第60話 栞、親の苦労を知る。

【栞side】


 八重も十八番エースも幼稚園に馴染めるか心配していたけど、沢山ののお友達が出来て安心したわ。

 今までも孤立していたワケではなかったけど、妖怪たちも真雪ちゃんや右京ちゃんのような妖怪ハーフの子も八重や十八番、相互に依存しているようで心配だった。

 サファイアから指摘されなければ、わたしも七之助さんも気がつかなかったと思う。

 保育園や幼稚園に行きたくても、わたしも七之助さんもクジ運が悪いせいか、なかなか当たらずに、あの子達は待機児童のままだった。


 八重と十八番が迷子に成ることで、由利子先生や天音先生と知り合えたお陰で、競争率の高い私立の大江戸幼稚園に入ることが出来た。

 ご近所の情報通のオバサマの話に寄ると、天音先生や由利子先生の潮来家と日本を代表する大江戸グループの大江戸家とは古くからの付き合いで親しいとのことがわかったわ。

 由利子先生も地元の名物教師だと云うのが判明した。


 わたしも魔魅も紫陽花女子学院に居たから知らなかった。

 由利子先生みたいな素敵な先生が居ると知っていたのなら、菖蒲あやめ学園の方に行っていたと思う。

 由利子先生の年齢を知ってビックリ !

 美魔女って本当に居るのね。

 魔魅やサファイアにも聞いて見たけど、

『由利子先生は正真正銘、普通?の人間』

 だと言っていた。

『?』が気になる処だけど、サファイア達にも判らないとのこと。


 どちらにしても、子供たちを幼稚園に通わせることにして良かった。

 幼稚園から帰って来てからの二人は興奮しながら幼稚園で有った出来事を私や七之助さんに教えてくれた。

 嬉しそうに話す二人を見ながら、私の父母も同じ気持ちだったのかな、と考えるように成っていた。

 はからずも人の親に成り、両親の気持ちが解るように成るなんて、本当に七之助さんと結婚して良かったわ。


 ただ、サファイアだけは頭を抱えながら『ブツブツ』言っていたのは気になるけど、聞いても教えてくれなかったから知らない方が良いのだと思う。


 ガラ ガラ ガラ ガラ !


 玄関の扉が横にスライドして、


「ヤエ、エース、遊びに来たでぇー !

 あっ、お義母様、こんにちは。

 エースくんとヤエちゃんを遊びに誘いにきました 」


「おば様、こんにちは。

 ウッチャンと一緒に遊びにきました」


 魔魅の娘の右京ちゃんとアイスクリーム屋さんの雪子さんの娘の真雪ちゃんが来たようね。

 どこで覚えたのか、何時からか 右京ちゃんは エセ関西弁を話すように成っていた。

 本人曰く『お好み焼き屋で右京と云えば、関西弁なんや !』と謎の言葉を残していたと魔魅が愚痴を言っていた。

 一方、真雪ちゃんは 年齢の割には落ち着いているのは、母親の雪子さんの影響かしら。

 どちらにしても、妖怪も人間も女の子は積極的ね。


 男の子の夏鬼くんは恥ずかしいのか、門扉の所から隠れて見ている。

 偏見では無いが、酒呑童子の息子の割には恥ずかしがり屋で優しい子供だ。

 ……良く見ると夏鬼くんの後ろには、カラス天狗の孫娘の鞍馬クラマちゃんと河童かっぱの川太郎の息子 歩真努アルシンドくんも居る。

 わたしと違い、わたし達の子供はモテモテなのは七之助さんに似たのかしら。


 八重と十八番が右京ちゃんや真雪ちゃんの声に反応したようで、家の奥から出てきた。


「あー、ウッチャンと真雪ちゃん、発見 ! 」


 八重が嬉しそうに叫ぶも右京ちゃんと真雪ちゃんは八重を素通りして十八番の元に直進した。


 う~ん、本当に積極的 !


 半泣きに成りそうに成っている八重に門扉の所に居る、鞍馬クラマちゃんと歩真努アルシンドくんを案内するように言ったら、喜んで外に駆け出していた。


 テポテポ テポテポ テポテポ テポテポ テポテポ !


「クラちゃーん、アルくーん、一緒にあ~そ~ぼ遊ぼう !」


 引っ込み思案だった私と違い、八重は元気に二人に声をかけていた。

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