第59話 紙芝居


「ハ~イ、皆さん 静かに集まってください。

 今日から一緒のお友達に成る子たちを紹介します 」


 天音先生の掛け声に、自由気ままに遊んでいた子供たちが天音の元に集まり始めました。


「福岡田八重でちゅ。 仲良くしてね」

「福岡田十八番エースです。 姉ともども、よろしくお願いします」


 パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ


 自己紹介も終わり、子供たちの為に用意していた自家製の紙芝居を先生たちが用意し始めると、子供たちは目をキラキラさせて紙芝居の前に座るのを見て、八重や十八番も一緒に座ることにした。


 どうやら紙芝居は嵐先生と蝶子先生の二人で演じるようです。


 紙芝居の題名には、一昔前に流行った戦隊ヒーローを紙芝居化したもののようでした。


 ── 魔王戦隊 ゴオニンジャー ──


 題名には大きなタイトルが書かれていて、ヒーロー達がポーズを取っている姿を見て、子供達は興奮しているようです。


 嵐先生がナレーションを読み始めると、子供達は聞き逃さないように静かに成りました。


「ここは、名も無き異世界、女神メッサリーと邪神ユリリンが管理する世界。

 女神メッサリーナの教えによりヒト族は亜人種を弾圧していた。

 亜人種(エルフ、ドワーフ、獣人族、魔族)

 彼らは邪神ユリリンに祈った。


『伝説の戦士』の力で我らをお救い下さい

 そして、邪神ユリリンは大魔王恭華きょうかの力を借り伝説の戦士達を組織した。

 そして此処は、とある獣人族の村でヒト族が奴隷借りをしていた事から始まる」


 かつては大人気だったヒーローも今の子供達は知らない為に目をキラキラしながら聞いていた。


 ♬♫♩♪♩♫♬♪♫♩♫♬♪♩♫♩♪♬♫♪♩♫♬♪♩♫♬♩♫♪♩♫♬


 天音先生が、ピアノで伴奏を入れています。



「なんだぁー ! この耳ざわりな音楽はぁー 、誰だ ? 出てこい !」


 嵐先生は悪人の声をあてています。

 ザコキャラ役の声は、まさにピッタリでした。



「 地上に悪が満つるとき、愛する心あらば、熱き魂 悪を断つ。人、それを『真実』という…」


 謎のヒーローの声は蝶子先生の担当です。


「 何者だぁ、何処にいるんだ ! 」


「闇ある所 光あり、悪ある所 正義あり、偉大なる魔王国からの使者……」

 アカインジャー、アオインジャー 、クロインジャー 、キンナンジャー、ギンナンジャー、五人そろって ゴオニンジャー !」


 クライマックスに子供達は大興奮で、ゴオニンジャーを応援し始めました。



 始まりがあれば、終わりがあるように楽しい紙芝居もエンディングを迎えようとしています。



「ゴオニンジャーが居る限り、ヒト族の悪逆無道は続かない !

 頑張れ ! ゴオニンジャー !

 地上の平和は君達にかかっている 」


 パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ


 紙芝居が終わると、子供達は一斉に拍手をしました。


「さあ、皆さん。 そろそろお昼なので、手を洗いに行きましょうね」


 天音先生が号令をかけると子供達は並んで手洗いに行きました。


 幼稚園は集団行動や日常生活を学ぶ所だと云うのを栞は見学して『通わせて良かった』と安心したようでした。


 子供達の給食のメニューは、大江戸グループの給食センターから運ばれた物で栄養バランスの優れたメニューです。

 それを見学に来た父兄や母親と一緒に食事した栞は感動していました。


子供たち二人とも新しい友達に囲まれて嬉しそうに話している姿を見て安心する栞だった。

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