第52話 初めてのお使い ③


 初めてのお使いで商店街に来ている八重と十八番は、仲良しの友達と手を繋いで歩いている為に非常に目立っていた。


「おや、八重ちゃんに十八番エースくん。

 二人そろってデー……お出かけかい ? 」


 たこ焼き屋の多古たこ八郎が声をかけてきた。


「うん、ヤエ八重ね。 はじめてのおつかいなの ♬ 」


「はい、ねえさん姉さんいっしょ一緒ですけど、はじめてのおつかいです 」


「ほう~、二人とも偉いねえ~ 」


「うん、ヤエ、えやいんだよ、エッヘン ! 」


「ありがとうございます、おじさん 」


 褒められて、小さな胸を張りながら喜んでいる八重に対し十八番エースは、少し大人びていた。

『兄より優秀な弟は居ない』と云う都市伝説はあるが『姉より優秀な弟は居る』ようだ。


「じゃぁ、おじさんがご褒美に皆に、たこ焼きをおごってあげよう 」


 そう言うと保温庫から温かいたこ焼きにソースやマヨネーズ、鰹節をかけて二皿出して来て八重と十八番に渡した。

 一皿六個入っている、たこ焼きには 爪楊枝が三つづつ刺さっている。


「アリアト、おじちゃん 」


「ありがとうございます、おじさん 」


 六人の幼児は、たこ焼き屋のベンチに座らせてもらい食べ始めた。


 真雪と雪夫は猫舌の為に念入りに、フーフーしながら、たこ焼きを冷ましていた。


 多古八郎は、普段から七之助の店から天カスを貰っていたので、お礼がてら奢ったようだ。

 ケチだから二皿しか渡さなかったのでは無く、幼児が一皿食べてしまうと、家でご飯が食べられなくなり怒られると考えたからだった。


 やがて、幼児たちは目的地の八百屋やお肉屋に行くまでに、アチコチの店のオーナーや買い物客から、お菓子などを貰っていた。


 八百屋で合流した夏鬼に残っていた、たこ焼きを渡し喜んで食べている夏鬼。



 そんな子供たちを、ダイフクモチ人狼タマ九尾の狐は見守っていた。


 グゥーー !


 ダイフクモチの腹が鳴ると、


「バレたら、どうするのよ、駄犬 !

 ご主人様から御飯フードを貰ったばかりでしょう ! 」


 タマに怒られたダイフクモチは反論した。


「そんなことを言ったて、育ち盛りなんだから仕方ないでござる !

 そう言う、お主タマだってヨダレが出ているでござる ! 」


「仕方ないじゃ無い ! お弁当工房お弁当屋から、お稲荷さんを貰っていたじゃないの !

 あれは、わたしへのお土産だわ!

 アノ甘じょっぱいお稲荷さんは、わたしの大好物だと知っているでしょう !

 条件反射よ、条件反射! 」



 流石に、これだけ騒いでいれば勘の良い子供たちにはバレる訳で……



「タマもモチダイフクモチヒドイ酷いでしゅ。

 もうクチきいて聞いてあげないでしゅ 」


 八重に怒られた、タマもダイフクモチも しょんぼりしていた。

 ふたり共、獣状態の為にペットが怒られて居るようだったので、周りの大人たちは温かい目で見詰めていた。


 見るにみかねた八百屋の那須なす邑輝むらきは、


「まあ、まあ、八重ちゃん。

 サービスするから、その辺で許してあげなよ 」


 そう言いながら、ピーマンを数袋取り出して来た。


「やーー ! ピーマン、きやいーーー ! 」


 八重を筆頭に子供たちはにげだした。


「ハッハッハッ、やっぱり子供たちには嫌われているな、ピーマン 」


 そんな八百屋のオヤジを周りの客は冷めた目で見ていた。

 このオヤジ、子供が好き過ぎて、つい からかい過ぎてしまうのだ。



 その頃、商店街の上空には、妖魔に成りつつある浮遊霊(悪霊)が居た。

 他の地域で雑霊や低救霊を吸収して、今では下級悪魔である妖魔に成る程の力を持っていた。


 早く妖魔どころか、上級悪魔に成りたいと思っていた悪霊は、更なる力を求めていたのだ。



〖足りない、まだ足りない ! もっともっと力が欲しい…………ムッ ! 〗


 悪霊は、八重や十八番たちを見ていた。


〖 いいぞ、いいぞ、俺はついている!

 あのガキ共を取り込めば、一気にパワーアップして上級悪魔の仲間入りだ !

 グッ ハッハッハッハッ、グゥーーーっドタァイミィングゥーーーー ! 〗



 隙を見て、まとめて子供たちを取り込もうとしている悪霊には、気付いているは居なかった。

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