第76話 夏休み、 さくらとタヌキ娘は七之助一家と一緒にキャンプ場に行く ! ④

【さくらside】


 雫やダイフクモチが、ボク達の後を追けて来ていたのには気がついていた。

 猫又に成ってからは、周囲の気配には敏感に成ったからだ。

 だからって、怒ったりねたりはしない。

 ボクもタヌキ娘も戦闘は苦手だからね。

 そう、ボクやタヌキ娘は『いやし枠』だから。


「おーい、テント張り終わったぞぉ~

 だから、俺の分のメシ頼まぁ~ ! 」


 俊夫くんがテントを張り終わったのか、こちらにやって来た。


 魔魅ちゃんと再婚する前は色白で細かったのに、今ではすっかりたくましく成ってカッコ良くなったけど、お兄ちゃん七之助には負けるね。


 八重ちゃんは、お好み焼きを食べ終えた後にデザートのアイスをタヌキ娘と一緒に食べている。

 ミーちゃんグレムリンは、もうお昼寝していた。


 十八番エースくんと右京ちゃんは仲良くスマホを見ている。

 漫画でも見ているのかな ?

 ボクはと云うと……


姉御あねご、一生ついていきます !」

「お姉様、一生ついていきます !」


 魔魅ちゃんの使い魔のポジとネガに何故か懐かれていた。

 夏バテで少食に成っているボクのお好み焼きの残りを、ふたりに分けてあげただけなんだけどな。


 サファイアとタマはポジとネガを警戒しているけど、そんなに悪い子には思えないんだけど……


「君たち、ボクに何か隠してる ? 」


 ビクッ !


 二匹とも急にオロオロし始めると、


「「ごめんなさーい ! 」」


 ポジとネガはジャンピング土下座をしてきた。


「どういうことなの ?」


「実は魔魅が右京と十八番をつがいにする為に、福岡田の家の妖怪と渡りを繋ぐように言われたんだ。

 でも、サファイアもタマも取り合ってくれないし、優しそうな さくらの姉御なら話しくらいは聞いてくれると思ったんだよ ! 」


「ちょっと目を離している間に、どんどん妖怪が増えていくんですもの、わたし達も焦っていたんです 」


「「みんな、魔魅が悪いので、わたし達は平にご容赦をしてくださいな !」


 ポジとネガ、流れるように言い訳をしてくれた。


「うん、ボクとしては十八番くんの意志に任せるよ。

 本人が嫌がらなければ問題無いんじゃないかなぁ~ 」


 お兄ちゃんに手を出したら許さないけどね。

 まあ、悪い子たちじゃないことは判ったから問題無いかな。



 ♟♞♝♜♛♚


 夜になり、子供たちにせがまれたお兄ちゃんは怪談を話し始めていた。


「むかしむかし、あるところに、大きな池がありました。

 水草がしげっていて、コイやフナがたくさんいます。

 でも、どういうわけか、その池で釣りをする人は一人もいません。

 それと言うのも、あるとき、ここでたくさんフナを釣った親子がいたのですが、重たいビクを持って帰ろうとすると、突然、池にガバガバガバと波がたって、

『置いとけえー!』


 ボクだけじゃなく、子供たちも飛び上がって驚いた。

 栞ちゃん達、大人は知っている怪談なのか、ニヤニヤしている。

 ボク達が怖がるのを見て笑うなんて趣味が悪いよ !


 偶然、キャンプ場で出くわした子供たちの同級生、置井手毛堀おいてけぼり愛花梨あかりちゃんは、ガタガタと震えていた。


 大丈夫かなぁ~。

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