の末に4レベル上がったようだ。


「ってことはヤッスの奴、『停滞期』に入るのか……まぁ俺のように強い敵と戦ってりゃ、すぐに突破するだろうぜ」


 なまじ変態紳士なだけに、常識離れの奇跡とか見せてくれそうだ。

 したがって、そんなに心配はしていない。


 それから暇なので、ガンさんと美夜琵にもメールで確認してみる。

 ガンさんもレベル38からレベル41に上がったようで、美夜琵はレベル39から43と爆上がりしていた。


 特に美夜琵からは、


『真乙殿、聞いてくれ! ワタシのレベル43も上がったぞ! 四段階も、し、信じられん……こんなの初めてだ。帰宅してからも興奮が冷めやらぬ……不適切かもしれぬが戦いを終えて、充実感に満たされているのだ』


 メールでなく通話による報告だった。

 しかも、やたら鼻息が荒い。


「そっか、充実したってところは良かったかな? けど、まだパーティ入りしてないのに危険な目に遭わせて悪かったよ」


『何を言っている!? こんなワタシを誘ってくれて寧ろ嬉しかった! つい姉上にも自慢しやったくらいだ!』


「ディアリンドさんにもか?」


『ああ、色々あってしばらく疎遠だったからな……姉上も嬉しそうに聞いてくれていた。あと、姉上から「マオト殿によろしく」と伝えてくれとのことだ』


「わかったよ。ディアリンドさんにも世話になっているからね……あとは『白雪学園』の学園祭だな」


『ああ、必ず母上を説得してみせる! 頼もしい味方も沢山いることだしな! 本当に真乙殿には感謝でしかない!』


「いや、俺は別に……そうだ、当日は友達と姉ちゃん達も来るからな」


『友達? 同じグループだった野咲さんか?』


「まぁね、あと秋月もだ」


『……そうか、わかった』


 なんだ? 急に歯切れが悪くなったぞ。


「どうした? 何か問題でもあるのか?」


『いや……そういえば、他の【聖刻の盾】の方々とご挨拶がまだだと思ってな。特に美桜殿は、顔を合わせていたにもかかわらず』


「ああ、戦闘中だったし仕方ないよ。それに姉ちゃんはそういうの気にしないタイプだから大丈夫さ。挨拶なら当日でいいと思うぞ」


『そっか……なら問題ない。本当なら真乙殿と二人きりが良かったのだが、こればかりは仕方ないだろう。ではまた――』


 そう言いながら、美夜琵は一方的に通話を切った。


「……なんだ? 途中当たりから、やたら小声で聞き取れなかったけど。まぁ、いいや」


 俺は楽観的に捉え、ベッドに横になる。

 するとスマホが鳴り、誰かから着信がきた。

 

 宮脇先生ことインディさんからだ。

 俺はすぐ着信に出た。


『ごめんね、マオトくん連絡して。大丈夫?』


「学生の俺は暇だよ。それよりインディさんこそ、忙しいんじゃないの?」


『まぁね。担任の灘田先生がいないしね。校長先生からクラス担任になるようお願いされたわ』


「マジで? どうすんの?」


『しばらく引き付けるつもりよ。教師の灘田が「黒」であった以上、まだレイヤの協力者が潜伏している可能性があるからね……きっとジーラナウの件はレイヤ側に知れ渡っている筈だわ』


「そうだね……その後、『零課』は灘田のアパートにガサ入れしてどうだったの?」


 ジーラナウこと灘田から、渡瀬は奴の部屋で匿っていたと証言がある。

 戦闘後、ゼファーさんは即効で待機している作業班を向かわせたと言う。


『……既に先手を取られていたわ。作業班が突入しようとした頃にはアパートが燃やされ大炎上よ。ガサ入れどころか消火活動に専念する羽目になったみたい。出火元は灘田が住んでいた部屋だから、レイヤの犯行で間違いないわ。きっと痕跡を消すためね』


「……マジかよ。クソォッ、やっぱ逃げられたか!?」


 しかしどうやって知ったんだ?

 あの時、鋼鉄蜂スチール・ビーによる《無窮の営巣地インフィニティ・コロニー》の結界で外部との連絡手段は全て遮断されていた筈だ。


 結界が破られた時、ジーラナウは瀕死で虫の息だった。

 とてもそんな余裕があったようには見えなかったぞ。


『レイヤが知ったのは、おそらく別の協力者からね……ゼファーさん曰く、林間学校に参加していた生徒なら、いち早く異変を察知してレイヤに報告することができるっと睨んでいるわ』


「生徒? また教師って線は?」


『私が調べた限り、教師は全員『白』よ……その代わり生徒の中には怪しい人物が数人該当しているわ』


「なるほど……ある程度、絞られているのか。にしても結局、俺達は襲われただけの無駄骨だったみたいだ」


 ジーラナウめ。

やっぱそれを見越して、あえて闇勇者レイヤの潜伏場所をバラしたんだろうぜ。

 己を生贄にして悪魔デーモンメリリムに自分の意志を宿らせ、俺達と戦わせるためにだ。


 にしても渡瀬の野郎……常に安全圏にいやがる。

 自分から直接手を下すことは一切ない、高みの見物ぶりは余計に腹立つ。


 俺がムカついている一方で、電話越しのインディは至って平静であり寧ろ声を弾ませているように聞こえる。


『マオトくん、そんなこともないわよ。ちゃんと収穫もあったんだから』


「収穫って?」


『フフフ、それはね――』


 その後、インディからとんでもない事実が語られる。

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