第3話 断タレタ関係
「それは本当!?」
驚くアナスタシアに、ミズーリオは続けて言った。
「ガイア様は、僕と姉さんに託したと仰られた。僕にはハデス様と戦える力は持っていない。姉さんの力を使ってほしいのだ」
「分かったわ。やってみる」
アナスタシアは、目を閉じ、唱える。
「聖なる力を秘めし者たちよ 今こそその力を我らの前に示したまえ!」
次の瞬間、シンボルタワーを貫く一筋の光が伸びる。シンボルタワーを中心に光は広がり、霊界ウルトラ中の炎と氷が妖精に変わり、シンボルタワー上空に集まっていく。炎と氷の妖精は集合して、巨大な炎と氷の化身に姿を変える。炎と氷の化身は、手を掲げ、互いに炎と氷の気を放った。その頃、ハデスは太くなった漆黒の柱上空から暗黒物質で霊界ウルトラを覆った。
「上手くいって・・・」
炎と氷の気は巨大な蜃気楼を作り出し、ハデスは、霊界ウルトラが消滅したと思い込んだ。アナスタシアの祈りが届いたのか、霊界ウルトラは暗黒物質の影響を受けずに済んだ。
「良かった。一か八かだったもの」
「さすが、姉さんなのだ」
「まだ安心するのは早いわ」
「どうして?」
「だって、ハデスは倒れたわけではないのよ?」
「そうだった・・・夢には続きがあって、霊界ウルトラが消滅した後、シン・ガイアが消滅していたのだ」
「それは大変!急がなきゃいけないわ」
「ハデス様は暗黒物質で時空の歪みを作り出し、瞬間移動することができる。もう間に合わない!」
「落ち着いて。何か良い手があるはずよ」
「姉さんが聖なる力を持っているように、僕が暗黒の力を持っていれば・・・」
悔やむミズーリオに、アナスタシアは閃き、言う。
「ミズーリオは中間の力があるのよね?」
「そうなのだ」
「それなら、聖なる力を引いたら、暗黒の力にならないかしら」
「あ!姉さん、頼むのだ」
アナスタシアは頷き、ミズーリオに触れる。
「聖なる力を抜いたわ。今なら暗黒の力を使えるはずよ」
「ありがとう、姉さん」
ミズーリオは、目を閉じ、唱える。
「暗黒の力を秘めし時空の歪みよ 今こそその力を我らの前に示したまえ!」
次の瞬間、出現した時空の歪みに、ミズーリオは驚いた。
「本当に出たのだ・・・」
「驚く暇はないわ」
「そうなのだ」
二人は、時空の歪みに入った。その頃、ハデスは、シン・ガイアに向けて暗黒物質を放つ寸前だった。時空の歪みから現れたミズーリオは、ハデスの横腹を蹴った。
「何ヲスルノダ!」
「やっぱり間違いない。あなたはメフィラス!」
「チガウ!カオスインベイダーダ!」
ハデスは、ミズーリオを掴み、近距離から暗黒物質を浴びせた。
「ドウダ!我ラノ力ハ!フハハハハ!」
「がは・・・だが、効かない。何故なら、僕も暗黒の力を使えるからだ!」
ミズーリオは、笑みを浮かべる。
「何ヲ・・・ナラバコレデドウダ!」
ハデスはミズーリオを掴んだまま、シン・ガイアに勢いよく落下した。激しく砂漠の砂が巻き上がった。
「運ガ良カッタノダ。我ラモドコニ落チルカ不明ダッタノダ」
離れたミズーリオの方に、ハデスはゆっくりと歩み寄った。
「サア、楽シモウジャナイカ。楽シム気ガナイナラ今ノウチナノダ」
「・・・メフィラス師匠」
ミズーリオは、一つの出来事を思い出していた。霊界ウルトラが霊界ガイアだった頃、ミズーリオはガイアの長ゼウスの代理アナスタシアの側近だった。
「姉さん、今日も平和だね」
「ミズーリオ、仕事中はアナスタシア様と呼んでほしいわ」
「厳しいなあ」
「仕方ないでしょ。私がゼウス様の代理を務めるのも、あなたの弱さが招いたことなのよ」
「反省しています・・・」
その時、霊界ガイア中に警告音が響き渡った。
「侵入者あり、侵入者あり」
「私はガイアの戦士に指示する。ミズーリオは状況を確認して」
「わかりました」
ミズーリオは信号の発信された場所に連絡を取った。
「聞こえるか。聞こえたら返事をせよ」
「・・・私ハ、メフィラス。侵入者ダ」
「何!?お前が侵入者なのか!」
「私ニ攻撃ノ意思ハナイ。私ハ伝エニ来タノダ」
「何を伝えに来た?」
「コノ星ヲ狙ウ者ガイル」
「何故伝えに来た?」
「私ハコノ星ヲ守リタイノダ」
その後、メフィラスはガイアの戦士に抵抗することなく捕まった。アナスタシアはメフィラスに尋ねた。
「あなたは、ガイアを狙う者から守るおつもりでしたか?」
「ソノ通リナノダ」
「そうですか。では、その時に私たちと共に戦って頂けますか?」
「勿論ナノダ」
その後、メフィラスは解放され、特別顧問として案内された。
「アナスタシア様、良かったのですか?」
「ミズーリオ、もし本当の事だったら、一大事になっていたわ。それに、あの宇宙人は本心のようだったわ」
