第85話 🍑桃姫の研修

【サファイアside】


 うん、知ってた。 知ってたけど、七之助のアホー !

 また、妖怪を連れて来たのかと思ったら、桃太郎の孫娘だって !

 それに、おともに付いている犬、猿、きじは神獣だからね !

 ボクの自慢のベルベットのような毛皮もストレスでボロボロに成り、名前の由来に成った瞳も寝不足でどんよりしている。


 それと云うのも、ぬらりひょんが閻魔大王の曾孫のユカリン縁(ゆかり)を連れてきたからだよね !


 ─メラ メラ メラ メラ ──


 恨みはらさでおくべきか !


 ぬらりひょんに猫魈の呪いをかけてやる。


 歩く度に足の小指を何処かにぶつける呪いを !


 ♟♞♝♜♛♚


「わたしは確かに、

『でも、亡くなった後の魂ならアタックしても、よろしいですわね。

 わたしの初恋ですもの、簡単にはあきらめませんわ 』

 と言いましたけど、今すぐに七之助おじ様の魂を欲しいとは言ってませんわ !」


「ユカリン。 君にそのつもりは無くても周りの者は、そうとらえないのですよ。

 迂闊な言動は控えてもらわねば !」


 ユカリンと桃姫がやりあっている。


「でも、未遂みすいに終わったなら良いではありませんか。

 桃姫も早く帰らないと、桃太郎さまが心配しますわよ」


 ユカリンは、桃姫が苦手らしく帰るように促している。


「その件なら大丈夫ですよ、ユカリン。

 閻魔大王からユカリンの護衛 兼 監督をおおせつかりましたから 」


「チッ !」


『チッ!』と言った、『チッ!』と言ったよ、ユカリンが !


 桃姫のお供のポチカキ介が近付いて来て、


「あの二人は地獄女学院でライバル同士でなんだよ 」


「二人とも猫を被っているから、表立って争うことはしないけどね。

 少しは、オイラ達みたいに仲良くして欲しいんだけどなぁ~ 」


 いやいや、君たち犬と猿が言っても説得力ないからね。

 まあ、ユカリンを抑えてくれるなら歓迎するけどね。


 ケンケンは桃姫の肩に止まりユカリンを牽制している。


 ボクは疑問に思ったことをポチに聞いてみた。


「君たちは桃太郎のお供に付いていた神獣の犬、猿、雉なの ? 」


 桃太郎のお供なら、もう少し大人のハズなのに、此処にいるポチ、カキ介、ケンケンは若い神獣だからだ。


「そうだよ ! 神獣って云っても歳は取るから、定期的に養老の滝の若返りの神水を飲んでいるから歳を取らないんだよ 」


「 桃太郎は本当に鬼ヶ島の鬼を退治したのかい ? 」


 二匹は顔を見合せた後に、


「逆だよ、逆 !

 平和に暮らしていた鬼ヶ島の鬼を救ったのが桃太郎なんだ !」


「欲深い都の貴族たちが、鬼ヶ島に討伐命令を出す前に桃太郎が鬼ヶ島に向かい鬼たちを避難させたんだよ 」


 ポチとカキ介は懐かしそうに話してくれる。

 人間の欲深さは業が深いねぇ~。


「でも避難って、何処かに避難できる場所なんて有ったのかい 」


 ボクの質問にポチが、


「場所は秘密だけど、地獄に繋がる地獄門が地上にあるから、そこから地獄に避難したんだよ 」


 なるほどねぇ~、それで納得したよ。

 雫たちの話しだと、桃姫を見た鬼たちが直ぐに逃げ出した訳が。


 ボクたちの話し合いの間もユカリンと桃姫の話し合いと云う名の討論は続いていた。



「いつまで、此処に居るつもりですか、ユカリン ?」


「特に決めていませんわ。

 なんだったら、人間の学校に転入するのも良いですわね。

 桃姫は、早く地獄女学院に帰った方がよくてよ 」


「否、ユカリンが人間の学校の転入するなら、わたしも研修するために人間の学校に転入しよう 」


 顔は笑顔なのに、バチバチと火花が散っているよ !


 ちょっと待って、二人が人間の学校に転入するということは、……


 ドタドタ ドタドタ !


 タマが、あわてて駆け込んで来て


「大変よ、サファイア !

 いきなりご主人さまの家の両隣に家が家が……


 タマの知らせに外に出て見ると、いつの間にか七之助の家の両隣に家が建っていた。


 ガタッ !


 音のした方を見ると離れの部屋から、ぬらりひょんが一反木綿に乗り込んで脱出するところだった。


 はかったなぁー、ぬらりひょん !


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