第75話 夏休み、 さくらとタヌキ娘は七之助一家と一緒にキャンプ場に行く ! ③

ダイフクモチ人狼side】



 ウグゥ、雫殿に、ものすごく怒られてしまったでござる。

 だけど仕方ないと思うのでござる。

 アノ暴力的な匂いにあがらえる者がいるだろうか、いやいない !

 だが、拙者は誇り高き人狼族でござる。

 任務優先するのは当然なのでござる。


「ヨダレくらいかんか、粗忽者そこつものめ !

 やはり、タマ九尾の狐の方を連れて来た方が良かったのじゃろうか 」


「それだけは、それだけは認められないのでござる !

 アノ駄狐妖狐にだけは負けたく無いでござる」


 雫殿に反論すると、


「だったら、アノ川底に居る地縛霊を蹴散らして見せるのじゃ !

 見よ ! あきらかに純度の高い魂を持っている八重や十八番を狙っておるわ !

 主さまのお子様達を守るのは従者のお役目なのだから、しっかり仕事をするのじゃぞ 」


「わかっているでござる !」


 拙者は狼の姿に戻り、川に向かって突進した。

 大きな犬が水遊びに来たとしか映らないのを狙って、川から飛び出している手を次々と蹴散らしたでござる。


 一通り暴れている間、キャンプに来ていた人間たちは陸の上から拙者を見つめていた。

 きっと、飼い犬が水遊びで はしゃいでいるように映るようで、


「がんばれー 」

 と言う掛け声が聞こえてきた。

 しかし、釣りをしていた釣り人からは罵声が飛んでいたでござる。



 川から上がり、元いた場所に戻ると雫殿の他に ご主人さまが居たのでござる。


「ダイフクモチ、ありがとう。

 事情は雫から聞いたよ、ご苦労様」


 そう言って、拙者の頭を撫でて褒めてくれたでござる。

 気がつくと、嬉しくて涙を流していた拙者に、


「魔魅さんからキッチンカーのキッチンを借りて作った『特製ネギ抜きお好み焼き』だよ、ゆっくりお食べ 」


 ご主人さまが、ご主人さまが拙者のために……

 その日その時に食べたお好み焼きを拙者は忘れないでござる !


 ♟♞♝♜♛♚


【雫side】


 やれやれ、相変わらず甘い主さまじゃのう。

 生まれ変わっても変わらぬ優しさを持つからこそ、妖怪たちにしたわれるのじゃろう。


 さて、妾も仕事をするとしようかのう。

 ダイフクモチが暴れて地縛霊を蹴散らしたから、そろそろ此の川の主・川太郎が出てくるハズじゃ。

 川太郎が相手だと、普通の妖怪では荷が勝ちすぎるから、ここからは水神である妾が相手じゃ。


 ダイフクモチと主さまがコミュニケーションを取っている間に片を付けるとしようか。






 川の底に潜ると案の定、川太郎が待ち受けていた。


「何故、みずちとも

 あろう者が人間の味方をする !」


 川太郎が腕を組ながら怒っていた。


「妾は人間の味方をしている訳じゃ無いのじゃ !

 我が主の家族の為に働いているのじゃぞ ! 」


 妾の言葉に驚いた川太郎。

 やがて気を取り直しながら、


「まさか、鷹久さまが顕現けんげんされておるのか、螭よ 」


「そうじゃ。 記憶は欠けておるが、妾の真名を覚えておいでであったのじゃぞ !」


 そう、コヤツも主さまを知っている、元・妖怪だったのじゃ。


「おぬし、主さまとの約束を破りおったな !

 妾、じきじきに退治して冥土に送ってやるのじゃ 」


 陰陽寮から退治されそうだった川太郎。 だけど、陰陽師だった主さま鷹久に、二度と人間を襲わないことを条件に見逃してもらった癖に主さまが居なく成ったからとは云え約束を破るとは許さんのじゃ !


 主さまの子供たちを守護する意味でも不埒ふらちやからは排除するのじゃ !

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