第66話 とある日のサファイアとさくら

【サファイアside】


 ボクは、こんなに大変なのに、さくらは猫らしくヘソ天で寝てる。


「むにゃむにゃ、サファイア、最近 老けたねぇ~ 」


 ブチッ !


 バシバシッ !


 ムカついたので、さくらに猫パンチを喰らわしてしまった。


「なにすんのさ、サファイア !

 ボクの日課を邪魔するなんて、何か有ったというの ! 」


 やっと、さくらが起きて文句を言って来たから、


「いくら猫だからって、さくらは寝すぎだよ !

 たまにはボクの手伝いだってしてくれても罰は当たらないでしょう !

 運動不足だから洋梨体型になるんだよ、 !」


 ドンッ !


 さくらの体当たりでボクは吹き飛ばされてしまった。


「イテッテッテッテッ 、やったな、さくら !」


 ボクとさくらが取っ組み合いの喧嘩をしていると、


「やめなちゃい、ふたりとも !

 ケンカは『メッ』なんだよ 」


「姉さんの言う通りです。

 ふたりがケンカすると、お父さん七之助お母さんも悲しみますよ 」


 八重と十八番に止められてしまった。

 さくらに七之助、ボクに栞ちゃんのことを言われると我慢するしか無いじゃないか

 !


「お~い、栞さんか七之助くんは居るかのう。

 酒のツマミーを貰おうか来たんじゃが、何をお主らケンカをしているのじゃ ? 」


 ぬらりひょんがでやって来た。

 考えてみれば、妖怪の大将のぬらりひょんが酒で酔っぱらって仕事をサボっているのに、なんで 猫のボクが働かないといけないんだ !


 ぬらりひょんに文句を言ってやろうとしたら、


「今、ちょうど枝豆を茹でたところじゃ。

 後は、冷奴ひややっこくらいしか出来ないのじゃが文句は言わないよなぁ、ぬらりひょん殿


 雫が割烹着を出てきて居た。


「 おお、ありがたや、ありがたや !

 水神様みずからの料理を頂けるとは幸せでございます」


 ぬらりひょんが、ツマミに手を出そうとしたら、ヒョイ と引いてしまった。


「水神様 ? それがしに頂けるのでは無いですかな ?」


 ぬらりひょんが遠慮がちに抗議すると、


「妖怪の大将が、下の者に仕事を押し付けて自分だけらくをして楽しんでいるのは、感心できないのう、殿


 ぬらりひょんは、冷や汗をダラダラと流しながら、


「おおー、そうじゃった、そうじゃった。

 サファイアよ、今日から仕事はワシに任せて、お主はゆっくり休んで良いぞ。

 ご苦労じゃったな 」


 ぬらりひょんが真面目に仕事 !

 明日は、槍が降るかアメでも降るんじゃ無いだろうか。

 どちらにしても、ボクはようやく仕事から解放されてスローライフを送れるんだね。


 思わず水神様を拝んだら、


「止めるのじゃ、恥ずかしい ! 」


 と言い残し、台所に引っ込んでしまった。


 ちなみに枝豆は、八重と十八番が競争するように食べてしまった。

 ふたり共、七之助や栞ちゃんの影響のせいか、シブイ食べ物を好むんだよな。


 ボクは雫が、この家に来た時のことを思い出していた。

 水神様である雫は七之助の家に来るなり、


「これからは、仲間や家族に成るのだから、プライベートの時は余計な敬語で話さなくても良いのじゃ。

 その変わり、公式の場の時には気をつけてくれれば良いのじゃ 」


 といっていたけど…… うん、大歓迎するね !


 雫は水神様なのに、偉ぶらずに家の手伝いを積極的にしているせいか、タヌキ娘もタマもダイフクモチも居心地が悪いのか、動物形態で居ることが多く成った気がする。

 まあ、ボクも人間形態より猫の姿の方が楽だから良いんだけどね。

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