第132話 カスタマイズされた装備

 これが俺の新たな鎧か……。


 以前の鎧より洗礼され、デザインが一新されている。

 よく見ると装甲板の各溝部分からナイトブルーの光が流れるように帯びていた。

 なんかカッコイイ~。


 果たしてどんな性能なのか。

 早速、《鑑定眼》で見てみる。



【装備】

黒炎の鎧ブラックフレイム・アーマー

頭:黒炎の鉢金フレイムバイザー防御力VIT+100)

体:黒炎の甲冑フレイムアーマー防御力VIT+500)

右手:黒炎の手甲フレイムガントレット防御力VIT+150)

左手:黒炎の手甲フレイムガントレット防御力VIT+150)

足:黒炎の足甲フレイムソルレット防御力VIT+200)

靴:黒炎の靴フレイムシューズ防御力VIT+100)


《魔力付与》

 装備しても敏捷力AGIがマイナス数値にならない。


《スキル付与》

〇フレイム・モード

〔能力内容〕

・約60秒間、装甲の形状を変化させ、膨大な灼熱の炎「ゲヘナの火」を全身に纏わせる効果を持つ。

・事実上、最上級の炎属性魔法効果を生み、《ATK》+2000補正、《VIT》+1500補正される。

〔弱点〕

・ただしスキル使用時、必ず装着者の魔力MP:-200消費される。

・使用後、5分間は再使用できない。



 うおぉぉぉっ!!!

 合計の防御力VIT:1200だと!?

 魔王級の悪魔デーモンモロクが装備していた『青銅の鎧ブロンズアーマー』を素材にしたとはいえ、超高けぇ!


 それに以前の『黒鋼ブラックメタルセット』の魔力効果もしっかりと反映している!


 しかも、スキル付与まで追加されているなんて凄ぇ!

 「ゲヘナの炎」と言えば、モロクのユニークスキル《塵芥滅焼却炉ガーページイン・シネレーター》で使用された炎だったな……。

 あのヤバイ炎を任意で纏うことができ、そのまま敵に体当たりして大ダメージを与えることも可能ってわけだ。


 うほっ、ほぼ無敵じゃん!


 ん? あっ、駄目だわ……。

 使用するのに、魔力MP:-200も消費されてしまう。

 今の俺、|魔力値:170しかない。


 つまりレベルアップするまで使えない機能ってわけだ。

 まぁ仕方ないか……。


 それを頼らなくても、高性能の鎧には変わりないぞ。



「どう、真乙くん? 気に入った?」


「うん、バッチリだよ先生ッ! これ以上はない最強の鎧だよぉぉぉ!!!」


 ハイテンションで歓喜する俺に、アゼイリアは「うふふ、良かったわ」と満足気に微笑む。

 優しくて美人だし、お世辞抜きで最高の仕事をしてくれるハイスペックな 鍛冶師スミスだ。

 ガチで仲間になってくれて有難いよ。


 ――とまぁ、称賛はここまでとして。

 定番テンプレと化しているけど、この後がいつも問題なんだ。


「……んで、先生。気になるお値段は?」


「そうね、これだけの高性能。異世界なら勇者用として国に献上しても可笑しくない代物だわ。そうよね、美桜ちゃん?」


「ええ。通常なら2億……いえ、スキルが付与されているのなら優に5億は超えるかしら?」


 嘘やん、姉ちゃん。

 5億円以上だとぉぉぉ!!!?

 んなの払えるわけねーじゃん!!!

 高校生相手になんちゅう金額を振ってくるんだよぉぉぉ!!!


「……いや無理でしょ。前回の報酬金で『竜殻剣』の支払いを終わらせたばかりで、ぶっちゃけ一文無しでございます」


「そう言うと思ったわ。マオトくん割引を発動して、1億5千万でいいわよ!」


 う~ん、大分割り引いてくれているかもしれないけど、やっぱ糞高けぇ。

 てか、マオトくん割引を発動するって何?


 しかし前回の報酬金といい、これから高額報酬が期待できる下界層で探索を重ねれば払えなくもない金額だと思えてきたぞ。


「わかった、それでいいよ。あと先生、支払いはローンでいい? 一括で払える目途がついたら全額払いますので、はい」


「……ふぅ、わかったわ。マオトくんだから特別よ」


「ありがとう、アゼイリア先生」


 けど、いちいち溜息を交えるのやめてくれる?


