第88話 むやみやたらと拾ってはイケマセン !
【サファイアside】
今日も暑いのに、七之助一家は元気で子供たちも一緒に成りながら料理をしている。
今夜はカレーの王女様だ。
もちろん、子供用と辛いのが苦手なボクやさくら、ユカリン、桃姫などが食べる分。
七之助や栞ちゃん、ぬらりひょん、たぬき娘、一反木綿は大人用の中辛カレーを食べるから鍋は二つに成るし具材も多いから準備が大変だ。
一反木綿、ただの布切れ妖怪のクセに何処に入っていくのだろう。
初めての包丁に緊張している八重と十八番を見ると此方まで緊張してくる。
お願いだから、手を切らないでよ !
見ているだけの
十八番には七之助が、八重には栞ちゃんが付きっきりで教えている。
そういえば、栞ちゃんの母親の冴子ちゃんは料理が出来なかったのを思いだした。
だからこそ、栞ちゃんの祖母の香ちゃんは勉強より家事を教えていたんだよね。
ガラ ガラ ガラ ガラ !
「おーい、来たぞ。 八重と十八番に手みやげだ !」
あの声は遼だ !
バッ !
ここで八重たちを応援していた、ほとんど妖怪たちが姿を消し、ボクらは元の猫や子狐、犬、子狸に戻った、ぬらりひょんの爺以外は。
この爺、知らない間に町会の名誉会長に成っていた。
「ヤエ~、エース~、ジイジだよぉ~ 」
ア~ア、あの女
八重と十八番が台所から出てくると、手に持っていたカゴを出してきた。
カゴから何かが飛び出してきた。
「空を飛べども鳥でなく、人語を解せど人でなく、しかしてその実体は…!?」
ピンク色で赤いトサカがあり丸々していてスニーカーをはいた何かが話していた。
「いやぁ~、ここに来る途中で、でっかい卵を見つけたら
珍しい生き物だから拾って来ちゃったよぉ、遼ちゃん 」
そこへ、アイスコーヒーを持った栞ちゃんが出てくると、
「奥さん。 ボカァ、コーヒーが大好物なんですよ !
ありがとうございます 」
と言いながら、アイスコーヒーを勝手に飲み始めた。
「ぷはー、良い豆を使ってますねぇ~、奥さん !」
なんだろう、アイツ。
あんな妖怪は見たことが無い。
ボクが知らないんだから、当然さくらも……
「サファイア。 知っている妖怪なの ?」
と聞いてきたけど、知らないモノは知らない。
「クンクン、今日はカレーですか。
いやぁ~、久しぶりだなぁ~。
ごちそうになります、カレー 」
……ん ? 卵から孵ったばかりなのに、コーヒーやカレーに詳しいなんておかしいよね。
すると、ぬらりひょんが気配を消してボクに近づき耳打ちしてきた。
「ゴニョゴニョ ゴニョゴニョ ゴニョゴニョ」
その話しを聞いたボクは我を忘れて、
「その得体のしれない生物を元の場所に返してこい、遼太郎 ! 」
キャット三回宙返りキックを遼太郎におみまいした !
バッシッ !
ボクの必殺技が決まった遼太郎はひっくり返ったけど、すぐに起き上がり
「サファイア、やっぱりお前は猫又だったか。
だったら、妖怪の一人や二人くらい増えたって良いだろう ! 」
勘の良い遼太郎は、ボクの正体に気づいていたよいだけど、
「ボクは猫魈だよ ! とにかく、この家には これ以上居候はいらないから、返してきなさい !」
ボクの剣幕に驚いた遼太郎は、
「わかった、わかったよ。
たくぅ、たこ坊主の所にでも押し付けるか 」
そう言いながら、妖怪モドキをカゴに入れて連れて行こうとすると、
「遼さん。 ボカァ、この家が気に入ったんですが、もう少し交渉をしてもらえませんか ?」
冗談じゃない ! これ以上、厄介者なんか、いらないよ !
「たこ坊主の店は喫茶店だから、コーヒー飲み放題だぞ 」
「それならそうと言ってくださいよぉー !
レッツラ・ゴォー ですよ、遼さん 」
そう言い残して、ふたりは出て行った。
フゥ、この家の平和は守ったぞ。
「ねぇ、サファイア。
あの妖怪モドキは何だったの ? 」
さくらは不思議そうに聞いてきたけど、
「さくら。世の中は知らないことを無理に知ろうとすると不幸に成るんだよ。
『好奇心猫をも殺す』と言ってね、七之助や八重たちを巻き添えにしてもよいのかな ? 」
それを聞いたさくらは七之助を優先して、これ以上は聞いてこなかった。
フゥ、危ない、アブナイ。
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