第63話 道草、寄り道、回り道 ③

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


ダイフクモチ人狼side】


 やっぱり、ご主人様七之助たち以外の人間は信用出来ないでござる。

 駄狐タマは、何かたくらんでいるようでござるが、拙者には関係ないでござる。

 八重殿と十八番エース殿、そのお友達以外の人間なんて、どうでもよいでござるが、ご主人様たちが悲しむから大人しくしていたのに許せないでござる !


 ムッ、向こうからパトカーが来たでござる。

 あまり、我々 妖怪が表に出ることは不味いでござるから、人間の警察に花を持たせてやるでござる。

 ここには、妖怪警察烏天狗(カラスてんぐ)の子供も居るから大丈夫でござろう。


 パトカーから二人の警察官が降りて来て、


「君たちは、子供に何をしているんだ !

 直ぐに手を離しなさい ! 」


 警察官が警告すると、テレビ局の人間がヒソヒソと耳打ちして、カードを見せたでござる。

 そして、先ほどまで威張り散らしていた人間もを見せると、警察官の態度が ガラリと変わり、


「申し訳ありません。

 の方だとは、つゆ知らず御無礼をしてしまいました。

 ここは見なかったことにしますので、お許しください」


 なんとぉ 、人間の警察は逮捕しないでござるか !


「初めて拝見しましたよ。

 の国民ナンバーズカードなんて !」


 悪人を捕まえるハズの警察官が立ち去り、再び人間釣り人たちが子供たちを無理矢理に車に押し込み始めたのを見て、拙者たちも覚悟を決めたでござる !


「フン、超級国民なんて処で満足している俺じゃ無いぞ !

 そのうち、政治家に立候補して大臣に成って那由多なゆた級国民に成るのが目標なんだからな ! 」


 ……人間とは、がたい生き物でござる。

 ご主人様たちとの出合いが無ければ、人間社会などとは縁を結ばなかったでござる。


 急がないと、ご主人様の子供たちがさらわれてしまうでござるが、そこは手抜かりは無いでござる。


「なんだとぉー ! 突然、車の進行方向に壁が出来ましたよ、よこしまさん ! 」


 クッ クッ クッ、あわてているでござる。


「バカヤロー、それならバックして方向転換したら良いだろうがぁー!」


 人間の車が方向転換して進もうとするも、また壁が現れたでござる。


「「 ぬりかべぇ~塗壁! 」 」


 妖怪ぬりかべ塗壁兄妹が道を塞いだでござる。

 ぬりかべは、タヌキ娘化け狸の親戚で遊びに来ていたでござるが、二人共にご主人様の子供たちにメロメロにされていたでござる。


「クソゲーかよ ! おい、早く応援のスタッフを呼んだら良いだろうが !

 それくらい気がつけよ、無能が ! 」


 あのよこしまと云う男もあきらめが悪いでござるな !

 だけど、これ以上は騒ぎに成ると拙者たちが不利に成るでござるな。


 人間を鎮圧して子供たちを救出しようとしたら、さっきのパトカーが仲間を引き連れて戻って来たでござる。


 今度こそ、よこしまたちを逮捕するのかと思いきや、


「なんだこりゃぁ、超級国民のよこしま様たちを送迎する為に戻ったのですが、何が起こっているんですか ? 」


 警察官がよこしまに聞くと、


「そんな事は、どうでも良いから、この壁を退かしてくるよ、 ! 」


 あろうことか、人間の警察官は逮捕する処か、犯罪者の手伝いを始めたでござる !


 子供たちを無理矢理に救うと、人間の警察を敵に回してしまい、ご主人様に迷惑がかかってしまうでござるし、このまま見過ごしては子供たちが誘拐されてしまうでござる。


 ムッ ムッ ムッ、拙者の頭では判断が出来ないでござる。

 駄狐タマの方を見ると、川の方に気を取られて、此方こっちを見ていないでござる。

 何を余所見しているでござるか !

 タマが見ている方を見ると、祠が有った辺りの川辺に大きなウズが出来ていて、膨大な霊気が立ち込めていた……


 そういえば、先ほど人間が祠を破壊していたのを思い出したでござる !

 アレはみづちの祠、つまり水神をまつっていたから…………やっぱり人間は度し難いでござる !

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