第58話 初登園
「◌さんの居る~あの□の下~はるかな●を目指せ~ ♪」
八重が機嫌良く、歌いながら幼稚園に向かい歩いています。
一緒に歌おうにも楽曲が古すぎて、右京にも真雪にも歌えませんでした。
父譲りで歌うことが好きな八重は七之助から歌を教えてもらっていたのですが、七之助は芸能界に
また、栞も本のことは詳しいのですが、七之助と同じで最近の流行歌には疎かったのです。
もちろん、子供達だけで幼稚園に登園する訳も無く後ろには、それぞれの母親が歩きながら見守っていました。
十八番の隣には真雪と右京がしっかり手を繋ぎながら、他に登園して来る女の子達を警戒していました。
「真雪、ウチら以外に女の子を近寄らせたらアカンでぇー! 」
「わかっているもん 、
これ以上、ライバルは要らないんだもん ! 」
小さくても女の子は女の子で有るようです。
ちなみに真雪の弟の雪夫は母親である雪美と一緒に保育園に行っている。
雪夫は、さんざん八重と一緒に幼稚園に行きたがっていたが、既に幼稚園は定員が満杯だった為に泣く泣く保育園に行っていた。
当然ながら妖怪たちも隠れながら八重や十八番を警護しています。
空からは一反木綿に乗った、ぬらりひょんが陣頭指揮を取りながらビデオカメラで撮影しています。
妖怪界のアイドルと化した八重と十八番の初登園と成ると妖怪テレビの視聴率はうなぎ登りに成る為に、妖怪テレビ局から依頼されていたのです。
前回の『八重と十八番の初めてのお使い』は妖怪達の伝説に成る程の視聴率を叩き出したのです。
♟♞♝♜♛♚
八重、十八番、真雪、右京の四人が幼稚園に着くと、さっそく幼稚園の先生が迎えてくれました。
「おはようございます。
先生は新入生を案内するから、真雪ちゃんも右京ちゃんも先に教室に入っていてね 」
しかし真雪も右京も十八番から手を離そうとはしませんでした。
幼稚園には、ライバルに成る女の子達が十八番を見詰めていたからです。
「この間ぶりね、八重ちゃん。
それと
私のこと覚えているかな ? 」
幼稚園の先生が、お日様の様にニッコリ笑うと、周りの父兄は
本来なら嫉妬しても可怪しくない母親達も眩しそうにしていました。
「覚えてるよ、天音お姉ちゃんだよね ! 」
「この間は、姉ともども お世話に成りました。
この幼稚園の先生だったんですね、天音先生 」
年相応な八重と妙に年齢以上の挨拶をする二人は直ぐに父兄や母親達に覚えられました。
何時もなら、ここで『にぱぁ』と笑い愛想を振り撒きながら周りの人や妖怪をタラシ込む二人ですが、サファイアから泣いて忠告された為に我慢していました。
状況を逸早く理解した天音は、子供たちを教室に案内することにして、栞たち母親を別の先生に案内させることにしたようです。
「
弟く……嵐先生は、そのまま登園して来る児童をお迎えしてくださいね 」
二人の教師は直ぐに行動に移しました。
天音と付き合いの長い二人は逆らえなかったのです。
普段は優しい女神のような天音が、本気で怒ると……考えるだけでも恐ろしかったのです。
そんな天音を、他の父兄や母親達は頼もしく思っていました。
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