第106話 奈落のNPCキャラ
「ちょっとこれ、シャレにならないわよ。ミオちゃんが必要なレベルの相手じゃない?」
「サッちゃんの言うとおりだと思う。みんなで力を合わせれば勝てるかもしれないけど、とても『下界層』の捜索まで持たないじんじゃないか?」
アゼイリアとガンさんが危惧するのも無理はない。
この
少人数パーティだから、ここは力を温存しておきたいところだ。
「チッパイ殿、【氷帝の国】はこやつと戦ったのでありますか?」
「片眼鏡の
そりゃ高レベル揃いの
俺達とは違って余裕なのだろう。
しかし自慢していたメルが不思議そうに首を傾げ始める。
「どうした、メル?」
「いえ、マオたん様……あの
「ってことは、また『
香帆は意味ありげにじぃっと見据えてくる。
まるで「俺のために用意されたモンスターじゃね?」と言いたそうだな。
てか、相変わらず顔が近いなぁ……このエルフ姉さん。
「だとしてもだよ。アゼイリア先生とガンさんじゃないけど、今はこんなのと戦っている暇はないよ。なんとかスルーできないかな?」
幸い
ヒュドラもそうだったが、ある程度近づかないと気づかないという制約みたいなルールがあるようだ。
ぶっちゃけ、ヤッスが超進化を果たしたっぽい奴だ。
見た目からして戦いたくない。
「遠回りになりますが、壁際を移動すれば大抵の中ボスはやり過ごせる筈なのです」
「なるほど、じゃあそうしよう」
俺の指示でみんなは頷き、壁際に沿って歩くため全員が部屋へと入った。
直後、扉がバンと勢いよく勝手に閉められた。
〔――待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
「しゃ、喋った!? モンスターでもボスなら喋れるのか!?」
「いや、魔王や魔族ならともかく、モンスターが人の言葉を話すわけがない!」
「ええ、異世界でも存在しない筈よ!」
「信じられないのです!」
「どれ、レアっぽいから動画に撮って美桜に自慢してやろぅ」
ガンさん、アゼイリア、メルの異世界転生組は驚愕している。
やはりモンスターが喋るなんて通常はあり得ないことなのか。
てか、香帆はスマホ片手に何してんの? 悪いけど緊張感持ってくんない?
「……ユッキ、言葉が通じるなら逆に戦わなくて済むよう交渉もできるんじゃないか?」
おお、ヤッスの言うとおりだ。
よし、ここは【聖刻の盾】サブリーダーとして俺が交渉してみよう!
「俺は真乙、このパーティの実質リーダーだ! あんたとは戦いたくない! 悪いが通してくれないか!?」
〔待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
「まぁモンスターのあんたならそう言うかもな! けど俺達も先を急いでいるんだ! 他の冒険者を相手にしてくれよ、な?」
〔待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
「しつけーな! だから戦わないって言ってんだろ! 頼むから通してくれ!」
〔待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
……あれ?
こいつなんか可笑しくね?
「まるでオウムのように同じ言葉を繰り返しているようだぞ?」
「そうだな、ユッキ。僕が思うに、あの
ヤッスの疑念に、俺も頷き同調する。
「おーい。今、何時ですか?」
〔待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
やっぱりだ。
こいつ、何を話かけても同じことしか言わないように設定されている。
まさしく『
香帆じゃないけど、俺のために与えられた試練用なのか?
ダンジョンが? なんのために?
けど今そこを考えている暇もない!
「
本当は俺が
きっと人の良いみんなの性格だと前者は完全否定されてしまいそうだ。
けど後者だと、これ以上人数が減ってしまうと「下界層」の探索自体が難しくなる。
やはり全員で挑み、速攻キルを目指した方が無難だろう。
強いが決して勝てない相手でもないしな。
俺の意見に全員が力強く頷いてくれる。
不思議だな……相手は
さっきまでスケルトンにすら、びびって怯えていたのに。
気持ちが高揚し力が溢れてくる。
仲間達は俺を信頼してくれる。
俺も仲間達を信頼している。
だからどんな相手だろうと戦えるんだ!
「前衛は俺に任せろ――《
俺は先手必勝と言わんばかりに、
左腕を翳し前方にユニークスキルで構成された無敵の盾を出現させた。
ヤッスは速攻魔法で全員にバフを施していく。
奴も
〔待たれ、冒険者よ。我と戦うがよい〕
バカの一つ覚えのようにまだ言ってくる、
だがマヌケな台詞とは裏腹に、奴の殺意が突進してくる俺に向けられているのがわかる。
早速、魔状を掲げ暗黒系の
しかもヤッスと同じほぼ無詠唱だ。
おまけに
「だが、それがどうしたぁ!?」
俺が展開させた《
如何に強力だろうと貫通性のない魔法攻撃では通すことは絶対にない。
背後から香帆とガンさんがそれぞれの武器を掲げ追随してくる。
同時に銃声音がなり響き、俺の頭上を音速で過ぎ去った。
アゼイリアが撃った『魔銃』による弾丸だ。
だが弾丸は
「やっぱりね! 特性の《
アゼイリアがそう叫び、俺達前衛の三人は「了解ッ!」と頷いた。
「食らえ――《シールドアタック》!」
俺は《
直後、奴の周囲から突風が吹き荒れる。
突進する俺の動きが鈍り、寧ろ押し戻されていく。
「風属性の《
ヤッスが大声で忠告してくる。
それは強風で対象者を吹き飛ばす中級クラスの攻撃魔法だ。
幸か不幸か。
《シールドアタック》で攻撃を繰り出していた俺は飛ばされることはなく、ただ減速され足止めされるに至った。
勿論ノーダメージだ。
俺の後方に潜む香帆とガンさんは魔法効果が薄れるのを見越し、身を乗り出して強襲を仕掛けに行った。
すると
刹那、頭上に落雷が降り注ぎ骸骨の全身が光輝を発し放電された。
「眩しっ! これじゃ近づけないよぉ!」
「雷系上級魔法の《
攻撃に転じた二人は立ち止まり身構える。
下手に触れてしまえば感電し死に至るかもしれないからだ。
ガンさんが言った通り一見すれば玉砕戦法だ。
だが今の
奴はそれを計算し接近戦対策として意図的に自分の体を放電させに違いない。
クソッ!
思った通り強いじゃないか。
こりゃ一筋縄ではいかなそうだ。
だが俺達にも秘策がある。
今に見てろよぉ……骸骨野郎。
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