第89話 七之助の手は魔法の手、何でも出来ちゃう不思議な手

【サファイアside】


もうすぐ、新学期ということで、八重と十八番は栞ちゃんに散髪をしてもらっている。

何時も二人が行く床屋さんの予約が取れなかった為なんだけど……


「フニャァ~ ❤️」


さくらがカラーハムスターのチュー吉、ハム子、ホシ美されて恍惚に成っている。


タマ九尾の狐ダイフクモチ人狼もソワソワしながら待っていた。


クソゥ、あそこで、パーを出さなければ良かった。

お蔭で、七之助にブラッシングしてもらえるのが最後に成ってしまった。


「ほら、さくら終わったよ。

やっぱり、さくらは美猫さんだねぇ~ 」


七之助のお世辞にさくらが照れている。

なるほど、ああやって甘やかされて育ったから、さくらは七之助第一主義なんだね……羨ましくなんかないんだからね !


「次は拙者でござる ! ご主人さまのブラッシングは、凄く楽しみにしていたでござる ! 」


ダイフクモチが犬の姿に戻り、七之助のブラッシングが始まると気持ち良さそうに目を細めている。


「なあ、俺たちの番は何時なんだ ?」


「タマの姉さんの次は雫さまだから、もう少し先よ、チュー吉 」


「ホシ美、眠くなっちゃった。 順番が来たら起こしてよ、ハム子 」


カラーハムスターのチュー吉、ハム子、ホシ美の会話が聞こえてきたけど、君らはブラッシングの必用あるの !

第一、雫の水神状態は大きな蛇なんだから、ブラッシングの必用ないだろうに !


「確かに妾には毛が無いからブラッシングの必用は無いが、主さまに撫でてもらえるだけでも嬉しいモノなのだから機会が巡れば並ぶのも仕方ないのじゃぞ。

しかし、主さまの手、神の手を転生した後も受け継ぐとは因果なモノよのう 」


雫が不穏なことを言っている。

確か雫は転生前の七之助を知っているんだよね。

怖いモノ見たさで、おそるおそる雫に聞いてみると、


「転生前の主さま。安倍鷹久あべのたかひさ殿は陰陽師で、仕事は陰陽師が使う御札を作っていたのじゃ。

兄の晴明はるあきらの方が有名じゃが、主さまの御札は効果抜群と云うことで、隠れた有名人だったのじゃ。

晴明は力で式神を操っていたが、主さまは、神の手で妾たちを心服させたのじゃ 」


……それって、いわゆる『なでポ』と云う奴だよね。

七之助、恐ろしい男 !


ブラッシングは魅力的だけど、ここは撤退した方が良さそうかな。


抜け足、差し足、忍び足、そろそろと逃げようとしたら、


ガシッ! 雫に捕まってしまった。


「遠慮するでない、サファイア。

ダイフクモチの次は、特別にサファイアにしてもらおう。

それで良いな、タマ ! 」


お願い、タマ。 拒否してよね !

しかしタマは、ボクと雫を見比べながら ニヤリと笑い、


「良いわよ、サファイア。

特別に順番を譲ってあげる 」


信じたボクが悪かったよ、性悪狐め !


ダイフクモチがフニャフニャに成りながら戻ってきた。


猫の姿で雫に首根っこを抑えられているから逃げ出せない。


「次はタマの番だけど、「サファイアに譲るわ、ご主人さま 」


そうして、七之助の魔の手に落ちたボクは数分後には、


「フニャァ~ ❤️」


あまりの気持ち良さに漏らした鳴き声に後悔しながら、デレてない、


最後まで抵抗出来るのか、不安を覚えながら恍惚に成っているボクが居た。


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