第2話 目覚メタ力
「フハハハハ!」
笑い声を聞いて、ミズーリオは目を覚ました。そこは、寝室だった。
「何だ、夢か」
ミズーリオがリビングへ行くと、アナスタシアが朝食を作っていた。
「起きたのね。これ作ったから食べて」
「ありがとう。姉さん」
ミズーリオは席につき、食べ始める。
「美味しいよ」
「良かったわ。ヒートとフリーズにもお礼を言ってね」
「ああ。ありがとう」
アナスタシアの周りを飛んでいる、炎と氷を纏う妖精が喜ぶ。アナスタシアが触れると、妖精は炎と氷になり、消える。ミズーリオは不思議そうに見つめる。それは、ミズーリオの一つの疑問がそうさせていた。アナスタシアだけが持っていて、ミズーリオにはない力の事だった。それは、物に名前を付けることで命を与える力だった。
(どうして自分には力がないのだろうか)
この思いが、ミズーリオの心に常にあった。
「それにしても、姉さん、いつまで僕の家にいるのだ?」
「ゼウスさんが謝るまで帰らないわ」
「いつまで喧嘩しているのだ」
「仕方ないのよ。あの人、私の前でフリーズをかわいいと言ったのだから」
「ああ、そうなのだ」
その後、ミズーリオは、ゼウスがいるコロシアムに向かった。
「おはようございます、ゼウス様」
「おはよう、ミズーリオ。ところで、妻の機嫌はどうだ?」
「怒ってます。早く謝ってください」
「分かった。今日謝ろう」
その後、シンボルタワーに行ったとき、ゼウスはアナスタシアに謝った。
「悪かった。この通り」
「今日の夕食はいつも通りでいいわね?」
「戻って来てくれるのか?」
「仕方ないわね」
「ありがとう」
ゼウスは嬉しそうに最上階に向かった。
「嬉しそうですね」
「ああ。早く仕事を終わらせて家を掃除しなくては」
「汚れているのですね・・・」
シンボルタワー最上階にある人工太陽の光。かつてミズーリオが得ようとした力。結果として生まれた暗黒物質。それが宿った剣を追ってゼウスは長い間行方をくらましていた。ミズーリオはこの光を見るたびに、後悔の気持ちを抱いた。同時に、憧れの気持ちもあった。決して触れてはいけないと分かっていても、光が持つ無限大の力には魅力があった。
「温かな光だ」
「そうですね」
ミズーリオはふと思った。
(夢と同じ展開になっているのだ)
「行こう。おや、君らは?」
ミズーリオとゼウスの前に三人の戦士がいた。
「レイです。あとチームメイトのアン、ドゥです」
「おお!セブンの息子の!確かシン・ガイアにいたはずだが帰ってきたのだな」
「はい。それより王の方こそ戻られていたのですね」
「息子のグッドとラックのお陰でな」
ミズーリオが付け加えて言う。
「あとハデス様もです」
(ハデス様・・・そうだ、このままでは夢と同じ結果なのだ)
その時、ミズーリオの脳裏に声が聞こえた。
「聞こえますか」
「誰なのだ?」
「ガイアです」
「ガイア様!?どうなさいましたか?」
「あなたは夢をみたはずです」
「どうして知っているのですか?」
「私も見たからです」
「そうでしたか。しかし、私が見た事をどうして知っているのですか?」
「それは、あなたが私と同じ力を持っているからです」
「私がガイア様と同じ力を・・・?」
「そうです。アナスタシアはゼウスと同じ聖物質を操る力を受け継ぎました。そして、ミズーリオ、あなたは私と同じ中間の力を受け継ぎました」
「中間の力・・・?」
「この力は、とても貴重な力です」
「どうしてですか?」
「中庸、即ち中間こそが生きる者のあるべき道とされています。しかし、多くの場合どちらかの方に偏ってしまいます。従って、聖物質を操る力と暗黒物質を操る力の中間の力こそ貴重なのです。聖物質は無重力、暗黒物質は重力とした時、二つをつなぐ中間に何があると思いますか?」
「ええと・・・難しいですね」
「正解は、空気です。空気は生きる者に必要不可欠です。聖物質が現実を創造するもの、暗黒物質が現実を破壊するものであるので、二つをつなぐ中間には当たり前ですが現実があります。即ち、中間の力は現実を維持する力なのです」
「維持する力・・・」
「現実は維持しようとしなくても維持されるので、中間の力を使うことはあまりありません」
「あまり、ということはあるのですね?」
「そうです。今のように、維持したい現実が破壊されようとしている時です。この時、中間の力を持つ者は、夢を見ます。実際、それは夢ではなく、繰り返されている現実です。従って、夢は正夢でもあり、予知夢でもあります」
「つまり、中間の力は現実を繰り返せる力なのですね!」
「そうです。最後に、ハデスの力は今の私では抑えられません。あなたとアナスタシアに託しました。きっと成し遂げられます」
脳裏の声が消えた時、ミズーリオたちは漆黒の柱に向かっていた。ミズーリオはレイたちに言った。
「悪いけど、シンボルタワーにいる姉に話さなくてはいけないのだ」
「分かりました。先に行ってます」
レイたちと別れ、ミズーリオはマザールームに向かった。
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