第23話 一新された装備
いきなり500万円を突き付けられてしまう、俺。
なんで剣を造るのに、そんなに費用が掛かるんだ?
やばくね、この店……。
「あのぅ、アゼイリアさん……学生割なんてのは?」
「あるわけないでしょ。スマホじゃないんだから……この価格だって、ミオちゃんの弟ちゃんだから半額におまけしているのよ」
ええっ!? だとしたら通常で1000万円もすんの!?
やべぇぞ、この店ッ! 下手なぼったくりバー以上だ!
裏の工房から、おっかない兄さん達とか出てこないだろうな!?
俺が唖然とドン引いていると、美桜がぽんと肩に手を添えてきた。
「……真乙。こうみても、アゼイリア先生はスゴ腕の割にとても良心的な
「でも俺が500万なんて超大金持っているわけないじゃん。姉ちゃんに『駆け出し冒険者セット』の借金を返却して、残りの40万円でテンション上げているような男だよ?」
確かに現実世界の日本刀だって、有名刀工が手掛けたら軽く1000万を余裕で超えると聞いたことがある。
でもこれはこれ。
心の中で「姉よ、とんでもない所に連れて来てくれたな」と思った。
「だけど今後を見据えて、アゼイリア先生と顔見せしておくことは必要よ。ちゃんと稼げるようになれば、絶対に心強い味方になるんだからね」
だったら稼げるようになってから連れて来てほしかったとは言えない。
姉には超恩があるだけに……。
それに言われてみればってところもある。
来年、黄昏高校に入学した時なんて……特に。
俺の片想い同級生、『野咲 杏奈』さんは進学してから間もなくして虐めに遭ってしまう未来がある。
その際、教師側の味方が必要だからだ。
アゼイリア、いや紗月先生の人柄なら、良き相談者として十分に期待できるだろう。
俺は「……わかったよ」と納得する。
「アゼイリアさん、ごめんなさい……俺、お金ないから今回は遠慮します。また次の機会ってことで」
「そぉ? ローンも組めるわよ。60回払いとか?」
未来の間柄とはいえ、生徒に借金するよう求めないでくれ。
「すみません……やっぱり借金したくないです。もうじき高校の受験勉強もありますし……」
本当はあまり受験勉強しなくても受かる自信はあるんだけどね。
一度、受かった高校だし、今は
まぁ。あくまで魔法のための
そんな俺の言葉に、アゼイリアは豊かな胸を強調させながら腕を組み、何やら考えごとしている。
「ふ~ん……マオトくんって、ミオちゃんと同じ高校に進学希望なの?」
「ええ、そうですよ。黄昏高校です」
「そっか……ミオちゃんの弟なら合格間違いないわね。うん、じゃあ条件付きで100万円の後払いでいいかなぁ」
「え? 本当?」
俺にとって100万円でも十分に高い価格だけど、『
「ええ、そうよ……その代わり一つ言う事を聞いてほしいの」
「言う事? 何です?」
「黄昏高校に進学したら、ある男子生徒と『お友達』になってほしいのよ。彼ね、昔ショックなことがあって、ずっと学校を休んでいるの……きっと
つまり紗月先生は、その留年しまくっている男子生徒のことが心配なのか?
それで来年進学する俺に友達となって接してほしいというわけか。
なんか面倒くさそうだけど、俺も高校じゃ友達になる奴は一人だけだし別にいいか。
「わかりました。黄昏高校には必ず入学しますので任せてください」
「ありがとう、マオトくん。詳しくはその時に教えるわね……あと、お礼としてキミ専用の防具も造ってあげるわ」
「ガ、ガチで!?」
いかん、つい年上の教師相手にタメ口で反応してしまった。
アゼイリアは気にすることなく、優しい微笑を浮かべている。
「ええ、余剰素材になるけど最高のモノを仕立ててあげる。魔力付与も付けておくから期待してね。剣も含めて三週間くらいかかるけど大丈夫?」
「はい、問題ないっす! よろしくお願いします!」
うぉぉぉっ!
なんか100万円が、めちゃお得に思えてきたぞ!
これぞマーケティング商法のアンカリング効果か!?
「良かったわね、真乙。フフフ」
美桜も凛とした目尻を細め一緒に喜んでくれている。
まさか姉ちゃん……最初から、こうなることがわかっていたのか?
三週間後。
美桜と共に再び「アゼイリア工房」に訪れた。
「いらっしゃい、マオトくん。例のモノは完成しているわ。サイズ調整するから、奥の工房に入って頂戴」
「はい、よろしくお願いいたします」
早速、俺は工房に行き、既に用意されている防具を装着してみる。
黒を基調とした鋼の鎧だ。
全体のデザインが今風でカッコイイ。
俺の体にフィットするよう無駄な隙間がなく加工され、ぱっと見は重厚そうで軽量化された実用性の高い
アゼイリアの説明では『
装着後、全身が映る鏡に向けて《鑑定眼》を発動させて確認した。
【装備】
頭:
体:
右手:
左手:
足:
靴:
魔力付与
装備しても
【装飾品】
なし
す、凄ぇ。
おまけに付与魔力付きで、身に纏っていても
どうりで一切重さを感じないと思った。
「うん、ぴったりね。マオトくん、どう?」
「めちゃくちゃいいです! 最高です!」
感激する俺に、アゼイリアは「良かったわ」っと笑って見せる。
「キャッ、真乙~カッコイイわ! 後でお姉ちゃんに写真撮らせてぇ!」
美桜も新たな装いを見て、はしゃぎながら褒めてくれる。
別にいいけど姉ちゃん……撮ってどうすんの?
「あとマオトくん、これを――」
アゼイリアが鞘に収まった
受け取りゆっくりと鞘から引き抜くと、艶やかな黒鋼の刃を覗かせた。
「これまたカッコイイ~!」
「雷光剣よ」
「……雷光? ミノタウロスの角で造られているのに?」
「ミノタウロスの別名である『アステリオス』の語義でもあるわ……勿論、雷撃系魔法も付与されているわよ。確認してみて」
俺は首肯し、《鑑定眼》で剣を調べてみる。
【装備】
〇雷光剣:
《魔力付与》
敵を攻撃した時に雷撃系の魔法効果が発動し、30%の確率で相手を一時的に麻痺させる。
「雷撃系の麻痺効果か……ひょっとして魔剣?」
「魔剣じゃないわ。あくまで魔力付与だから、おまけみたいなモノよ。痺れさせてラッキー的な」
たまたま付いてしまった効力だってのか?
無いよりマシと言えばそれまでか……。
けど攻撃力100は凄く魅力的な剣だ。
これで俺もようやく、ちゃんと戦うことができそうだ。
「ありがとう、アゼイリアさん! これからは安心してダンジョンに行けるよ!」
「……良かったわ。丹精を込めて造った私も満足よ。それじゃ、マオトくん。
「は、はぁ……頑張ります」
やっぱりアゼイリア、いや紗月先生はお金にシビアだと思った。
ともあれだ。
装備も一新され、以前よりやる気になってきた。
これからは、頻繁に『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます