第150話 闇召喚士との決着
俺が焦ったその時だ。
「この安永がいる限り、美夜琵のGカップは守り通しますぞ――スキル発動、《
ヤッスが『
すると突如、美夜琵の前に
デュラハンは美夜琵の前に立ち塞がり、腰元に携えていた長剣を引き抜いた。
しかし、そいつは敵ではない。俺達にとって頼もしい味方だ。
ガキィィィン――!
デュラハンの振るった剣が真空刃を弾き、美夜琵を護って見せる。
真空刃はあらぬ方向へ飛び消滅した。
ところでヤッスよ。
いくら『おっぱいソムリエ』の矜持とはいえ、美夜琵の胸だけを守ろうとする姿勢はどうかと思うぞ……。
にしてもあのデュラハン、なんか強くね?
念のため《鑑定眼》で調べたところ、レベル50もあるぞ。
そいや、《
つまり、
『
制作したアゼイリアの
案の定、ヤッスは
「すまない、ヤッス殿ッ! ジーラナウ、次こそ我が刃で貴様を斬る!」
美夜琵は機敏な動きと跳躍力で、援護したデュラハンを飛び越えた。
着地と同時に抜いた刀剣を鞘に納め、低姿勢のまま一直線に突撃していく。
その俊足はダークエルフの身体能力をあっさりと凌駕する。
ついにジーラナウを
「ど、どいつもこいつもぉぉぉぉぉ――!!!」
逃げられず完全に追い詰められ絶叫する、ジーラナウ。
先程まで余裕ぶっていた表情が、今では絶望と苦悶により醜く歪ませた。
「この一撃だけは絶対に躱せない。目で追うのも不可能――奥義、《
美夜琵による超神速の刃が解き放たれた。
それは、どのような相手だろうと必ずクリティカルヒットを与えるという、彼女のユニークスキルであり絶対的な居合術。
気づけば、美夜琵が刀剣を薙ぎ払う姿勢のまま停止していた。
同時にいつの間にか、ジーラナウが脱力した状態で宙を舞っている。
奴の体は重力に引き寄せられ、地面に落下し大の字に倒れた。
「――美夜琵、やったのか?」
俺は《
ガンさんとヤッスも駆け足で近づいて来る。
また召喚されたデュラハンも気を失っているインディを抱きかかえ、主とするヤッスの背中を追いかけていた。
首が外れた不気味な亡霊騎士の見た目とは異なり、ひょうきんな
なんでも《
そして俺の問いに、美夜琵は「フゥーッ」と呼吸を整え刀剣を鞘に納めて頷く。
「うむ、斬ることには成功したが
確か『
きっとその力がデバフとして機能し、多少なりとも美夜琵の攻撃を鈍らせたのだろう。
まぁ、こんな腐ったイカレ教師でも顔馴染みには変わりないか。
この場でキルして後々尾を引きずるよりよかったのかもしれない。
それに、こいつには聞き出すべき情報が山ほどある。
特に――『渡瀬 玲矢』こと、闇勇者レイヤ。
ジーラナウの口振りから、こいつは協力者の中で最も身近で奴を知る存在に違いない。
だからキルしてしまうより、『零課』に差出し情報を引き出させた方がプラスな面が多い筈だ。
「どちらにせよ、九割殺し確定だな。このまま拘束して動けなくしてやろうぜ」
「相分った、真乙殿。サブリーダーの采配に委ねよう……」
美夜琵は言いながら、頬を染めて何故か余所余所しい態度を見せてくる。
「どうした?」
「いや、
「いやいやいや。美夜琵だって、レベル70の敵を倒したろ? あんま変わんなくね?」
「キミ達のフォローがあったからこそだ。本来、所属する【風神乱舞】では、まずあり得ないこと……ワタシは心から【聖刻の盾】の加入を求めたい」
「ああ、美夜琵なら大歓迎だ。白雪学園際で必ずキミの母上勇者を説得してみせるよ」
俺の言葉に、美夜琵は「う、うむ……感謝する」と恥ずかしそうに俯く。
共に戦い打ち解け合ったとはいえ、なんだかとてもいい雰囲気だ。
それになんだ? 彼女もしかして、俺を異性として意識しているのか?
まさかな……性格も良く凛としてとても綺麗で可愛い女子だけど、俺には杏奈がいるし……。
もう八割以上、脈ありだと思っているわけで……。
などと、まだ自惚れている場合じゃない。
「――ユッキ、何か周りの様子が変だぞ?」
ヤッスが左目にかけている『魔眼鏡』で周囲の上空を見渡しながら言ってくる。
俺的には何の変哲もない夜空だけどな。
「様子が変ってどういう意味だ?」
「さっきまで空いっぱいが六角形のハチの巣を模した魔力結界で覆われていたんだ。熟女教師が言う、《
「なんだと? てことは、結界を張っていた
俺の問いに、ヤッスは「わからないが……おそらく」と呟いた。
確か外部の侵入は絶対に不可能なスキルの筈だ。
俺達じゃないとしたら、いったい誰が?
「――真乙、無事で良かったわ」
姉ちゃんだ。
遠くから美桜が近づいて来た。
一緒に香帆と、紗月先生ことアゼイリアもいる。
三人とも冒険者の姿となっていた。
って、ことはだ。
「姉ちゃん達か?
「まぁね。結構手こずったけど……遅れてごめんなさい」
「俺達なら見ての通り大丈夫だ、うん。けどどうやって? 外部からじゃ侵入すら不可能だろ?」
「流石にお姉ちゃん達三人だけじゃ無理だったわね……けど、あの男なら造作もないわ」
「あの男?」
俺が首を傾げると、反対側から妙な負の魔力を感じる。
形容し難い禍々しく発せられる
一瞬、新手の敵かと思ったが、以前感じたことのある魔力だ。
『宮脇、いつまで寝ている?』
ゼファーだ。
例のオリハルコン製の漆黒鎧を全身に纏っている。
その武骨で邪悪そうなディテールの見た目からして、つい敵側だと誤解を招くだろう。
とても本職が『零課』の公安警察官とは思えない。
まぁ異世界では元魔王の右腕ポジの幹部だったようだからな。
ゼファーは似たような姿のデュラハンからインディを受け取り、地面に寝かせていた。
ひたすら彼女の頬をぺしぺしと叩いている。
もう少し優しく起こした方が良いと思う。
「う、うう……パワハラ最悪上司? いえ、ゼファーさん……ここは?」
インディが目を覚まし起き上がる。
何気に人使いの荒い上司に向けて悪態をつきながら――。
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