 こうして、チャラにした借金が1億5千万になった。

 ついに億越えか……もう高校生がしていい借金じゃねーな。

 バカッターがどっかの飲食店でやらかした賠償金の方が安く見えてきたわ。


「次はヤッスくんね、はい――」


 アゼイリアは隅っこに立て掛けていた魔杖を取り出し、ヤッスに手渡した。

 なんか俺の時と違って無造作だな。

 逆に目立たなかったぞ。


「そういや、ヤッスも魔杖のカスタムを依頼したんだっけな?」


「ああユッキ、その通りだ。チッパイ殿から『死霊王ネクロキング』の魔杖を譲ってもらったからな。クィーンに頼んで、僕の『三日月魔杖ムーンスタッフ』と融合してもらったんだ」


「名付けて『闇夜月型の魔杖ダークムーン・スタッフ』よ! さぁ、《鑑定眼》で観てご覧なさい!」


 おっ、なんかカッコイイネーミングじゃね?

 思わず厨二病が疼くじゃないか。


 確かに三日月状の宝玉も黒曜石のように鮮やかに染められ、より神秘的だ。

 また杖自体の形状も歪に見え、どこか闇属性っぽく思えてしまう。


 そして俺達はアゼイリアに進められるがまま《鑑定眼》を発動した。



【装備:武器】

闇夜月型の魔杖ダークムーン・スタッフ:INT+500

《魔力付与》

・MP+1000


《スキル付与》

屍鬼名匠アンデッドマスター

〔能力内容〕

・所有者のHP:-20、MP:-50を代償にLv.30以下の屍鬼アンデット系か幽霊ゴースト系モンスターを1体ずつ召喚し自在に従わせる。

・Lv.30以上のモンスターを召喚する場合、Lv.+10につきHP:-20×2、MP:-50×2を代償として消費される。

・所有者のHPとMPが残っている限り、何体でも召喚が可能。

〔弱点〕

・召喚したモンスターにバフ効果を与えられない。

・召喚中、術者は光属性魔法と白魔法の使用はできない。



 おおっ!?

 奈落アビスが意図的に強化させたとする『死霊王ネクロキング』が所持していた魔杖を素材としているだけあり、相当ヤバイ代物だぞ!


 持っているだけで魔力MP値:1000とかって凄くね!?

 今のヤッスなら魔法打ち放題じゃん!

 しかも超連射できるんじゃね!?


 おまけにスキル付与まであるのか……。

 夜の中界層ボスだけあり、屍鬼アンデット系と幽霊ゴースト系モンスターを召喚して行使できるとは……克服したとはいえ、俺的には嫌なスキルだ。


 けど、使用する度にHPとMPが消費されるらしい。

 ヤッスの場合、魔法士ソーサラーだけに魔力値MPは高いけど体力HP値:167だから、そっちを補うことが課題ってわけか。

 俺と真逆な感じだな。



「うぉぉぉぉぉっ、クィーン! 素晴らしいですぞぉぉぉっ! 本当に、この僕に頂けるんですかぁぁぁ!?」


 感極まり絶叫する、ヤッス。

 なんでも上級冒険者の魔法士ソーサラーとて、これほど高性能を持つ魔杖を持つ者は『エリュシオン』でも稀らしい。


 これも《融合素材フュージョンレシピ》魔法で錬成した効果と鍛冶師スミスとして匠の技だとか。

 お金にがめっいけど、ガチでヤバイよアゼイリア先生……。


「ええ、ヤッスくんのためにカスタマイズしたのよ! 1億円になりまーす!!!」


「――買いまーす!!!」


 即決かよ、ヤッス!?

 俺が言うのも可笑しいけど、こいつの金銭感覚どうなってんの!?


「これでも破格急に安いほうね。ヤッスくん割引が適応しているのかしら?」


「ええ、美桜ちゃん。他の勇者パーティに売ったら普通に3億は頂いているわ」


「お心遣い感謝ですぞ、クィーン! ユッキ、これでお互い億単位の借金仲間だな!」


「……いや、ヤッス。そんな仲間いらねーんだけど。って、あれ? ヤッス、前回の報酬金で2千5百万の借金は完済したんだろ? 5百万くらい余っているんじゃね?」


「ん? ああ、クィーンに頼んで魔道服ローブのバージョンアップ代につぎ込んでしまったんだ」


「ええ、魔法士ソーサラーは軽装だからね。けど魔力付与で防御力VIT値:+50に向上したわ」


「サッちゃんも前回の探索でレベルアップできたようだ。鍛冶師スミスはレベルが上がると作る装備やアイテムも強化される。だから鍛冶師スミスがパーティにいるってことは、集団クラン級に価値があるとされているんだ」


「ガンさんの言う通りね。特にアゼイリア先生は類を見ない高レベルの鍛冶師スミスだから、上位集団クランパーティであれば喉から手が出るほど欲しい人材よ」


 マジっすか、姉ちゃん。

 まぁ、俺も凄い先生だとは思っているけどね。

 何せ魔銃やバズーカ、ドローン爆弾やガトリング砲まで作っちまうんだからな。


 俺が感服している中、ガンさんが何か言いたそうに巨漢をもじもじさせている。

 

「どうしたの、ガンさん?」


「……実は俺もサッちゃんに新しい武器を作ってもらったんだ」


 え? ガチで?

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