第3.5話 掲示板:おもろい奴みつけましたわ

《解説》

 異世界の“帰還者”が集うギルド容認の電子掲示板サイト、その名は『キカンシャ・フォーラム。

 管理する者は『七大聖勇者』の一人にして『氷帝の魔女』と異名を持つ、謎の美少女フレイア。


 ――果たして彼女は敵か味方か?


 これは魔女フレイアと彼女に付き従う眷属達との一コマ。




【キカンシャ・フォーラム】


雑談スレ:おもろい奴みつけましたわ



1:管理者(以降、フレイア)

・ここは帰還者同士が情報を交換し共有するための雑談スレです。

・当フォーラムの会員に入会した帰還者のみ受け付けます。

・それ以外の片の閲覧及び書き込みを禁止しています。

・万一不正を発見した場合、対帰還者専用対策:特殊公安警察に通報することとします。

 そうなった際、当サイトは一切の責任を負いません。

・また他者を非難中傷する言葉、漁る行為を禁止します。

・皆さん、品格ある交流をいたしましょう!



2:名無しの至高騎士

 >1

 フレイア様

 スレタイから矛盾して草



3:名無しの槍使い

 ええやん

 我らが『氷帝の魔女』、フレイア様や

 んで、そいつの何がおもろいん?



4:フレイア

 まずはこれを見るのですわ


《画像添付》

(解説)

 それは、かなり太ったジャージ姿の少年が、地面に這いつくばっている写真である。

 時期は夏休み初日、美桜に《強制試練ギアスアンロー》によって体の自由を抑制された状態で家に帰る、「幸城 真乙」の姿だった。



6:名無しの至高騎士

 何これ?

 こいつ何してんの?



5:名無しの回復術士

 う~む

 アレですかね?

 どこかの帰還者に悪戯されているのでは?



6:名無しの槍使い

 悪戯レベル超えとるわw

 もう通報していい始末やで



7:フレイア

 違いますわ

 このやる気に満ちた瞳をご覧なさい

 これは試練に立ち向かう冒険者の瞳ですの

 

 美しいと思いません?

 帰宅時に偶然発見して思わずスマホで撮っちゃいました


 きやっ♡



8:名無しの至高騎士

 フレイア様の趣味ヤバ……

 マニアックすぎて草生えるwww



9:名無しの回復術士

 てことは試練を与えるため誰かに魔法を施されていると?

 画像を見る限り抑制系の魔法ですか?

 思い当たるのは、勇者がよく未熟な眷属に訓練として施す《強制試練ギアスアンロー》ですかね?

 


10:名無しの至高騎士

 だったらフレイア様ちゃうの?

 俺らもぺーぺーだった頃、施されたことあるぞ

 『七大聖勇者』の一人にして『氷帝の魔女』と畏怖された、フレイア様なら朝飯前っすよね?



11:名無しの槍使い

 覚えとるで

 あの時、この世の悪魔だとガチ思ったわ


 >フレイア様

 ワイらで通報しておきますわw



12:フレイア

 失礼ね! わたくしではありませんわ!

 既に彼の素性は調べていますの



13:名無しの回復術士

 誰ですか?



14:フレイア

 詳しくは秘密ですわ

 ただ彼のことは「マオたん」と呼んでおきましょうか?



15:名無しの至高騎士

 マオたん……って、おい

 一体どうなんってんだよぉ ウチらの女帝様は?



16:名無しの回復術士

 >14

 了


 しかしフレイア様は、そんなデブ専じゃなかったような?

 敵味方構わず美しい者を好きなり、欲しがるのは知ってますけど……



17:フレイア

 マオたん、美しいではありませんか!?

 ご覧なさい この闘志溢れる瞳……


 こんな不屈の瞳を宿す者は異世界以来……

 そう『刻の勇者タイムブレイブ』以来ですわ!


 だからつい、こっそり自宅まで後を追いましたのw



13:名無しの槍使い

 フレイア様、ガチやば

 完全にストーカーやん


 ワイら冗談で言っとるけどガチで通報されるで



14:フレイア

 心配には及びませんわ

 マオたんの『主』、わたくしの知人でしたから



15:名無しの回復術士

 てことはフレイア様と同じ災厄周期シーズンの勇者?

 

 『七大聖勇者』で帰還したのは三人……

 少なくてもフレイア様でないのは確かとして……

 まさか『刻の勇者タイムブレイブ』?



16:フレイア

 そのことは良いではありませんか?

 とにかく現実世界で逸材を見つけましたの


 今後はマオたんの動向を追って書き込んでいきますわ

 貴方達も協力して会員数を増やすのですわ!



17:名無しの至高騎士

 病気じゃん




**********



「まぁ! 誰が病気ですの! ギロデウスったら!」


 広々とした室内の薄明りの中。

 ノートパソコン画面の光に照らされた少女は憤慨している。


 亜麻色のストレートヘア、透けるような乳白色の肌。

 整った鼻梁と長い睫毛に覆われた大きな瞳、まるで人形のような繊細な美しさを誇っていた。


 その美少女の背後に、執事服を身に纏った筋肉隆々の大男が立っている。

 荒々しさを感じる精悍な容貌は強面に見えるが、背筋を伸ばした佇まいから紳士的にも見えた。

 

「――由莉亜ゆりあお嬢様。そろそろお休みになられる時間となります」


「わかりましたわ、徳永。それではおやすみなさい、マオたん・ ・ ・ ・。ウフフフ」


 由莉亜お嬢様こと「フレイア様」は薄い微笑を浮かべて、ノートパソコンを閉じた。

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