第147話 レベル差を補う冒険者達
灘田、いやジーラナウめ。
異世界で500年以上もレベリングを続けていたことは伊達じゃなかった。
半端なくカンストしていやがる。
強さを追求していたのはガチのようだ。
そして全体の
やはり
奴のユニークスキル《
だから短時間でレベル40の
それによく見ると、
おそらく《
ってことは、ジーラナウが召喚できるモンスター及び魔法攻撃は限りが見えているってことだ。
俺の
しかし、ああしてインディが人質に捕られている以上、迅速に終わらせることが望ましい。
下手に長引かせて、杏奈に危険が及ぶかもしれないからな。
(ここは作戦通り、ヤッスにバフをかけてもらって速攻でケリをつけた方がいいぞ……美夜琵なら格上だろうとワンキル可能だからな)
俺はチラっと仲間達に視線を向ける。
ヤッス、ガンさん、美夜琵の三人は力強く頷いた。
みんな同じ考えだ。
誰一人として、ジーラナウの交渉に乗る気はない。
「――それでこそ、我らが【聖刻の盾】」
俺は口端を吊り上げ笑みを零す。
その様子に、ジーラナウは眉を顰めた。
「何をぼそぼそ呟いているの、幸城君? 《鑑定眼》で私のステータスを覗いていたでしょ? キミ達に実力の差をわからせるために、あえて解放したんだから感謝しなさい」
「ああ、感謝しているよ、
「そっ、いい心掛けだわ。なら交渉に応じるのね?」
「――んなワケねーだろ」
「え?」
「俺達は冒険者だ! 悪に屈してたまるか!」
「そっ、ならインディを殺すわ」
【させんぞ――《
先にヤッスが動いた。
そして一瞬でインディが繋がれているロープを切断し、同時に
飛行機能を失った
「壱ノ刃――《
美夜琵が
まさしく迅雷の如く高速で移動し、2匹の
ちなみに先程の《
「バ、バカな!? たかがレベル39如きに――
ジーラナウは驚愕しながらも、残り4匹の
召喚士の指示に応じるかのように、
全身を折り曲げ、腹部に備わっている《猛毒針》を差し向けてきた。
「んなの、この俺がさせるわけねぇだろ――《
俺は片腕を伸ばし、美夜琵の頭上に目掛け「魔法陣の盾」を大きく展開させた。
強襲する《猛毒針》攻撃を悉く防いだ。
「こ、これが真乙殿のユニークスキル……凄い、評判以上の強固な盾だ」
美夜琵は見惚れながら感想を漏らす。
綺麗系の可愛い子に凄いとか言われると、ちょっぴり照れてしまう。
などと言っている場合じゃない。
「ガンさん、蜂共が一箇所に固まっている内にトドメを頼むぜ!」
「任せろ、ユッキ――《
ガンさんはスキルを発動し、
筋肉がより隆起させながら移動し、《
「くらえ、《
薙ぎ払うように放たれた『
《
モンスターの消滅と共に、《
俺とヤッスは美夜琵達の下に駆け寄った。
一応、《鑑定眼》でインディの状態を確認するも、彼女が施した《隠蔽》スキルで詳しくステータスを読み取ることができない。
流石、『零課』の作業班……気を失っても個人情報は徹底して守っているようだ。
「スキル効果が継続しているってことは、逆に元気だって解釈でいいか……ヤッス、後方支援しながらインディさんを守ってくれ」
「わかった。僕に任せろ」
インディをヤッスに任せると、俺とガンさんと美夜琵の三人はジーラナウに向けて臨戦態勢をとる。
ジーラナウは小刻みに全身を震わせ後退りしていく。
「う、嘘でしょ!? な、なんなのよ、この子達!? まるでレベル差を感じさせないなんて……こんなのあり得ないわ!」
酷く狼狽し戦慄する
長年異世界で放浪していた奴にとって、俺達のような現実世界の冒険者は異質のようだ。
俺はフンと鼻で笑う。
「今更驚くことじゃねーよ! 俺達はこの現実世界で、常に自分達より強い連中と戦い勝利してきたんだ! 異世界じゃカンストしているだろうが、んなの俺達【聖刻の盾】には関係ない! 必ずお前らテロリスト達をブッ斃し、邪神復活を阻止してやる!」
そう言い切った途端、ジーラナウの動きがピタリと止まる。
俺に対し鋭い眼光で凝視してきた。
「……あのレイヤがムキなるのも頷けるわ、幸城君。今、先生もちょっぴりムカっとしてきたもの。そういえば、貴方って学校でも私に対し反抗的だったわね?」
「自分の胸に手を当てて考えろよ! んな投げやりな教師に誰がついて行くってんだ!? なぁ、ヤッス?」
「ああ、まったくもってその通りだ。しかし胸に罪はない……それに中々のEカップとなると例え話とはいえドキっとしてくるんじゃないか?」
この男に訊いた俺がバカ野郎だったわ。
どのような場面でもブレない変態紳士め。
まだガンさんに話を振りゃ良かった。
「どちにせよだ、ジーラナウ! こうして人質を解放した今、もうお前に勝ち目はねぇぞ! たとえレベル70だろうと、俺達四人に勝てるもんか!」
「嫌だわ、忘れたの? この敷地内にいる人間全てが私の人質なのよ。《
「んなの、人質になる前にテメェを再起不能にすりゃいいだけの話だろうが! 逆にこの結界の中じゃ、テメェだって仲間を呼ぶことはできねぇだろ!?」
「そんなことないわ。一人、どこだろうと来られるユニークスキルを持つ子がいるもの……けど、あの子は忙しいから無理だわ。そして確かに幸城君達はレベルや数値で計れないわね。驚異的な部分があるのは認めるけど、まだレイヤや私に届く域ではないと判断するわ」
こいつ、この期に及んでまだ言うのか?
それに奴の口振りから、現在進行形で他の協力者が何らかの動きを行っているみたいだ。
ジーラナウは続けざま朱唇を動かす。
「あとね……」
腰元に携えている『魔導書』を取り出し、素早くページを開く。
呪文語が記された箇所をジーラナウは手にしていた
【――盟約の時来たれり、我、
ジーラナウは精霊語で詠唱する。
すると奴の真上から、幾何学模様の魔法陣が浮かび大きく膨れ上がった。
魔法陣から漆黒色の大きな物体が出現する。
「あれはドラゴン!?」
瞬時にそう察した。
全身が漆黒に染められた金属のような鱗に覆われており、巨大な爬虫類を彷彿させる姿。
広げられた翼は蝙蝠のそれに似ていて太い骨格と被膜で構成られている。
背中から尻尾の先に至って脊髄に沿ったように棘が幾つも連なり生えていた。
漆黒の竜は両翼を広げたまま、ジーラナウの頭上で浮いている。
「そう、『
ジーラナウは勝ち誇ったように言い切った。
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