第153話 天空の支配者
ジーラナウの命を代償に召喚された、「メリリム」という
それだけに圧倒する存在感を醸し出している。
「……まったく、とんでもない奴を飼い慣らしているわね、レイヤ」
「あんなの体内に取り込んでいた、ジーラナウもイカれてるよぉ……こりゃガチやばいねぇ」
「……もう邪神級じゃないの?
『零課』のゼファーを始めとする、美桜や香帆にアゼイリアと言った歴戦の“帰還者”でさえ動揺を隠せず驚異して戦慄している。
俺も《索敵》スキルが麻痺するほど危機感を抱いていた。
クソォ、なんなんだこいつ……どんな存在なんだ。
危険かもしれないが《鑑定眼》で調べてみるか。
俺も冒険者の端くれ。そう簡単に発狂することはない筈だ。
おっ、ステータスが見られるぞ。
これがその結果だ――。
【メリリム】
レベル70
HP(体力):1350/1350
MP(魔力):680/680
ATK(攻撃力):785
VIT(防御力):535
AGI(敏捷力):1450
DEX(命中力):1255
INT(知力):480
スキル
《
《光合成Lv.10》……1日1回、太陽の光を浴びることで損傷したダメージを全回復させる。
《大堕撃Lv.10》……クリティカルヒット率100%上昇。また攻撃射程にいる敵全てに+200ダメージを与える(貫通性なし)。
《ボディアタックLv.10》……体当たり攻撃。ヒットする度にダメージ率+30補正。
《気絶Lv.7》……攻撃を当てた敵を強制的に5秒間気絶させる。
《傲慢Lv.5》……謎の自信を見せることで敵の
魔法習得
《上級 炎系魔法Lv.10》
《上級 風系魔法Lv.8》
《中級 暗黒魔法Lv.10》
ユニークスキル
《
〔能力内容〕
・胸部の眼を見たもの全ての
〔弱点〕
・眼を見なければスキル効果を与えられない。
・敵のユニークスキル能力で無効化される場合がある。
・能力者が撤退した場合、あるいは自身がキルされた場合、スキルは自動解除される。
レベル70!?
以前のモロクより強いじゃないか!?
ぱっと見、高い
しかも広範囲に影響を及ぼすスキルばかりだから、より質が悪い。
特にユニークスキル、《
呪術効果に似ているけど魔法と異なり呪解はできないからな。
解除するには射程外まで逃げるか本体を斃すしかない。
捕捉として、メリリムは空を飛ぶ
異説では大地と地に悪(疫病)を誘起する堕天使とされているとか。
クソォ、俺達はこんな災厄みたいな
さらに驚異的な事態が発覚する。
『――まずは貴様らから殺す! 何人たりともレイヤに近づけさせないわ!』
上空のメリリムから発せられた台詞だ。
「あの
だが異世界じゃ
モンスターは人の言葉を話すことはあり得ない筈だ
『ジーラナウが最後に施した《
「もう一人のジーラナウ? どうしてそんな真似を?」
ゼファーの説明に、俺は首を傾げる。
自分の命を代償に
常軌を逸すると思った。
『司令塔を失った
「俺達の抹殺……そのために、あえてレイヤの情報を喋ったのか? この場にいる全員をキルしてしまえば情報を活かす者がいなくなる……そこまで考えて」
『それもあるが、最も厄介なのはメリリムが知恵をつけたことにある……俺がジーラナウなら、標的を始末するためにあらゆる手段を転じるだろう。たとえば、旅館の人間を人質にするとかな……そう出る前に決着をつける必要がある』
「即キルってやつですか? この人数で? しかも空を自在に飛べる相手に……レベル70でカンストしているんっすよ?」
以前、美桜から現実世界ではレベル値に対し、異世界とは異なり自動的なプロテクトが入ると教えられた。
異世界ではレベル100がMAXらしいが、現実世界ではレベル70がMAXだとか。
俺が知る限り、その域に達している“帰還者”は【氷帝の国】の団長であるタイガこと徳永さんだけだ。
しかし、
『――俺と美桜が組めば、奴のレベル値や
ゼファーは鉄仮面越しで、しれっと言っている。
あんた、さっきまでメリリムにびびって後退りしてたじゃん。
超説得力ねーんだけど。
だが名指しされた美桜も当然のように頷いている。
「ええ、こちらの
「こんなこともあろうかと対竜撃用になるだけど、上空のモンスターを引きずり下ろし武器なら持っているわ。でもセッティングに時間が掛かるから、それまでメリリムを一定位置に留まらせて時間を稼いで欲しいんだけど……」
「流石はアゼッチ先生。それならあたしが適任だねん。せっかくだし先生に作ってもらったアレを試すよぉ……けど、レベル70のバケモノ相手に単独じゃ嫌だなぁ。マオッチとヤッスゥ、フォローしてくんない?」
なんだろ、このベテラン組の妙な自信は?
どうやらハッタリじゃなく、ガチで勝算があるようだ。
まぁ信頼できる姉ちゃん達が言うなら間違いない。
「わかった協力するよ、香帆さん」
「モチのロンロンですぞ。香帆様、この安永にお任せを」
俺とヤッスは首肯し、ベテラン組に委ねることにした。
『よし、奴が攻撃してくる前に、こちらから行動に移すぞ――《
ゼファーが纏う鎧の隙間から、漆黒の霧が放出される。
瞬く間に周囲が暗黒に覆われた。
不思議なことに、何故か俺達の姿は普通に視認できる。
まるで景色だけが真っ黒な絵の具で塗り潰されたような光景だった。
しかし、メリリムに俺達の姿が見えないのか、『なんだ、これは!? どこにいる!?』と叫びながら、うろうろと旋回を繰り返しながら上空を徘徊している。
そういやゼファーは「闇を操る」と姉ちゃんは言っていた。
きっとこの現象は、彼のスキル能力の片鱗だと思われる。
「――これで3分間は時間が稼げるだろう。それまで
「わかりました、ゼファーさん」
「……は、はい(俺、この人には誤認逮捕させられて以来トラウマがあるんだよな)」
宮脇ことインディさんが頷く傍らで、ガンさんがやたらと顔を強張らせている。
まだゼファーに不審者と間違われて連行された件を根に持っている様子だ。
「まさか『零課』から指示を受ける日が来るとはな……あいわかった、ゼファー殿」
ん? 何故、美夜琵まで頷くんだ?
ゼファーから名前呼ばれてなくね?
俺が不思議そうに見つめていると、美夜琵は「ああ、そうだった……」と微笑む。
「真乙殿、ずっと言うのを忘れていたが『
「え? そうなの……そういや転生者だったな。服装以外、あんまり見た目が変わらないから違和感があるよ」
「ワタシが転生した極東方面の地域はアジア系が多かった。だから日本人とそう変わらない容姿が多かったのだ」
『鬼灯が所属している【風神乱舞】は、異世界でも極東最強と謳われた伝説のパーティだ。
「ゼファーさん、そんな言い方しなくても……確かに鬼灯さん、異世界では期待の新星として話題の
確かにゼファーの言い方も酷いが、インディの説明とて身も蓋もない内容だ。
けどそんな理由で語り継がれているなんて、俺なら嫌だな……ガチ泣きそう。
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