その後、メフィラスは、ミズーリオに指摘した。
「私ガ侵入シテカラ捕マルマデ時間ガカカリスギナノダ。ヤハリ報告デハナク侵入シテミテ正解ダッタノダ」
「まさか試すために侵入したのか?」
「攻メル側ハ手加減シナイ。守ル側モ手加減シテハイケナイノダ」
その後、メフィラスの適確な指摘で、ガイアの戦士は鍛えられた。そして、その時が来た。
「侵入者あり、侵入者あり」
「来たわね。ガイアの戦士、第一部隊突撃」
「オソラク、敵ハ背後カラモクル」
「すごい・・・敵の軍勢があっという間に減っていく」
数時間後、霊界ガイアに被害もなく、侵入者を撃退できた。アナスタシアがガイアの戦士に労いの言葉をかけた。メフィラスはミズーリオに声をかけた。
「デハ、私ハコレデ」
「ちょっと待て。何も言わずに行くのか」
「私ハ侵入者デアリ、コノ星ノ者デハナイノダ」
「僕は間違っていた。宇宙人にも良い者はいた。メフィラス師匠と呼んでいいか?」
「好キニスルノダ。デハ、サラバダ」
ミズーリオは、ハデスを見て言った。
「・・・怪我が少ない砂漠にずらしたり、逃げるように言ったりする宇宙人は、メフィラス師匠しか知らないのだ!」
ミズーリオは立ち上がり、ハデスに向かった。ハデスが瞬間移動してミズーリオを蹴った。
「ぐは!」
「逃ゲレバ良カッタノダ!」
「げほ!」
「コノママデハ、死ヌノダ!」
「・・・敵は背後から来るのだ」
ハデスが驚いた。ミズーリオに掴まれて動けないハデスに向かって四本の光線が放たれた。
「レイ、連絡、感謝する」
「セブン、僕は気絶していて連絡したのはアンとドゥだ」
「そうか。二人とも、感謝する」
アンとドゥは頷いた。四本の光線は、二匹の黒龍が作り出した時空の歪みに吸い込まれた。
「戦エルノハ我ラダケデハナイ!」
「やはりか。だが、こちらもあと二人いる」
高速移動するラウス、腕を剣にしたアグルが二匹の黒龍を攻撃した。
「今のうちに!」
「放て!」
「何ヲ!ナラバ、コレデドウダ!!」
ハデスが両手を固くしてミズーリオに振り下ろそうとした。その時、上空にいたアナスタシアの方から一筋の光が差し、ハデスとミズーリオを覆った。
「何ナノダ!コノ光ノセイカ力が失われていく!!」
「この光は、この星の聖なる力よ」
「コノ星ニコレホドノ力ガアルナンテ・・・」
「聖なる力は、現実にないものを呼ぶ力。つまり、この星で死んでいった者たちを呼び、力を借りたのよ」
光の中には、栄誉市民シンメンサトリとその家族たちなど多くの人々と、ゼンマイと名付けられたゼンマイ式のおもちゃなど多くの物がいた。
「「これでどうだ!!」」
「ウアアアア!」
光の中で、ミズーリオは幻を見た。
「・・・メフィラス師匠」
「コレデ良カッタノダ。サラバダ」
その後、ミズーリオは目を覚ました。そこは寝室だった。
「・・・夢?」
ミズーリオがリビングに行くと、置手紙があった。
「『アト少シ付キアッテホシイ』・・・何だ、これ?」
その時、脳裏に声が響いた。
「起キタノダナ?」
「その声は、メフィラス!どうして?」
「実ハ、私モ中間ノ力ヲ使エルノダ。コレガ何ヲ意味スルカ分カルカナ?」
ミズーリオは驚いた。
「まさか・・・」
「ソノマサカダ。私ハ死ノ間際ニ力ヲ使ッタ。君ト会ッテマダ死ニタクナイト思ッテシマッタノダ」
「僕のせいみたいじゃないか」
「君ノセイダ。私ハ死ヲ受ケ入レル気ガ変ワッテシマッタノダ」
「一体いつまで戻った?」
「今ハ私ガ死ヌ時カラ百年ホド前ダ。コノ時期ニ地球デハ、夢計画トイウモノガ進ンデイル」
「夢計画?」
「プログラムヲ利用シタ願イヲ何デモ叶エルトイウモノダ。ナカナカ興味深イ内容ダッタノデ、体験シタイト思ッタ。但シ、一人ダケデハツマラナイノデ、君モ招待シタイ」
「それを体験したら死を受け入れるのか?」
「単ナル体験デハツマラナイ。私ヲ楽シマセテクレタマエ」
ミズーリオは思った。
(楽しむ・・・砂漠でも聞いた。まさか、あれは他の宇宙人ではなく、メフィラスが言ったのか・・・?)
ミズーリオは尋ねた。
「楽しめなければどうする?」
「何度デモ繰リ返スノダ。私ガ死ヲ受ケ入レテモイイト思エルマデ」
ミズーリオは思った。
(メフィラス・・・間違いなく最も恐ろしい宇宙人だ。何としても楽しませなければいけない)
ミズーリオは言った。
「分かった」
「楽シミニシテイルノダ。デハ、夢デ会オウ。サラバダ」
「く、頭が重い・・・」
ミズーリオは眠った。
侵略者たち ソードメニー @sordmany
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