第51話 初めてのお使い ②


 奥さまの名前はしおり、そして、旦那さまの名前は七之助。ごく普通のふたりはごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。でもただふたつ違っていたのは旦那さまは人外タラシで奥さまはブースター増幅能力者だったのです。



【サファイアside】


 知らなかった、知らなかったよ、栞ちゃんが能力者だったなんて !

 でも仕方ないと思うんだ。

 栞ちゃん単独では意味の無い能力なんだから !

 それが、人外タラシの七之助と結婚したから、さあ大変に成ってしまった。


 二人の子供は七之助の人外タラシに栞ちゃんの能力が加わって、手がつけられなく成ってしまった。

 親が親なら子も子で無自覚に タラシまくるからボク達、妖怪はサポートで大忙しさ !


 道理でおかしいと思ったんだよ。

 栞ちゃんと出会ってから立て続けに、タヌキ娘化け狸タマ九尾の狐、ぬらりひょんの爺までがタラシ込まれて定住してしまったんだから。


 流石にボクひとりの手には余るから、猫たちに協力を求めても悪く無いよね。

 今、ボクの前には当代のボス猫のニャンセブンが居る。

 そう、例によって七之助が名付け親なんだ。

 当人……当猫は気に入っているようだけど、相変わらずのセンスに頭が痛くなるよ。


「じゃあ、頼んだよ、ニャンセブン親分。

 七之助と栞ちゃんの子供たちに変質者が近づきそうなら、すぐにボクに知らせてね 」


 ボクがニャンセブン親分に頼むと、


「ガッテン! おまえら、オヤジ七之助姉さんの恩に報いる為にも気張れや ! 」


「「「「「「「「「「

 おおー ! ガッテンだ、親分 !

 」」」」」」」」」」


 猫たちは八重や十八番を囲むように離れて散って行った。

 七之助の子供たちは、既に両脇に異性をはべらしているけど、少し離れた所でカラス天狗の孫娘の鞍馬クラマ河童かっぱの川太郎の息子 歩真努アルシンドが混ざりたくて見詰めている。


 本人たちに自覚がないとは云え、いや自覚が無いからこそ手に負えないんだよ。



 テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ テポ


 あっ、こっちに来たから急いで隠れないと、二人に嫌われてしまうよ !



「あれぇ~、 サファイアだとおもった思ったのに、かんちがい勘違いだったみたいや、エース」


 マミの娘のクセに勘がいいなぁ~、右京。

 エースも栞ちゃんの影響のせいか、ニュータイプみたいに勘が良いから今のウチに撤退した方が良さそうだ。


 ボク程の働き者の猫は居ないよね。

 後で七之助から報酬をしっかり取り立ててやるぞ !

 ボクのスローライフを犠牲にしているんだから、当然の権利だよね。


 ゲッ ! タマとダイフクモチが八重に見つかった。

 何をやっているんだよ、ふたりとも !


「タマもモチダイフクモチヒドイ酷いでしゅ。

 もうクチきいて聞いてあげないでしゅ 」


 犬より良く聞こえるボクの耳に聞こえてきた。

 ふたりとも泣きそうに成っているけど、泣きたいのはボクの方だよ !

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る