第68話 キラキラの小学生と◌◯の神様

【サファイアside】


 子供たちも小学生に成り、だんだん手がかからなく成り、少し寂しく思い始めた頃に事件が起こってしまった。


 困った、本当に困ってしまった。

 八重や十八番エースが七之助や栞ちゃんがスマホをいじっているのを見て興味を持っただけなら良かったんだけど、暗証番号や暗証パターンを覚えてしまった。

 栞ちゃんはともかく、七之助は普段使いのスマホの他に前に使っていたスマホも大切に取っていて、小説を執筆する時は、古いスマホで執筆するんだ。


 七之助のアホー !


 暗証パターンの後が、しっかり液晶に残っているじゃないか !

 八重も十八番も両親の影響で、すっかり本好きに成ってくれたのは、本屋さんの看板猫のボクとしては嬉しかったけど、家に置いてある本を読み尽くし、七之助や栞ちゃんの所蔵している本を読みたがっていた二人には、絶好のツールだったんだ。

 本来なら両親の本を見せるのが一番なんだけど、栞ちゃんも七之助も本棚に入りきらない程の本を持っているだけじゃなく、読んで無い本を大量に部屋に積んでいるから、危なくて子供たちは立ち入り禁止にしたんだ、ボクたち妖怪でね。


 七之助も栞ちゃんも似た者同士だからか、そういうところが無頓着むとんちゃくなんだよね。


 話を戻そう。


 七之助は紙の本だけじゃ無く、電子書籍も大量に所持していることが判明した。

 子供たちに見せる前にボクがチェックしたんだ。

 子供たちには見せられないHな本があるかも知れないからね。

 調べて良かったよ、Hな本は無かったものの、過激な本が多かった。

 子供たちに『北斗◌拳』や『聖闘士🌟矢』なんて早すぎるし『ざまあ』や『悪役令嬢』なんて、性癖がゆがむような物語なんて見せられない。

 ボクが二人に付きっきりで面倒を見る訳にもいかない。

 悩んでいるとしずくが助け船を出してくれた。


「妾が二人が、どの本を見るか監視してやるのじゃ。

 教育上良く無い物語は見せないから安心するが良いのじゃ 」


 雫は七之助の子供たちを可愛がっているから大丈夫だろうと信じた……信じてしまったんだ。



 ♟♞♝♜♛♚


 あれからしばらく経ってから、八重と十八番は目をキラキラさせながら、ボクの元にやって来て……


「お父ちゃんは小説家なの ?」「お父さんは小説家なんですか ?」


 ボクはジロリと雫をにらんだ。


「主さまの素晴らしい物語をわらべたちに見せたかったのじゃ。

 父親の偉大さを教えたかっただけなのじゃ ! 」


 ダメだ、こりゃぁ。

 普段の雫は頼りに成るけど、七之助がからむと途端とたんに駄女神にジョブチェンジすることを忘れていたよ。

 しょうがない、ボクが泥をかぶるか。


 八重と十八番には、七之助の小説は如何いかにマニアックでオヤジギャグ満載まんさいでつまらないか教えてあげた。


 しかし……


「小説の神様とか文学の神様に知り合いはいないのですか、サファイア」


 十八番は、これまた面倒なことを !


「知らないの、サファイア ?」


 八重の挑発に思わず被害妄想


「知っているさ !

 故人だけど、文学の神様 河上徹太郎や小説の神様 志賀直哉がいるけど、二人とも天国にいるから呼び出せ無いよ 」


 すると雫が、


「妾は菅原道真公を知っているから呼んでこようか ?」


 ブッ !


「余計なことをしないでよ !

 道真公だって忙しいんだから、駄目Web作者の七之助の指導なんて迷惑だし不公平でしょう ! 」


 しかし、ボクを無視して雫は、


「ちょっと待っておれ…………………… 」


 ブォーン !


 神聖な気配が降りてきた。


「水神よ、わしを呼び出した理由を教えてくだされ。

 儂、これでも忙しいのだが……」


 来ちゃったよ、道真公。


「妾は『雫』と云う名をもらったのじゃ。

 妾のことは『雫』と呼んで欲しいのじゃ。

 実は主さまのことで相談があるのじゃが、……『かくかくしかしかこうこう』 で主さまに、小説家に成る為の指導をして欲しいのじゃ 」


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