第62話 道草、寄り道、回り道 ②

 ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。




タマ九尾の狐side】


「おじちゃん達、それを壊したら『メッ』なんだよ !」


 見る見る人間達の顔色が真っ赤に変わっていくのを見て面白かったわ。

 流石、ご主人様七之助の娘。 わたし達、妖怪が気に掛けている娘だけあるわ。


 わたしの隣に居る駄犬だいふくもち(人狼)が今にも釣り人に襲いかかろうとしているので、小声で注意した。


「もう少し様子を見ましょう。

 流石に、いきなり暴力を振るったりはしないでしょうからね。

 わたし達のに成る価値があるか見定めるわよ 」


「むう、あんな奴等など拙者が蹴散らせば、アッという間に逃げ出すでござる。

 ご主人様七之助のお子様に何か有ってからでは遅いと思うでござる 」


 本当に皆は八重や十八番に対して過保護過ぎるわね。


「おい、クソガキ ! こんなド田舎に来てやっている俺達にする態度か !

 第一、俺はだ !

 せっかく、金を落としてやっているのに感謝くらいして欲しいぜ !」


「そうだぞ、ガキンチョ。 この方はテレビで釣り番組を持っている『釣りキチひでちゃん』こと芸能人のよこしま英彦ひでひこ を知らないのかよ ! 」


 幼児が知っているワケ無いでしょう、芸無人げいノーじん

 ジパング大手芸能人事務所の力で売れているだけの音痴、大根役者、ダンス下手の三拍子がそろっている奴なんて幼児が興味を持つ訳無いでしょう !




「ウヘヘへ、よこしまさん。

 社長のジャポンさんの土産に連れて行きましょうよ !」


 そう言って、八重に手を掴んだ人間釣り人

 わたし達が動き出す前に走り出し体当たりをして、八重を救い立ち塞がったのは、わたし達妖怪ではなく十八番エースだった。


「お姉ちゃんに手を出すな、ロリコン !」


 一瞬、人間釣り人が怯んだ。

 ヘェー。 流石、男の子、ご主人様の子供だけあるわね。

 隣に居たダイフクモチは十八番の後ろに追い隠密て行っているから大丈夫でしょう。


 そうしたら、大きな車が近付いて来て、カメラやマイクを持っている人間が降りてきた。


よこしまさん、不味いですよ。

 無許可で撮影しているんだから、バレたら問題に成りますよ 」


「フン、バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ !

 証拠さえ残さなければ、マスコミも警察もウチの事務所ジパング事務所忖度そんたくしてスルーして見逃してくれるからな !

 解ったなら協力しろ !

 それともウチの事務所ジパング事務所に逆らうなら、オタクの局にはウチのタレントは出演し無くなるぞ !」


 そう脅されたテレビ局の人間は八重や十八番ら子供たちを囲んで逃げられないようにしている。


 バカなの馬鹿なのね、こんなに沢山の子供を誘拐してバレ無いと思っているのかしら。

 上空からは、一反木綿に乗った ぬらりひょんがビデオカメラを回していると云うのに。

 マスコミや警察を抑えられても、現代はインターネット社会なんだから、隠し通すことなんて出来っこ無いのに。


「後で、子供たちの親には金でも掴ませてやれば、黙りするさ !

 さっさと全員のガキンチョ共を捕まえろ ! 」


 よこしまと云う男が号令すると、他の人間達が子供たちを捕まえようと動き始めた。


 ふふふ。 ここで、わたし達 妖怪が八重や十八番、子供たちを助けてあげたら尊敬してもらえるわね。






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